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精霊の加護010 旅立ちの理由

最初の部分に、設定を追加しました。R4/1/9


更新は火木土の週3日ペースを予定しています。

精霊の加護

Zu-Y


№10 旅立ちの理由


 次の日、大司教様から東府教会所属で、東府教会大司教直属助祭の身分証と、教授から東府魔法学院所属で、東府魔法学院主任教授直属特別研究員の身分証をもらった。

 このふたつの身分証には、後から何度も助けられることになる。


 教会の身分証は、助祭だから大したことないだろうと高を括っていたが、東府教会大司教直属と言うのがミソで、東府はもちろんだが、王都、西府、南府、北府の教会以下、すべての町や村の教会でも特別待遇で、無料での宿泊も可能だった。しかし、門限が窮屈なので少ししか利用しなかった。特別待遇過ぎて、他の大司教様以下が必ず面会して来ることになったのは後日譚。


 魔法学院の身分証も、研究員の上に特別が付くから多少は扱いがいいのかなと思っていたが、さらにその上の東府魔法学院主任教授直属と言うのがミソで、東府も含めて、王都、西府、南府、北府のすべての魔法学院で特別待遇だった。書庫の文献は一般文献の他、極秘文献もすべて閲覧できたのも後日譚。


 さて、俺は翌日から東府魔法学院のルードビッヒ研究室に、ツリとクレを伴って通うことになった。


 研究室では、ツリとクレの魔法の威力の測定から始まったのだが、ふたりの魔法は王都の宮廷魔術師団の中でも十分通用する威力だと言うことが分かった。

 つまり、第二形態になれば宮廷魔術師団を上回ると言うことになる。さらに形態進化をすれば途方もない威力になると言うことだ。


 威力測定の後は、俺の目的にも合致するのだが、魔法学院の書庫から精霊魔法に関するあらゆる書物を引き出して、記載されている内容の検証が、1ヶ月ほど行われた。


 俺はこの間に、過去の精霊魔術師の出身について様々な文献に眼を通し、いろいろ調べ上げて、およそ次の結論を得ていた。


 まず中部国王領からは精霊魔術師が出ていない。

 東部からは木の精霊魔術師、西部からは土の精霊魔術師が出ており、この事実はツリとクレの存在と合致している。

 また、南部では、本土からは水の精霊魔術師、島からは風の精霊魔術師が出ている。

 北部では、鉱山地帯から金属の精霊魔術師、火山地帯からは火の精霊魔術師、そして北部山脈の奥の雪山地帯から冷気の精霊魔術師が出ている。

 さらに、トレホス王国の国土の東にある神聖ニュシト教国では光の精霊魔術師が出ており、トレホス王国の国土の西にあるボドブリ帝国では闇の精霊魔術師が出ている。


 これらの情報をもとに、俺はまず火と金属と冷気の3種類の精霊魔術師が出ている、北部から調べることにした。

 こうなると俺はもう旅に出たくてしょうがない。研究を続けたい教授との折衝が始まり、最終的には次の研究テーマのデータを取って一旦解放されることになった。


 次の研究テーマは、魔力切れを起こしたツリとクレに、俺が魔力供給する前と後での、俺の体内魔力量を測定すると言うものだった。

 俺の魔力量の測定は、教会の大玉でなくてはできない。大玉とは、魔力測定用の水晶玉の大きなもののことである。大玉は非常に希少であり、教会の御蔵に厳重に保管されている。


 測定の日は大司教様も立ち会い、約束の10時よりずっと前の8時から、教授は教会に来ていた。笑

 大司教様も教授には半ば呆れつつ、予定より1時間早い9時に、大司教様、教授、そして俺とツリとクレで御蔵に向かった。俺の精霊魔法が極秘のため、いつも大司教様に付いて来る神官たちはいなかった。


 俺の魔力は10歳の測定時に8万であった。大玉は高い魔力が測定できる分、1000位以下の値は分からない。その範囲は誤差で片付けられてしまう。取り敢えず確認のために、俺の魔力量を測定することにした。

「ではゲオルク、大玉に手をかざしての。触れてはいかんぞ。」

「はい。」

 大玉が光り…ピシっ!

「「「え?」」」

 大玉にひびが入ってしまった。


「何と言うことだ。10万を超えておる!」大司教様が呟く。

「あの、大司教様、申し訳ありません。」

「そうか、10歳から魔力量も成長しておるのだ。魔力量が成長する者も多くはないが、いることにいるからな。」教授がひとり納得している。

「しかし教授、ゲオルクの増加量には眼を瞠るものがあります。」

「そうですな。大司教様の仰る通りです。大玉にひびが入ったゆえ、限界量の10万を超えたとしてもそう多くは超えてはおりますまい。12~13万と言ったところでしょうか。それでも8万からすれば1.5倍にはなっておる。これは特異な事例としか言いようがありませんな。」


『ふたりは、分かって、ないね。』『うん、何も、知らないね。』

「なんじゃと!」「どう言うことだ?」

 大司教様と教授の質問に、ふたりは俺の陰に隠れた。

「ツリ、クレ。どう言うこと?」

『ゲオルクの、魔力量は、会ったときから、10万。』

「え?ツリと会ったときから?」

『そう。この水晶玉、もとから、中に、小さいひびが、あって、不正確。』

「そうなの?」

『ツリと、契約して、1万、増えた。』

『クレとも、契約して、1万、増えた。』

「そうか、じゃぁ今はふたりのおかげで12万か?」

『今は、そう。』

「今は?」

『ゲオルク、まだ、覚醒してない。』

『潜在能力は、ミリオネア。』

「ミリオネア?」

『100万。』

「え?100万もあるのか?」

『だから、たくさんの、精霊と、契約、できる。』


 横で聞いていた大司教様と教授が顔を見合わせている。教授がツリとクレに向かって口を開こうとしたのを、大司教様が慌てて口を塞いで抑えた。笑


「どうやったら覚醒するのか聞いてくれ。」大司教様は俺に聞いて来た。大司教様、口調がいつもと違いますよ。のめり込んでますね。笑

 大司教様に口を塞がれたままの教授が横で何度も頷いている。教授もこれを聞こうとしたらしい。笑


「どうやったら覚醒するの?」ふたりに聞いた。

『魔力を、使い切る。』

『でも、ゲオルクは、それが大変。』

「俺は魔力を放出できないからな。ツリやクレに魔力を使ってもらって、その分を補充するしかないよ。」

『ゲオルクが、凄いのは、魔力量だけ、じゃない。』

『回復量が、もっと凄い。』

『だから、なくならない。』

「そうか!それでふたりに魔力を補給しても減った感じがしないんだ。」

『そう。』


「じゃぁ、どうすりゃいいんだ?」

『たくさんの、精霊と、契約すれば、いい。』

『一気に、たくさんの、精霊の、魔力を、回復すれば、いい。』

「なるほどなぁ。」

 教授は必死にメモを取っている。ブレないなぁ。笑

『あとは、魔力量が、満タンのとき、いっぱい、補給。』

『ゲオルクは、いっぱい、補給しないと、ダメ。』

「そんな方法もあるのか。素晴らしい。素晴らしいぞ!」と、呟く教授。ひたすら、メモメモメモメモメモ…、やっぱりブレないなぁ。笑


 少しして教授のメモが終わり、大司教様も落ち着きを取り戻した。

「大司教様、教授、お聞きの通りです。」

「すばらしい。大収穫だ。

 ゲオルク、君はすぐに精霊探しの旅に出たまえ。そして多くの特大精霊と契約するのだ。」

「教授、私もそれがいいと思います。

 ゲオルク、契約したら精霊魔法をドンドン使って、精霊の形態を進化させるのも忘れずにな。」

「はい。」


 こうして俺の精霊探しの旅は、意外な理由から支持されることになった。


 この日は東府に来て、初めて早い時間に解放された。

 東府に来てからほぼ1ヶ月だが、ずっと精霊魔法に関する実験や検証があり、その後も文献調べなどで、毎日、朝から晩まで魔法学院にいた。教会には寝に帰るようなもので、ほとんど休みなく教会と魔法学院を往復していた。


 そう言えば、この間リーゼさんとも会っていない。今日は冒険者ギルドへ、リーゼさんに会いに行こう。


「リーゼさん、こんにちは。」

「あら、ゲオルク君、あの後ちっとも顔を出してくれないんで、忘れられたかと思ってたわ。」

「ごめん、ずっと魔法学院で遅くまで研究に付き合わされてて、この時間に開放されたのは今日が初めてなんだよ。」

「あら、ギルドも人使いが荒いけど、魔法学院はそれ以上ね。ねぇ、ゲオルク君、ひょっとしてルードビッヒ教授に付いてない?」

「お、正解。なんで分かったの?」

「やっぱりね。あの教授はスイッチが入ると寝食を忘れる方よ。その分、王国一の研究者だけどね。でも、あの物知り教授を夢中にさせるとは、余程面白いテーマなのね。」

「その辺も含めてゆっくり話ししたいんだけど、今夜あたり食事でもどうかな?」

「いいわよ。」


 よっしゃー。俺、グッジョブ!


2作品同時発表です。

「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。

https://ncode.syosetu.com/n2002hk/


カクヨム様にも投稿します。

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