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精霊の加護031 チルとの契約

精霊の加護

Zu-Y


№31 チルとの契約


 翌日、朝イチでラスゴーを出て、1日馬車に揺られ、夕刻にセアリューに着いた。

 今日もベスさんの指導のもと、俺たちは、道中交代で御者の技を学んだ。


 さらに北へ、そしてさらに標高が上がったため、道のまわりにはうっすらと雪が残っている。もう雪が降ったのか。寒さも増しているが、セアリューに近付くにつれ、藍色の精霊がぐんと多くなって来て、ここセアリューでは藍色の精霊しかいない。


 セアリューにはまともな宿はなく、1軒だけの小さな宿は、先客で埋まっていた。

 この寒い中で野宿かよ!と、愕然としたのだが、ダメもとで教会に行って、東府教会大司教直属助祭の身分証を見せて泊めてもらえないかと尋ねたら、あっさり泊めてもらえることになった上に、責任者の司祭さんが直接もてなしてくれるVIP待遇だった。

 これには俺も驚いたが、お姉様方も驚いていた。


「東府教会の大司教様直属の助祭と仰いますと、もしや…。」

「はい。そうです。こちらに精霊と話せる巫女様がいると聞きましたが、ほんとですか?」

「ええ。私の妻と娘です。妻は精霊巫女、娘は精霊巫女見習です。」

「お会いできますか?」

「もちろんですよ。いまふたりで精霊様の所に行ってます。もう間もなく戻ると思いますよ。」


「ただいまー。」元気な女の子がドアを勢いよく開けて教会に入って来た。

「これ、シャル。お行儀の悪い。

 皆さん、娘のシャルロットです。」

「あ、お客さんですか。いらっしゃーい。」闊達な娘だな。

「どうもお邪魔してます。」

「ただいま戻りました。今日はお会いできませんでしたわ。あら、お客様ですの?よくいらっしゃいました。」

 いかにも巫女さんって雰囲気だな。この人が精霊巫女さんだな。

「ふたりとも、一段落したらちょっと来なさい。お客様に紹介します。」


 ふたりを紹介されたら精霊たち3人は、早速、精霊巫女さんと見習のシャルの所をふわふわと回った。これに司祭さんも精霊巫女さんもシャルも大層驚いて、シャルは興奮気味に精霊達へ話し掛けた。

「精霊様ですよね?」

『そうだよ。』『よろしく。』『よろー。』

「凄ーい!」

「ゲオルクさん、私には精霊を見る力がなかったはずなんですが…。」司祭さんが問い掛けて来た。

「契約した精霊は誰でも見ることができるんですよ。3人とも俺と契約してますんで。」

「それでは、東府魔法学院からのあの発表は本当だったんですか?」精霊巫女さんが食い付いて来た。

「マルチの精霊魔術師のことですか?それなら俺たちのことですね。」精霊巫女さんは目を見開いて固まってしまった。笑


 ふたりは、精霊巫女と精霊巫女見習で、今日はふたりして冷気の特大精霊がいる高原に行って来たそうだが、出会いの儀式が上手く行かずに会えなかったそうだ。

 ちなみに出会いの儀式とは、スティックで小さいボールを叩いて転がし、野生のウサギの巣穴に入れるんだそうだ。何だそりゃ?

 今日は高原のウサギの巣穴が全部、昨日降った初雪に埋もれてて、上手くボールを巣穴に入れられなかったんで会えなかったとか。マジかよ。

 明日はふたりが冷気の特大精霊の所に案内してくれることになった。ちなみに出会いの儀式もやってくれると言うので、お願いすることにした。


 夕餉も司祭一家に招かれた。素朴な野菜シチューはジンジャーが効いていて、食べると体の芯からポカポカして来た。あたりが冷え込んで来ているせいもあり、大層旨かった。


 翌朝、外は真っ白に雪化粧。積雪は2cmくらいだが、冷気の特大精霊が住む高原までは馬車で向かうことにした。出会いの儀式のために精霊巫女の母娘が同行してくれたのだが、雪化粧の高原ではウサギの巣穴など見付かるはずもなく…。俺は念話を送ってみた。

『こんにちは。冷気の精霊さん。』

『…。』間違いなくいる気配はするが返事がない。警戒されてるのかな?

『ウサギの巣穴が雪で埋もれてるんだけど、出会いの儀式はどうしたらいいの?』

『出会いの、儀式は、別に、やらなくて、いい。』

『え?いいの?』

『うん、3代前の、巫女が、やり出したの。』

『そうなの?』この衝撃的な事実は、精霊巫女さんに伝えた方がいいのだろうか?

『チルは、それに、付き合ってるだけ。』

『チルって言うんだ?俺はゲオルク、よろしくね。』

 すると、眼の前にひと抱えもある大きな藍色の光の珠が現れた。


「なんてこと!出会いの儀式をしてないのに精霊様が現れたわ。」

「こんなの初めて。」精霊巫女とシャルは揃って驚いている。

「「「「?」」」」うちのお姉様方は、契約前でまだ見えないから、状況がよく飲み込めていない。笑


『ゲオルクは、チルに、何の用?』

「チルを旅に誘いに来たんだよ。」

『旅?』

 チルの疑問に、俺に代わって契約精霊たちが答えた。

『ゲオルクとあちこち回るの。』『魔獣もやっつけるの。』『温泉にも、入るのー!』

『温泉!行きたい。』チルは温泉に食い付いた。

 食い付くの、そこなんかい!笑

「一緒に行こうよ。」

『チルも、行くー。』

「じゃぁ、契約しないとね。」


 藍色の光の珠だったチルは第一形態の幼女に変わり、俺の腕の中に飛び込んで来て、両手で俺の頭を抱え、契約の儀式である濃厚なキスをした。

 これには一部始終が見えている精霊巫女の母娘が驚き、特にシャルは赤くなって下を向いた。子供には刺激が強かったか?相手は幼女だけどな。


 長いキスが続き、チルの体が藍色に光って契約が成立すると、お姉様方にもチルが見えるようになった。

「いつ見てもこのシーンは、背徳感が拭えませんわね。」

「まったく、子供とするキスじゃないわよね。」

「なるほど、このせいでシャルが赤くなって俯いたのだな。」

「あたしゃ、いつも言ってるが、幼女とこのキスはアウトだと思うよ。」

 はいはい、どうせそうですよー。


 第一形態のチルと契約したから、俺の魔力の上限は、1万加算されて17万になったはずだ。


 その後、藍色に輝くチルの所にツリとクレとフィアがやって来て、ツリは緑色に、クレは橙色に、フィアは赤色にそれぞれ輝き出した。チルとツリとクレとフィアが4人で手を取り合ってくるくる回り出した。情報の共有を始めたな。

 少女ふたりと幼女ふたりの組み合わせは、端から見てるとまるで姉妹だ。回りながら4人は交互にキスをして、それぞれが特大の光の珠に変わった。

 そのまま俺のまわりを、藍、緑、橙、赤の4つの特大の光珠が回っていたが、次第に回転がゆっくりになって最後は止まり、4人とも人型に戻った。


『ゲオルクとの、思い出を、3人から、教わった。』

『ツリが教えたー。』『クレも教えたー。』『フィアもー。』

「チル、よろしくな。それからこの4人は俺の仲間なんだ。」

 俺はチルに、お姉様方を紹介した。

「「「「よろしく。」」」」

 チルは俺の後ろに隠れた。いつもの光景だ。苦笑


 精霊巫女の母娘は完全に固まっていたが、俺は気にせず、精霊魔法の試し撃ちを始めた。

 チルに思念を送って、雪玉や冷気を放出した。ついでに雪ダルマも作ってみたら、上手く行った。笑

 何度か魔力切れを起こしたチルに、その都度キスで魔力を補給した。精霊巫女の母娘は相変わらず目を見開いて固まったままだった。笑


 ひと通りの試し撃ちを終えた俺は皆に告げる。

「そろそろ帰ろうか?」

 すると、フィアとチルが両肩に座り、ツリとクレが両横に来て俺の手を握った。4人の定位置確定だな。笑


 ここで我に返った精霊巫女見習のシャルが、

「ゲオルクさん、何なの?どう言うこと?精霊様がどうして?なんで…、キ、キ、キ、キスするの?」と、矢継ぎ早に質問を飛ばして来た。

「俺がチルと新たに契約したんだよ。だから、すでに契約していた他の3人と挨拶したって感じかな。」


「契約?それに挨拶?」

「うん。契約の儀式がキスなんだ。精霊たちが俺のイメージ通りに精霊魔法を使ってくれるお礼に、俺は精霊たちに魔力を補給するって言う契約をしたんだよ。」

「ゲオルクさんは4人の精霊様と契約してるのよね?」

「そうだよ。ちなみにシャルが気になってる精霊とのキスは、魔力の供給方法なんだ。エッチな意味じゃないからね。」

 カーっと真っ赤になって俯くシャル。かわいい。笑


「4人の精霊様と契約するなんて…、とても信じられないわ。でも、眼の前で実際に…。」ぶつぶつと独り言を呟いてる精霊巫女さん。

 昨日、納得したんじゃなかったんかい!笑


 混乱している精霊巫女さんを見て、フィアが悪戯っぽい笑みを浮かべた。

『ゲオルク、いい?』

「小さいのにしろよ。」

『うん。』満面に笑みを浮かべたフィアが、真上に火球を1発打ち上げて、上空で爆発させた。ドーン。

 見上げてそのまま尻もちをつく精霊巫女さん。あらら立てない。腰を抜かしたようだ。でもこれで納得しただろう。笑


「そうだ、チル、このままじゃまずいな。」

 俺はいったん精霊たちを放し、荷物の中から絹の薄織の反物を取り出し、チルの貫頭衣を作った。この反物も残り少ないな。新しいのを買わなきゃ。

 チルに貫頭衣を着せようとするとおなじみの反応が出た。

『やー、これ、嫌ー。』

「ごめんなー、俺と契約して皆から見えるようになったからさ、裸じゃまずいんだよ。」

『チル、平気ー。』

「チルが平気でも俺が困るんだよ。ほら、他の皆も着てるだろ?」

『ぶー。』あ、むくれた。かわいい。

「おお、よく似合ってるじゃないか!」何とか宥めて着させた。

『窮屈ー。』


 改めて定位置に来た精霊4人。右肩にフィア、左肩にチル、右隣にクレ、左隣にツリだ。肩のふたりは俺の髪の毛を掴んでおり、両隣のふたりは手を繋いでいる。この後、さらに増えたらどうなるのだろう?

「ゲオルクどの、まるで親子だな。」

「ほんとよねぇ。いいパパっぷりだわ。」

「子煩悩な優良物件だけど、どうかな?」

「ゲオルク、がっつくな。実は熟したら落ちるもんさ。」

「もう、シャルが聞いてますわよ。」

 あ、シャルが赤くなってる。笑


 セアリューの教会でもう1泊お世話になった。帰りもお世話になるかもしれないので、その分も含めて金貨1枚を寄進したら、司祭さんは大層驚いていた。


設定を更新しました。R4/2/27


更新は火木土の週3日ペースを予定しています。


2作品同時発表です。

「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。

https://ncode.syosetu.com/n2002hk/


カクヨム様、アルファポリス様にも投稿します。


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