美少女+ゴツい武器=何故かテンション上がる ⑩
タオ〇イパイ法によってヨーロッパに旅立った俺。
美少女を改造して刺客として送りつけてきた『異端審問会』との戦いの始まり……などと新章突入的な空気になったものの、結末はあっけないものである。
『異端審問会』の本拠地に乗り込みました。
悪い奴らにお仕置きしました。
それで終わり。
夏休みの絵日記ならば書き直しを命じられかねない、わずか30文字ほどでの結末である。
そもそも、『異端審問会』の連中が潜んでいる場所はセラちゃんの記憶を読み取ったことでわかっていた。
侵入するのは超簡単。
結界的なものは張っていたものの、俺の『万能魔法』があれば余裕で潜り抜けることができる程度のレベル。
セラちゃんと同じような最終兵器彼女が待ち構えてはいたものの……すでに一度は倒している相手である。特にてこずることなく対処することができた。
警備の兵士や退魔師を殺さない程度に鎮圧して、敵の幹部が潜んでいる場所まで強行突破。
あとは逃げようとする連中を捕獲してOSHIOKIの始まり。壁に手をつかせて尻をビシバシと叩いてやった。古今東西、悪い事をした子供へのお仕置きは尻を叩くと決まっているのだ。
『異端審問会』の幹部メンバーは年配の人間が多かったため、実に叩き甲斐がなかったが……何故か若い女性の幹部もいたため、それなりに良い予行練習になった。今度、聖が悪さをしたときには存分に叩いてやるとしよう。
ともあれ、『異端審問会』の幹部メンバーを叩きのめして、二度と俺や聖に手を出さないことを確約させた。
さらに決戦型人造天使と呼ばれる少女を改造した兵器も残らず破棄させる。
もちろん、この場合の破棄というのは自由にするということ。肉体に施した改造を残らず取り除き、多額の慰謝料と賠償金を与え、解放することを約束させた。
ついでに幹部メンバー全員に引退して後進に地位を譲るように命じておく。組織というのは古株のメンバーが続投し続けると、若い風が入ってこずに腐敗してしまうのだ。これを機に体制を一新してもらう。
そんなこんなで一時間ほどで目的を果たした俺は、ついでにイタリアの街を観光してから帰宅することにした。
さすがは世界最高の観光大国。見る場所が多すぎて帰宅が遅くなってしまい、夕飯に間に合わずに真麻に叱られてしまった。
今度は日帰りではなく、泊まりでじっくりと観光したいものである。出来ることなら、仲良くなった女子メンバーを連れていって。
こうして、『異端審問会』からの刺客を巡る戦いは幕を下ろし、俺は元通りの平穏を取り戻したのであった。
めでたしめでたし
〇 〇 〇
「……というふうに終わってくれたら良かったんだけどね。まあ、そうはならないよな」
「……そうね、お兄。説明してくれるかな?」
俺は自宅の和室にて、妹の真麻に正座をさせられていた。
右隣には何故か聖もまた正座させられており、左隣には別の美少女が正座している。
『別の美少女』などとぼかす表現を使ったが……聡明な皆様はもうお気づきだろう。決戦型ナンチャラ少女のセラちゃんである。
「お兄、説明してくれるかな。どうしてウチに住んでる女の子が増えてるのかな?」
真麻は右手にお玉、左手に包丁を持って笑顔ですごんでくる。
うん、お玉はともかく包丁は置こうか。絵面がヤバすぎるだろう。
「どうと言われても………………ナンデダロウネ?」
俺は曖昧に苦笑いをした。
正直、自分でもこんなことになるとは考えていなかった。
『異端審問会』の幹部メンバーをしばいて、兵器にされている女の子を解放させた俺であったが……困ったことに、セラちゃんは行くアテがなかったのである。
彼女は孤児であり、両親を含めた家族はいない。おまけに、武装の大部分を取り外してもまだ『核』である『聖人の骨』を取り去ることができなかった。
いまだ兵器としての残滓を残した彼女をどうするか……『結社』に相談しても上手い解決策が見つからず、仕方がなしに俺が引き取ることになったのである。
『聖人の骨』を内蔵したセラちゃんが暴走した場合、多くの被害が出ることが予想される。
被害を未然に防ぐため、誰よりも確実に対処できるであろう監視役として俺が選ばれたのだ。
「なんでだろうじゃ済まないよね? 家にメイドさんを連れ込むとか、お兄は社会的に自殺するつもりなのかな?」
家にやってきたセラちゃんであったが……彼女は現在進行形でメイド服を着ていた。
セラちゃんなんだからセーラー服を着ろよとか言わないで欲しい。彼女と俺の間で結ばれた主従契約がいまだ継続しているため、自発的にこんな格好をしているのだ。
「マスターの喜ぶ姿をするのはサーヴァントとして当然のことです。マスターの脳内を検索した結果、好きな格好第1位がメイド服。2位が裸エプロンであると判断しました」
「うん、俺の心は読まないようにね? そして、裸エプロンは二人きりの時以外は着ないように」
「了解しました。マスター」
などというやり取りがあったことは、真麻には内緒だった。
包丁を片手に仁王立ちしている真麻にそんなことを離したら、本格的に三枚に下ろされかねない命の危機である。
「真麻ちゃん、これは仕方がないことなのです」
「お?」
隣で正座している聖が助け舟を出してきた。意外なところからの援軍である。
「男の子というのは定期的に肉便器を増やしたくなると女性誌に書いてありました。これは雄の本能だから不可抗力なのです」
「それはどこ調べのデータだよ! 肉便器いうな!」
「データに登録します。『ニクベンキ』……高位のサーヴァントを指す日常会話用語として登録いたしました」
「するな! 絶対に日常で使わないからなそれは!」
「へー、ふーん、そーなんだー。ニクベンキねー……お兄ってば、私の知らないところでそんなものを作ってたんだ……」
「お前も本気にするなー! そして包丁を置け、マジで!」
俺は迫ってくる真麻にビビリ倒しながら、このカオスな状況を打開する方法を考える。
もちろん、上手い良い訳なんて思いつくわけがない。
俺はひたすら謝り倒し、人型兵器なんかよりも遥かにおっかない妹の機嫌が直るまで土下座を続けるのであった。
美少女+ゴツい武器=何故かテンションが上がる 完




