43.目指せ、生産職。かーらーのー……③
結局、そのまま3回連続で失敗して『錬金カス』を作ってしまった。
変化が起こったのは4回目の錬金である。紫の煙が消えた後に残ったのは、ビー玉サイズの赤い石だった。
「お? 今度は成功か?」
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火の精霊石
火の精霊の力が宿った鉱石。
武器に融合することによって火属性を付与することができる。
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どうやら、これも錬金に使える素材のようである。
ちなみに材料はルビーとガーネットの原石。どちらも値段は3000円くらいだった。
どうやらこの石を武器と混ぜることによって、火属性の武器を作ることができるようである。
「魔法の武器か……テンション上がるな」
ものすごく興味深い。是が非でも作ってみたい。しかし、残念ながら俺は武器など持っていない。
デイリークエストなどでポーションなどの回復アイテムが手に入ることはあったが、これまで武器などが報酬として出たことはなかった。
ファンタジーな世界ならばまだしも、現代日本で武器屋などあるわけがない。武器を手に入れる手段など思い浮かばなかった。
「いや、ひょっとしたらこれでも出来るかもしれない……」
俺はもしかしたらという思いで机の引き出しからカッターナイフを取り出した。
手に入れたばかりの『火の精霊石』と一緒に壺の中に入れてみる。
「おわあっ!?」
また先ほどのように紫の煙が出てくるかと思いきや、今度は黄色っぽい煙が噴き出してきた。俺は思わず尻もちをついて驚いてしまう。
数秒すると黄色の煙は消えてしまった。恐る恐る壺の中を覗き込むと、壺の底にはカッターナイフだけが残されていて、石がどこかに行ってしまった。
「むむ……」
もしやと思ってアイテムストレージに収納してみる。
クエストの報酬と素材アイテムしか入らないはずのストレージに、カッターナイフが吸い込まれていく。
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炎のカッターナイフ
武器アイテム。ランクE。
火属性が付与されたカッターナイフ。
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「おおっ! 成功した!」
本当に魔法の武器ができてしまった。
再びストレージから取り出して、魔法を使う時の要領でムンッと魔力を込めてみる。カッターナイフが赤熱して刃の部分に赤い光が灯った。
どうやらこれが属性を付与された状態のようである。
「……この間みたいに吸血鬼とか出てこないかな。ちょっと使ってみたいな」
さすがにそう上手いことはいかないだろう。あんな化け物がそこら中にいてたまるか。
どうやら出来たばかりの魔法武器は、しばらく宝の持ち腐れになりそうである。
これで『銅の錬金壺』の耐久値は『5/10』。半分になってしまった。
これから先も錬金壺が手に入る保証はないし、あるいはこのまま温存してとっておいた方がいいのかもしれない。
「しかし俺は我慢しない! 擦り切れるまで使っちゃう!」
試してみたいことはまだあるのだ。やってみなければ気が済まない。
『火の精霊石』という素材アイテムがあるのだ。ならば、『水』や『風』などの他の属性の精霊石もあるに違いない。
『火の精霊石』はルビーとガーネット。赤い石2つを混ぜ合わせることによって錬成された。ならば、同系色の石を混ぜることによって他の精霊石も作れるのではないだろうか。
「まずは『青』! ブルーサファイアとアクアマリン!」
どちらも結構な価格がした石である。牧師さんのお金がなければ絶対に買わなかったであろう宝石だ。
錬金壺から例のごとく紫の煙が噴き出て、壺の底に先ほどとは異なる青い石が残された。
すぐさまストレージに入れて説明文を読んでみると、今度は『水の精霊石』と記載されていた。
「うしっ! 成功だ!」
俺はこの調子で石を次々と錬金壺に放り込んでいく。
残念ながら1回だけ失敗して『錬金カス』になってしまったものの、『風』、『地』、『光』の精霊石をそれぞれ一つずつ入手することができた。
10回の錬金を終えた『銅の錬金壺』であったが、最後に『光の精霊石』を生み出すと同時に真っ黒に染まってしまい、土くれが崩れるように粉々になってしまった。
「ふう……これで錬金も終わりか……」
もっと試してみたいことがあったのだが、ひとまずこれで終了のようである。
次に錬金壺が手に入る日まで、続きはお預けだ。
次に錬金壺が手に入る時までに、どんな組み合わせだったらアイテムができるか考えておこう。
生産系のゲームとかをプレイしてみて参考にしてもいいかもしれない。
「さて……それじゃあ今度はやり残しているデイリークエストを……」
と、そこまで口にしたところで俺は言葉を止めた。
ピコンと聞きなれた電子音が耳に響いてきて、クエストボードにメッセージが表示されたからである。
『ワールドクエストを達成! アイテム『ダンジョンキー【下級採掘場】』を獲得!』
「は……?」
表示されたメッセージに俺は目を白黒させて、思わず言葉を失った。
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装飾用にカットされていない物なら意外と安く手に入るみたいですね




