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精霊の加護097 三の姫殿下への御機嫌伺とワイン騒動

精霊の加護

Zu-Y


№97 三の姫殿下への御機嫌伺とワイン騒動


 殿下の執務室を辞した後、わが妻たちを部屋に送り届け、精霊たちを連れて三の姫殿下のマリー様への御機嫌伺に、面会を申し入れた。

 待合室で待つこと30分、マリー様との面会が叶った。


『『『『『『『マリー。』』』』』』』「皆様、よくいらっしゃいました。」

『マリー、ソルだよ。』精霊たちは記憶を共有するから、初対面にも拘らず、ソルはマリーのことを知ってる訳だ。

「ソル様、教国でゲオルク様と契約成された精霊様ですね。」

『そだよー。』

 美少女の精霊たちと、美少女のマリー様が戯れてる様子は和むー。マリー様付きの侍女たちも、すでに慣れたもので、微笑ましく見ている。

 最初のときは、精霊たちとマリー様の間に割って入ろうとしたものな。苦笑


 ひと通り精霊たちと戯れてから、

「ゲオルク様!よくお出で下さいました。」マリー様が飛び込んで来たのを受け止めて、ハグしつつ頭を撫でて差し上げる。

 前回お会いしたときは、8歳のマリー様に、王太子殿下が男女の大人の営みを吹き込み、股が裂けると脅したせいで、物凄く警戒された…と言うか、怯えられてしまったのだが、3ヶ月に亘る教国への遠征の間に、どうやらほとぼりが冷めたらしい。

 それにしても飛び込んで来たのは初めてだ。随分好感度が上がったようだが、なぜだろう?


「マリー様、教国に行って参りました。これはそのお土産です。」

「まあ、ありがとうございます。」

「それからこれは侍女の皆様に。」

「まあ、侍女たちにまで。と言うことはあの…。」マリー様が顔を赤くされた。

 前回はこの反応はなかった。王宮では、侍女への手土産は、気を効かせて場を外してくれと言う意味なのだそうな。赤くなったと言うことは裏の意味を学んだと見える。


「マリー様、殿下が以前に仰った様なことは致しませんが、お心細いようでしたら、侍女の方々には、いて頂いても構いませんよ。」こそっとマリー様に耳打ちする。

 マリー様はくすぐったそうに笑いながら、

「ゲオルク様が、そのようなことをなさらないのは分かっておりましてよ。」と耳打ちして来た。

 その様子を見ていた侍女たちがそそくさと場を外す。互いに耳打ちで話したシーンは、見方によってはイチャラブだ。苦笑


「あら、侍女たちは早速気を効かせてくれましたわね。」なんか8歳の少女の台詞じゃねぇな。

「そうですね。」まぁマリー様が平気なら俺はこれでもいいけどな。お子ちゃまには欲情しないし。

 それにしてもこの子が将来、俺の正室ねぇ。ずっと先のことだが、まったく想像も付かねぇわ。

「ゲオルク様、教国ではご活躍だったそうですわね。そのお話を聞きたいですわ。よろしいかしら?」早速そう来たか。なるほど、眼がキラキラしている。流石、冒険者に憧れるお姫様。笑


 ま、そういう訳で教国での話を、冒険譚風に多少脚色しつつ、お話したのだった。

 マリー様が殊の外興味を示されたのは、ヴァーを襲撃に来たドーラを迎撃して仲間にしたことと、誘拐犯の奴隷商人からキュプロンの子供たちを救出したことだった。流石に冒険者志望のことだけはある。マリー様は、派手な立ち回りの話がお好きなようだ。

「ドーラはぜひ紹介して頂きたいですわ。」

「近いうちに紹介しますよ。」


「ところでゲオルク様、私はアイチャと仲良くなりましたの。」

「え、アイチャ?教国の巫女見習ですか?」

「そうです。アイチャは留学で王都教会に来てますの。わたくしは王都魔法学院所属ですから、普段はお会いする機会はないのですけれども、王都騎士団や王都近衛隊や王都教会の学生方と、合同演習をする機会がありまして、そのときにアイチャと知り合いましたの。」

「そうですか。俺はイスタナンカラで、アイチャに会いました。アイチャは教国の巫女見習では、トップの才能を持つ優秀な子ですよ。」

「その様ですわね。もともとはソル様と契約予定だったそうで。でも、増長していてソル様に嫌われてしまったと、それはもう、大変反省してましたわ。」

「そうですか。失敗を反省できるのなら、それを糧にさらに成長できますね。」

「ええ。それはもう回復魔法の鍛錬に、血の滲むような努力で励んでますもの。わたくしも負けていられないですわ。」

「いい意味でライバル関係ですね。」

「はいっ。」マリー様の笑顔が眩しい。かわいい。


 マリー様とへの御機嫌伺を終え、部屋に戻ると、わが妻たちは旅の垢を落として小ざっぱりとしていた。風呂上がりで、皆、長い髪をアップしてるので、うなじが妙にそそる。マイサンがむくむくとマイドラゴン化して来た。これは内緒だけれども。苦笑


『ゲオルクー、お風呂―。』『『『『『『『お風呂ー。』』』』』』』

「はいはい。」俺は精霊たちを連れて、部屋に備え付きの風呂に行く。

『あれー、ゲオルクー。ツリたちに反応してるのー?』『してるのー?』してねぇよ。さっきわが妻たちのうなじを見たせいだ。

『いやーん、ろりこーん。』『きゃー、えっちー。』こいつら…。またわが妻たちに襲わせてやろうか?

『やー、それはいやー。』『もう男の子にならないから平気だもーん。』


 精霊たちが、教国で少年の姿になったとき、初物食いが大好きなわが妻たちが、えらい勢いで食い付いた。ショタ全開に変貌したのだ。

 精霊たちは、わが妻たちに衣類をすべてひん剥かれ、さあ食われるぞと言うときに、少女の姿に戻ってことなきを得た。

 あのときの精霊たちの慌てっぷりは、心底爆笑ものだった。

『ゲオルクの、意地悪ー。』『意地悪ー。』この通り、俺が考えてることは、精霊たちには筒抜けだけどな。苦笑


 精霊たちを洗いながら、俺は思う。

 早く第五形態になんねぇかな。そしたら…むふふ。

『『『『『『『『えっちー。』』』』』』』』やべ、考えてること、筒抜けだったんだ。苦笑


 この晩、わが妻たちと、6連ぱふぱふを皮切りに、思う存分痴態を演じたのだった。お付きの侍女は、監視=覗きに来ないと言っていたが、そう言っておきながら、来てるかもしれないしな。

 この晩も、魔力量の潜在能力上限までカンストしてないリーゼ、ジュヌ、カルメンの魔力量を100ずつ上げた。


 翌日、朝餉を終えて嫁たちを連れて王家御用達の仕立屋に行った。すぐさま店長が揉み手で出て来て、超VIP待遇だった。何でもスピリタス調のドレスが物凄く評判で、ホクホクなのだそうだ。

 スピリタス調のドレス自体は着こなせなくても、そのブランドの服と言うことで、他の商品が売れまくっているとか。


 仕立屋では、ドーラ用のスピリタス調ドレスを発注した。ドーラもボン・キュッ・ボンなのでスピリタス調が似合うはずだ。他の妻たちのドレスとの色被りを避けて、ドーラのドレスの生地は翡翠にした。また、翡翠はドーラがエンシェントドラゴンのときの色に近い。

 リーゼの紺碧、ジュヌの山吹、カルメンの純白、ベスの漆黒、ビーチェの深紅、そしてドーラの翡翠である。


 細かく採寸して仮縫い、仮縫い後、着てみて細部を修正して本縫いと手間が掛かるのだが、最優先で仕上げてくれるそうだ。

「仮縫いは明日の午後までには何とか。」っていったい何なの?前はもっと掛かったじゃんよ!


 店長曰く、

「ゲオルク様のご要望でしたら何でも聞きますよ。もちろんすべてにおいて最優先でございます。ただし、王家からのご依頼を除いてですが。」だってさ。

 店長には随分懐かれたものだ。もっとも、スピリタス調の売り出しはこの店に限定したけどな。それでホクホクなのだろう。


 仕立屋を出たがまだ昼前である。俺たちはそのまま手頃な飲食店に入った。注文を取りに来た店員が、

「いらっしゃいませ。いいワインが入ってますよ。」

「ほう、いいワインか?どこのワインだ?」ギョッとする店員。

「お客さまは最近地方から出て来られた方ですか?ここ半年、王都ではワインと言えばシャンパワインですよ。特に白をスパークリングにしたシャンパンはキンキンに冷やすと、他ではお目に掛かれない代物です。」


 店員の田舎者扱いの見下した対応にちょっとイラっと来たので、遠慮なく弄ってやることにした。

「俺は確かに東部の田舎者だが、シャンパンは知ってるぞ。」

「それはそれはようござましたな。」あ、こいつ、信じてねぇな。

「シャンパワインは確かにいいワインだがな、王都は王国中からいい品が集まるのだろう?まさか王都のワインが、シャンパワイン一択とは思わなかったぞ。」

「なんですって?」


「シャンパワイン以外でお勧めとかないの?ここんとこ、もうどの店でもシャンパワインでさ、確かに旨いけど、こう、シャンパワインばっかりだと、他のも呑みたくなるんだよなぁ。」って、はい、もちろんハッタリです。

 だってさ、王都には昨日帰って来たばかりだもの。で、この店が、今回、王都に来てから、初めての外食なんだけれどもね。


「シャンパワインは最上のワインですからお出ししてるんですよ。」あ、店員がムッとした?笑

「まぁまぁ、そうムキになるなよ。

 あ、そうか!要するにこの店はシャンパワインしか置いてないんだ?そりゃ悪かったなぁ。じゃあいいよ、シャンパワインで。

 しかしなぁ、東府の店ならワインが一択ってことはないんだけどな。中部はワインの名産地ってのに、意外と大したことないのな。」さらなる追い討ちで、いけ好かない店員を煽る俺。

「ぐぬぬ。」あ、店員が怒った?笑

 わが妻たちが下を向いて震えている。どうも笑いを堪えているらしい。


 ちょっと調子に乗ってた店員を弄り倒してやったが、この店の料理はなかなか旨かった。しかし…。

 わが妻たちも訝しそうにしている。初めてシャンパワインを飲むドーラも首を傾げている。やはりな。

「おーい、ちょっと君。」俺はさっきの店員を呼んだ。

「なんですか?」明らかに迷惑そうな態度をしている。

「ちょっと店長を呼んで来てよ。」

「はぁ?何、言ってるんですか?」

「お前、態度悪ぃな。早く呼んで来いよ。」ひと睨みすると、店員はビビってそそくさと店長を呼びに行った。


「お客様、何でございますか?」店長がやって来た。

「この店はシャンパワインを薄めて出すのか?」

「何を仰ってるんですか?言い掛かりはやめて下さいよ。衛兵を呼びますよ。」

「じゃぁ、これ、呑んでみろよ。衛兵を呼んでもいいけどよ、ヤバいことになるのはこの店の方だぜ。」俺はこの店のシャンパワインを店長に突き出した。


 店長は不承不承テイスティングをしたが…、「!」顔色が明らかに変わった。

「どういうことだ?」店長が店員に聞く。

「あ、いえ、その…。」店員がしどろもどろになった。

「お客様、申し訳ございません。

 スタッフを全員集めろ。厨房の者も全員呼んで来い。」

 店長は、例の店員に指示を出した。店員は真っ青になって震え出した。

「早くしろ。」店長が追い打ちを掛けると、

「申し訳ありません。私がやりました。」例の店員が白状した。

 店員曰く、田舎者=俺に舐めらたと思って、どうせ味なんか分かるまいと高を括って、軽い悪戯のつもりでやったらしい。


「申し訳ありませんでした。この者にはよく言って聞かせます。お代は結構ですので、今日のところはこれでご勘弁下さい。」

「いや、料理は旨いから料理の代金は払うよ。シャンパワインの代金は払わないけどな。」


「それよりご店主。よく言って聞かせますとはどういうことですの?解雇する者に何を言って聞かせるのです?」ジュヌが乱入した。あらら、相当お怒りになっていらっしゃる。汗

 そりゃそうだ、御母上のセシールさんが日夜世話して作ったブドウで、御父上のオーギュストさんが丹精込めて仕込んだシャンパワインだ。それを姉上のシュザンヌさんが必死に売り込んで今の評判を築き上げたんだものな。


「え?解雇はちょっと…。」

「何を言ってますの?うちが丹精込めて作ったワインを水で薄めて出すなんて許せませんわ。生産者のことを何だと思っていますの?

 この店員も店員ですが、店長、あなたもあたなです。あなたにうちのワインを扱う資格はありませんわ。」

「あの、もしかして…、シャンパワイナリーの関係者の方ですか?」店長が恐る恐るジュヌに聞いて来たのだが…。

 ジュヌはプイッと横を向てい答えない。完全に激おこプンプン丸だ。


 例の店員は真っ青になって震えている。

「そもそもお前が客を田舎者だと見下して、酷い接客をしたところから始まったんだぜ。そこんとこ、どう思ってるの?」

「申し訳ありませんでした。」

「いや、申し訳ありませんでしたじゃなくてさ、どう思ってんのかって聞いてんだけど。」

「申し訳ありませんでした。」

「ダメだ、こりゃ。」肩をすくめる俺。


「申し訳ありませんでした。この者は解雇しますのでご容赦下さい。」

「いいえ、もともと解雇する気はなかったのですから解雇する必要はございませんわ。その店員を解雇しようがしまいが、この店とのお取引は中止するように進言します。」

「それは困ります。何とかお許し頂けませんか?」

「なぁ店長、シャンパワインに胡坐をかいてないで、真面目に王国中からいいワインを探せよ。シャンパワインは確かに抜群に旨いがな、一択はないんじゃねぇの?」

「ですが…。」

「ですがじゃねぇよ。料理ごとにベストマッチなワインをひと通り揃えるつもりで頑張んな。そのためには当分、シャンパワインがない方がいいだろう?

 シャンパワインに匹敵するいいワインを揃えたら、わが妻の怒りも解けるだろうよ。」

「…分かりました。肝に銘じます。」


 それから、料理を堪能して、まともなシャンパワインも堪能して店を出た。店を出ると、店の外で例の店員が待っていて深々と詫びて来た。

「俺、天狗になってました。この店にはもういられないので、辞表を出して一から出直します。」

「あっそ。まあ好きにすれば。でもな、水で薄めたワインを呑まされた客は、あんたじゃなくて、ワイン自体を不満に思うんだぜ。あんたがやったことは、生産者を貶める行為だ。御免じゃ済まねぇんだよ。」

「はい。シャンパワイナリーに出向いて詫びて来ます。」

「やめとけ。丹精込めて作ったワインを台無しにしたってんで、ワイナリーの連中に半殺しにされるのがオチだ。それにワインを蔑ろにするあんたの詫びなんか、義父上には通じないよ。あんたは絶対に許されないことをやったんだ。」

「半殺しにされてもいいです。お詫びに行って来ます。俺もシャンパワインが大好きなんで。」

「大好きなワインになぜあんなことをしたのです?信じられませんわ。あなたは二度とシャンパワインを口にしないで下さいな。」

「はい。すみませんでした。」


 昼餉ではケチが付いたが、午後はドーラに王都を案内してやった。と言っても、案内役はジュヌだがな。


設定を更新しました。R4/7/31


更新は火木土の週3日ペースを予定しています。


2作品同時発表です。

「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。

https://ncode.syosetu.com/n2002hk/


カクヨム様、アルファポリス様にも投稿します。


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