表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
失敗作の鎮魂歌  作者: 時暮雪
1/3

前奏

「次の休み、遊園地に行こうぜ」


 その提案に、読んでいた新聞から顔を上げてソイツを見る。緑の瞳(・・・)が真っ直ぐにこちらを見ていた。


「何で遊園地なんだ」

「お前好きだろ?遊園地」


 大きくため息をつけば、不満そうな声が上がる。じろりと睨み付ければ、観念したように口が開かれた。


「…最近、流石に疲れてきてるだろ?だから、ご褒美と楽しみが欲しい」

「はぁ?」

「だから水族館も行こうぜ!」

「……金は全部お前持ちな」

「!おう!!任せろ!」


 何が楽しいのかニコニコとするソイツに、ため息をついてからもう一度新聞に目を落とす。

 新聞には、■■■■との■■が依然均衡していることと、■■■■■の研究が更に進んだということが大々的に書かれていた。

 ちらりとそれを見たソイツが、何かを考えるように俯く。


「…遊園地、行くんだからな」

「あぁ」

「…生きて行くんだからな」

「あぁ」

「………■■は、絶対死ぬなよ」

「あぁ…お前もな」

「…おう」


 それは、約束とも誓いとも呼べない程のやり取りではあったが。


「………死ぬなって、お前が言ったんだろ」


 硝煙と血の臭いが混ざった戦場で。敵国の兵士が振り下ろした剣により、ソイツの腹から止めどなく血が流れる。

 刺された胸から、その生温い赤が


「……止まれよ」


止まることなく


「…っ、止まれって」


流れて


「なぁ…!死ぬなって!!」


その体から、体温が、徐々に、けれど確実に冷たくなっていくのを


「な、ぁ…頼む、から……」


オレはただ、見ていることしか出来なかった。


「死ぬんじゃねぇよ…■■……」


 その名前すら、今は思い出せない。ただ唯一覚えていたのは、約束をしたという事実と、


「■■■■■■■■■■■」


──パァン


 一発の銃声だけだった。

失敗作へと送るレクイエム、第一章─アンデッド製造所編─これより開演。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ