ひき逃げ事故が起きた交差点
このお話は、2009年(平成21年)の夏頃の出来事になります。
自宅から最寄り駅まで歩いて行く途中で、白い立て看板が電柱に設置されていました。
そこには交通事故があった交差点と、車と自転車によるものであった事と、1週間前の14時頃にそこで事故を目撃された方は警察に連絡下さいと書かれてありました。
それを何日か横目で見ながら通勤をしていましたが、比較的よく通る交差点だったので、数日後の昼過ぎに自転車で行く事にしました。
大通りが交差する場所に着いたものの、どの辺で交通事故があったのか分かりませんでした。
なので、4か所ある横断歩道を全部渡る事にしました。
最初に居た横断歩道の手前では何も感じなかったので、正面の横断歩道を渡っていきました。
「うん、ここでもない、次に行くか…」
信号を待ってから次の横断歩道を渡ると、そこでも何も感じませんでした。
「次が3つ目の横断歩道か、ここで何も感じなければ帰ろう」
そう思って横断歩道を渡りましたが、特に異変はありませんでした。
「まあ、何もないに越したことはないよな…」
そう思い、そこから左側に曲がって数メートル進んだ時に、右耳の後ろから、
「キィィィーン」
という高音の耳鳴りがして、周辺が急に茶色っぽく見えました。
「何かが近くにいる!どこにいるんだ…」
思わずそこに自転車を停めると、白い立て看板の事を思い出しました。
辺りを見回すと、行き交う車の量は多いのに、人の姿が全く見えなくなりました。
「ヤバい、早くここから抜け出さないと…」
そう思い、再び自転車を動かそうと思った時に、30メートル位前からロードバイクが坂道を上ってくるのが見えました。
黒と銀色の自転車用ヘルメットを被って、頭を下げたまま上半身を起こし、骨盤を立てて背中にアーチができるような姿勢で軽快に坂道を上ってきました。
それを見て本能的に、
「このロードバイクを見てはダメだ!」
そう思い、下を向きました。
「そろそろ通り過ぎたかな…?」
堪えられず顔を上げると、まだ2メートル位手前にいました。
そして、そのままロードバイクの人を見てしまうと、驚愕しました。
何と!ヘルメットの下は空っぽで顔が無かったのです…。
ロードバイクは速度を落とす事無く走り去っていったのですが、交差点に差し掛かるといつの間にか消えていました。
あれは、看板に書いてあった事故と関係があるのだろうか…。
ともあれ、交差点で見えた悍ましい出来事でした。