表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/26

5 ミツサール兄妹との雑談


「え、じゃあべエリアは魔の森の方から来たの?」


「う、うん」


 部屋で一休みをしてから用意してもらった服に着替える。私はクーリナ、よりも少し背が低い。これはお嬢様が最近まで着ていたものだから気にしないで着てくださいと言われては断れないよね。シンプルな服を着ることが多かったから、こういう丈が短めでふわりとスカート部分が広がったワンピース……ドレス? はなんだかむず痒い。でも、本当にかわいい……。


 ふふふ、と思わず笑みをこぼしながら案内された場所にはイオお、じさま、イオおじさま以外がすでに集まっていた。そして話題は私がどこから来たのか、というものになっていったのだ。


「本当に無事でよかったわ。

 魔の森には魔獣がたくさん出るんでしょう?」


「そう、ですね」


 魔獣……、瞬間的にあのウルフを思い出してゾッとする。あの息遣いとか血しぶきとか、妙に鮮明に思い出す。


「べ、ベリア?

 どうしたの?」


「ベリア、この紅茶とってもおいしいのよ。

 気分も落ち着くから」


 指先が震えそうになる。その時サラーナ、おばさま、が手元の紅茶を勧めてくれる。あ、心配かけてしまった……。言われた通りに紅茶を口にするとその温かさにほっとする。うん、落ち着いた。


 そうしているとじっとクーリナ、が私を見ていることに気が付いた。えっと?


「それにしてもベリアはとってもかわいいわね……。

 もっといろいろ着せてみたくなるわ……」


「可愛い、ですか?」


 それを言うならクーリナ、の方がかわいいと思う。大きな瞳も表情がくるくると変わるのも見ていて楽しいしかわいい。それに何よりもご両親と同じ安心できる雰囲気を持っている。


「ええ!

 桃色の髪なんて初めて見たけれど、ベリアにとってもよく似合っているわ」


「あ、ありがとうございます」


 ふふっと笑うクーリナ。ほっこりとしていると不意にこちらを見守るイミル様がやさしい瞳が目に入った。ずっと見守られていたのか、ととっさに恥ずかしくなる。


「あの、イミル様……?」


「うん?

 ああ、僕のことも呼び捨てで構わないよ。

 よろしくね、ベリア」


「呼び捨ては無理です……。

 せめてイミルさん、と」


 さすがに年上の方を呼び捨ては無理だって。あっさりとじゃあそれで、と言ってくれたから安心した。そのまま談笑していると、話はまた魔法学園の話になった。魔法学園、名前だけでもとても心惹かれるし、なによりも魔法の使い方を学ぶことができるかもしれない。


「魔法学園は誰でも入れるのですか?」


「ええ、この国に住んでいて魔力を持っていれば。

 せっかく出会えたのだもの、ベリアも一緒に行きたい……」


「クーリナ、わがままを言うんじゃないよ」


「あの、イミルさんも学園に?」


「ああ。

 僕は今15歳だから、次は上級2年だね」


「上級……?」


 私が魔法学園に興味を持ったのが分かったのか、二人は詳しく説明してくれた。どうやら魔力を持っていたら入れる、というよりも基本的には一定以上魔力があるなら入らないといけないらしい。ただ、数ある中でどの学園に入るかは魔力や家柄で変わってくるとか……? 基礎を学ぶ下級1年から4年、専門を学ぶ上級1年から4年の計8年間通うことになる、と。


「イミルさんは何を学んでいるのですか?」


「僕は魔法騎士科だよ。

 父のような騎士になりたくてね」


「騎士……」


「ああ。

 父は騎士爵を持っているけれど、それを僕に引き継ぐことはできない。

 だけど、僕も騎士爵を頂いてこの国を守りたいんだ」


「騎士爵……、貴族なのですか?

 だからこんなに立派な屋敷に……」


 この屋敷はこの街でも明らかに立派だった。騎士だからと思っていたけれど、貴族! 今さらながら失礼なことをしていたのではないかと血の気が引く。


「はは、爵位ではあるけれどそんなにかしこまるものではないよ。

 平民を取り締まるのに爵位があったほうがいろいろスムーズに進むから、という話だし。

 それにこの屋敷は父というよりも母の実家のおかげだし」


 ね、とイミルさんがサラーナおばさま、の方を見る。サラーナおばさま、はそうねと笑った。


「私の実家は裕福な商家なの。

 今もいろいろと気にかけてもらっているから、とても助かっているわ」


 な、なるほど……?


「私の杖もお母様の商店で買ったのよ」


 ほら、と取り出したのは黒い杖。まっすぐに伸びた杖は黒く光っているようでとてもかっこいい。それをクーリナが選んだのが少し不思議だった。それが伝わったのか、少し照れたようにお兄様にあこがれて、とこっそり教えてくれた。そっか、イミルさんに。


「待たせたな。

 ベリア、明日になったら大隊長、サルトルーネ子爵のところに行こう」


「まあ、子爵のところに?

ならすぐに服を用意しないと」


「いや、大丈夫だ。

 そうだな、ひとまずクーリナ。 

 ベリアと一緒に魔法学園に通えるぞ」


「「え!?」」

 

 驚きのえ、と嬉しそうなえ、二つの声が重なる。声の主はクーリナとイミルさんだ。


「ベリアは魔力を持っているからな。

 ベリア、話がある」


「あ、わかりました」


 やった、と喜ぶクーリナ。クーリナと一緒に通えるなら私も嬉しいかな……。そのあとイオおじさま、と一緒に部屋を移ることになった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ