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精霊の加護013 回想:エトワールへの暫定加入と決別

初作品なので、不慣れですがよろしくお願いします。


更新は火木土の週3日ペースを予定しています。

精霊の加護

Zu-Y


№13 回想:エトワールへの暫定加入と決別


 王都に着いたその日のうちに、美人で巨乳の受付ジュヌさんと懇ろになってしまった。超ラッキーである。

 しかしその後はと言うと、東府のリーゼさんと同じように、お預けである。まぁ仕方ないか。笑


 王都に来て1週間、ゲオルギウスは現れない。

 俺はジュヌさんに紹介された、Lアタッカーを探しているパーティに、暫定加入を申し込むことにし、面接に臨んだ。3人の男たちが現れた。俺より上だ。20歳過ぎくらいか?


「俺がリーダーのアンドレで狂戦士だ。で、こいつが重歩兵のセドリック、それから神官のシモンだ。よろしくな。」

「射手のゲオルクです。よろしくお願いします。」

「なんだ、射手かよ。俺たちが欲しいのは魔術師なんだがな。」

「セド、そう言うなよ。魔術師がいねぇんだからよ。」シモンがとりなした。


「そうだよ。で、ゲオルク、なんか条件があるんだって?」

「はい。実は所属していたパーティとはぐれてまして王都で合流予定なんです。そのパーティと合流できるまでの繋ぎでよければお願いします。」

「正式加入じゃねぇのか。どうすっかな。」アンドレが迷った。

「まぁ、いねぇよりいいんじゃねぇの?」さっき射手と言うことで不満そうだったセドリックが前向きな発言をした。

「そうだな、試しに一緒にクエストに行ってみるか。」


「おい、アンドレ、分け前の条件を確認しとこうぜ。」

「ゲオルクはFランクだよな。俺たちはEランクだ。うちは1ランク違うと分け前は2倍って決まりでやってる。つまり2:2:2:1だな。お前の取り分は報酬の1/7になるがそれでもいいか?」

「うーん。」ゲオルギウスではランクに関係なく人数割りだったから条件面は悪い。

「端数が出たら、取り分の少ねぇお前にやるけどよ。この条件が嫌なら他をあたってくれ。」

「おい、アンドレ、そんな冷てぇ言い方すんなよ。

 ゲオルクよ、おめぇがEランクに上がりゃぁ俺たちと五分だぜ。そうなりゃ、均等割りで1/4だ。」

「そうだな。FからEはそんなに長くねぇぜ。EからDはしんどいけどな。」

「違ぇねぇ。」と言って笑う3人。EランクからDランクになかなか上がらないようだ。


 なんか感じよさそうだな。取り敢えずお願いするか。

「じゃあ、お願します。」

「取り敢えず仮採用ってことで、ゲオルクの実力を見せてもらおう。なんか適当なクエストはねぇかな?」アンドレが言った。


 俺たちは、王都近郊で出没するクレイジーウルフ3頭の討伐クエストを受けた。

 クレイジーウルフは凶暴化した大型の狼で、初級の冒険者でも手こずるので、デビューしたての冒険者ではまず太刀打ちできない。要するに俺が初級に達してるか見ようと言うのだろう。


 目撃情報をもとにクレイジーウルフを探索するがなかなか見付からない。精霊から情報を得たいが、王都付近は精霊が少なく、しかも思念の交感のみで会話ができない小さなサイズの精霊ばかりだ。これだと情報は聞き出せない。

 獲物を見付けられないまま時間ばかりが過ぎて行く。


 ようやくそこそこのサイズの精霊を見付けた。

「やあ、こんにちは。」

『こんにちは。』

「クレイジーウルフって知ってる?」

『うん。』

「ここら辺にいる?」

『いるよ。今は、巣穴に、潜ってる。』


「おいゲオルク、いったいどうしたんだ?」アンドレが聞いて来た。

「アンドレ、ちょっと黙ってて。

 ねぇ、巣穴ってどこ?」

『あっち。』

 精霊から巣穴の方向と巣穴までの距離を聞き出した。


 固まってるエトワールの3人。3人に精霊は見えないし、精霊の声は聞こえない。つまり3人から見た俺は、虚空に向かって相手がいるかのごとく話す変な奴なのだ。一応事情を話してみた。

「俺、精霊が見えるし話もできるんだ。」

「は?お前、何言ってんの?」とシモン。

「気味悪ぃから、変な悪ふざけはやめろよな。」とセドリック。

「まあ信じられないのは分かるけど、俺が精霊から聞いた場所に行ってみようぜ。」


 半信半疑で付いて来る3人。

「このあたりに巣穴があるはずだ。手分けして探そう。」

 しばらくして…、

「あった。ほんとにありやがったぞ。」アンドレが呟く。

「燻して巣穴から追い出したところを仕留めよう。」俺が提案すると皆が同意した。

 巣穴で寝ていたところを燻されて、息も絶え絶えに逃げ出してきたクレイジーウルフを狩るなど容易い。俺たちはクエストを達成した。


 冒険者ギルドでのクエスト達成を報告し、獲物のクレイジーウルフの毛皮を素材として、魔石とともに買い取ってもらい、報酬の分配になった。全部で金貨1枚と大銀貨6枚になった。分けるためにすべて大銀貨にして16枚だ。

「ひいふう、ひいふう、ひいふうのいちと。余った2枚はゲオルクでいいよな?」

「「おうよ。」」

「ゲオルクがいなきゃ、まだうろうろ探し回ってるぜ。」

「しかし、精霊と話せるなんざ、てぇしたもんだなぁ。」

「まったくだ。」

 結局分け前は、俺が2枚余分に貰ったせいで、1:1:1:1となった。


「ゲオルク、文句なしで合格だ。これからよろしくな。」

「よろしく。」

 こうして俺はエトワールに加入し、その日はみんなと痛飲した。


 繋ぎのつもりだったが、ゲオルギウスの消息が分からないので、エトワールとともに活動を続けていた。

 あっと言う間にほぼ1年が過ぎ、その間はまぁ順調だった。ところがだ。

「はい。確かにクエスト達成を確認しました。これで、アンドレさん、セドリックさん、シモンさんはDランクに昇格しました。」

「おお、とうとう上がりやがったか。」

「EからDになるのに2年半だな。」

「まぁ俺たちゃ、冒険者になるのも遅かったけどな。」

「おう、ゲオルク、今夜は祝いだ。付き合えよ。」

「ああ、皆、昇格おめでとう。」和気あいあいとしてたのはここまでだ。


「じゃぁクエスト報酬の分配な。ひいふうみい、ひいふうみい、ひいふうみいのいち、と。」アンドレが分けるが3:3:3:1ってなんだ?

「アンドレ、どう言うことだ?」

「え?何がだ?」

「報酬の分配だよ。3:3:3:1って何だよ?なんで1/7がいきなり1/10になるんだ?」

 え?だってよう、お前も聞いてただろ。俺たちはDに上がったんだぜ。お前ぇはFのまんまだから俺達とは2ランクの差だ。1ランクにつき2倍なんだから2ランク違えば4倍だぜ。今回で上がったからよ、2倍と4倍の間を取って3倍だよ。」

「なんだそりゃ。聞いてないぞ。」


「ゲオルク、何言ってんだ?最初に報酬の分配ルールを確認したよな?」アンドレが怪訝な顔をする。

「そうだぜ。お前がEに上がれば俺たちと五分だって俺が言ったらお前は納得してたよな。」セドリックが入って来た。

「俺たちが先にDになっちまったんだから仕方ねぇだろ。」

「じゃぁ、次からは4:4:4:1で俺の取り分は1/13なのかよ。」

「「「そうだよ。」」」ふざけんな、こいつらグルだ!

「おい、冗談じゃねぇぞ。」

「待て、ゲオルク。いいか、よく考えろ。俺たちはお前が加入するときに報酬の配分方法をしっかり確認した。お前は納得したはずだ。今になって不平を唱えるならエトワールを抜けろ。今回の配分は譲らんぞ。ギルドの調停に訴えるなら訴えればいい。」アンドレが言い切った。


「お前さあ、今夜の俺たちの昇格祝いには来なくていいわ。せっかくの祝いだからよ、不満顔で付いて来られても互いに不幸だ。今夜は俺らだけで楽しむからよ、ひとりで冷静になって、お前の言い分が正しいか俺たちの言い分が正しいか、よく考えてみろよ。」と、セドリック。

「せっかく昇格したってのによ、なんか胸糞わりぃな。もう行こうぜ。」シモンが捨て台詞を吐いて3人は出て行った。


 ふん、結局俺は仲間じゃないって訳か。

 エトワールをやめてやろうかとも思ったが、ソロ向けのクエストはほとんどないので、それから半年は1/13の分け前で辛抱した。

 当然、あれ以来、エトワールのメンバーとはぎくしゃくしている。そのうちゲオルギウスの消息が分かれば、こんな奴らとはおさらばだ。


 決定的に決裂したのはアンドレたちの昇格から半年後。渋々ではあるがエトワールで活動していたら、俺は17歳と半年でEランクになった。ゲオルギウスとの別れ際にFランクに上がってから1年半、ようやく上がったのだ。

「ゲオルクさんは今回でEランク昇格です。おめでとうございます。」これを伝えるジュヌさんは、心底嬉しそうに微笑んでくれた。


「ゲオルクおめでとう。よかったじゃねぇか。」アンドレが言い、セドリックもシモンも祝福してくれた。

「じゃぁ報酬の配分な。ひいふうみい、ひいふうみい、ひいふうみいのいちと。」

 俺がEランクに上がったので、Dランクのアンドレたちとの差は1ランクに縮まった。2ランク差から1ランク差になったので、配分の割合も4倍から2倍となり、間を取って3倍だ。つまり次回からは、2:2:2:1と言うことだ。


「ゲオルク、揉めたときもあったが、まぁ今までありがとな。Dランクの魔術師が見付かったからよ、お前とは今日で最後だ。」

「え?」

「最後にお前の昇格を祝えることができてよかったぜ。今夜は奢るよ。」

「なんだそりゃ。俺のランクが上がって配分が増えたらお払い箱かよ。」

「は?何言ってんだ?魔術師が見付かったからって言っただろ?」

「もともとお前はゲオルギウスが来るまでの繋ぎで入ったんだよな?ゲオルギウスが来たら当然お前は抜けるんだろ?」

「俺たちだって、Lアタッカーとして欲しかったのは魔術師だって言ったよな。射手のお前を入れたのは魔術師がいなかったからだぜ。」

「それでもよ、お前が正式加入だったら抜けてもらうことはなかったがな。」

「まさかお前さ、ゲオルギウスと合流できたら自分が抜けるのはよくて、俺たちが魔術師を見付けたから抜けてくれって言うのはダメだとか、そんなふざけた考えじゃないよな?」

「…。」俺は3人を睨んだ。こいつら、ぜってーグルだ。


「お前、自己中過ぎるぞ。」セドリックが呟いた。

「所詮は世間知らずのガキってこった。」アンドレが肩をすくめた。

「なんか昇格を祝える雰囲気じゃねぇな。」シモンが溜息をついた。

「もういい。世話になったな。」俺は3人に背を向けた。


 なんか王都が嫌になってしまった。

 ジュヌさんとの仲は、食事には付き合ってもらえるものの、初回っ切りまったく進展しておらず、躱し続けられている。一流になってから来いって、リーゼさんの言い分と同じかよ。苦笑

 今更パーティを組む気にもなれないし、新天地でソロ活動でもするかな。


 王都を発つ前に、ジュヌさんにだけは挨拶しに行った。名目はゲオルギウスの仲間を探しに行くと言うことにして。


 行く当てもなく、眼の前にあった定期馬車に飛び乗ったら西府行だった。


2作品同時発表です。

「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。

https://ncode.syosetu.com/n2002hk/


カクヨム様にも投稿します。

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