桃〇郎電鉄には温泉を覗けるスポットがある ⑤
「アハハハハハハハハハッ! 脱げ脱げ脱げっ! さっさと脱がんかい!」
「きゃああああああああああああああ♡」
「…………」
目の前にカオスが広がっている。
若女将から謎の接待を受けた俺は、どこか釈然としない気持ちを抱きながら大浴場を出た。
結局、大浴場で他の宿泊客とは会わなかった。
若女将は俺が泊まれる部屋は離れの部屋以外に空いていないと言っていたが、どうにも疑わしくなってしまう。
大浴場から出た俺は、約束通りに本館にある女性陣の部屋に行く。
彼女達はまだ入浴中らしく少しだけ廊下で待たされたが……戻ってきた春歌と早苗に部屋に通され、中でトランプ大会が開かれた。
予約なしで泊まりにきたため夕食こそ出なかったものの、お菓子やジュース、ビールなどは出してくれた。もちろん、飲酒するのは成人している千早さんだけである。
ババ抜きに七並べ、大富豪やら一通りトランプゲームに興じた俺達であったが……だんだんと、酔いが回ってきた千早さんの暴走が始まった。
「はい! 春歌ちゃんの負け―! さあ、脱いだ脱いだ!」
「ちょ……ち、千早さん! 服を脱がさないでくださいっ!」
千早さんが急に脱衣ポーカーなるものを始めたせいで、春歌も早苗もすでに下着姿になっている。
千早さんなどパンツ一丁に手ブラで胸を隠した有様である。とんでもないカオスだった。
「何というか……結局、お風呂を覗いたりしなくても裸を見ることになるんだよね。どんな運命だよ」
女性陣が下着姿になっているのに対して、何故か俺はきっちりと浴衣を着こんでいる。
スキルや魔法を使ってイカサマをしたわけではない。
脱衣をかけ始めたあたりから急に勝ち運が出てきて、圧勝のままに3人の服を剝いたのである。
「どうやら、俺は脱衣系のゲームに異常に強いみたいだな。この才能、どうやって生かせばいいのかな?」
何という限定的な勝負強さだろう。
もはやエロゲの世界でしか生かせない才能である。
「アハハハハハハハハハッ! もー、この部屋には真砂くんしかいないんだから、恥ずかしがらなくたっていいでしょー!」
早苗がミニマムサイズのおっぱいを丸出しにして笑っている。
こっちはアルコールが入っていないはずなのだが……うん、顔も赤いし、テンションもおかしい。
ジュースと間違えてチューハイとか飲んでないか?
「ニャハハハハハハハハハッ! 今度負けたのは……私でーす。もう脱ぐものがありませーん……と見せかけて、とうっ!」
「うわ……」
千早さんが最後の一枚……パンツを脱ぎ捨てた。
全裸の大学生女性が目の前で仁王立ちになっている。
どんな地獄……いや、天国か?
スマホで撮影して後で見せたら、恥ずかしさのあまり地面を転がり回るのではないか。
「アハハハハハハハハハ、キャハハハハハハハハハ、ハハハ…………うわあああああああああああああああああああああああん!」
「ええっ!? ここで泣くの!?」
楽しそうに全裸で笑っていた千早さんが、唐突に崩れ落ちて泣き出した。
情緒がヤバすぎる。誰だよ、この爆弾女と旅行に行こうって誘ってきたのは。
「どうして私がフラれなくちゃいけないのよー! まさかずうううううううううううっ!」
「あ……そういうことね」
そういえば……千早さんは、このスキー旅行の直前に彼氏にフラれていたのだった。
躁病じゃないかというくらいにハシャイデいたのも、失恋したショックを誤魔化すためだったようだ。
「どうせ私は胸が小さいわよ! しょうがないじゃない、家系なんだもの! 妹の早苗だって小さいわよおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
「ええっ!? 私に飛び火するのおっ!?」
ジュース(?)をチビチビやっていた早苗がのけぞった。
こちらも全裸直前で胸を隠そうともしていない。
恥じらっているのは、エベレストサイズのおっぱいを両手で隠し、部屋の隅でうずくまっている春歌だけである。
「ひんにゅーは悪くないっ! 悪いのは胸に脂肪をたくわえた女どもだー!」
「そうだそうだっ! お姉ちゃんの言う通りっ!」
「巨乳狩るべし! かかれー!」
「おー!」
「ええええええええええええっ!?」
二人が部屋の隅にいた春歌に襲いかかり、胸の果実をもぎ取ろうとする。
限りなく裸に近い女性三人が旅館の一室で絡み合い、胸やら尻やら触り合いをしていた。
「もぎとれえええええええええええっ!」
「いやあああああああああああああっ!?」
「うん……帰ろう。部屋に」
いい加減にヤヴァイ空気になってきたのを察して、俺は女性陣の部屋から出て行くことにする。
出来ることなら永住したくなるような楽園だったが……俺は紳士なのだ。彼女達のあられもない格好を必要以上に観賞したりはしない。
「ま……紳士はゲームとはいえ、女の子の服を剥ぎ取ったりはしないんだけどね」
布団はすでに敷いてあるし、後は勝手に眠るだろう。
襲われている春歌には申し訳ないが……ここらで退散させてもらおう。
「『ロック』、『バリアー』、『サンクチュアリ』」
念のため、万能魔法で女性陣の部屋に鍵をかけておき、ついでに守りの魔法をかけておいた。
これで万が一にも彼女らに危険が及ぶことはないだろう。
「ま……ご褒美の御礼というわけで」
俺はのんびりと旅館の本館を出て、離れの部屋に向かったのであった。
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