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激闘! 退魔師試験!㉗


 白龍が放った金色の光線が九尾の狐に命中する。

 地面から土が舞い上がり、視界が覆われて周囲の様子見えなくなった。


「これはこれは……俺でもまともに浴びたらヤバい奴だな」


 決まった……この場にいる誰もが、長い戦いに決着がついたことを悟る。

 おそらく、この戦いを見守っているであろう試験官だって、そう判断したに違いない。


「む……?」


「なっ……!」


「え……」


「嘘おっ!?」


 だが……そんな全員の予想が裏切られる。

 驚くべきことに、九尾の狐はまだ生きていたのだ。


「あれは……?」


「何だ、あの姿は……」


 紫蘭と晴嵐が呆然とつぶやく。カスミもあんぐりと口を開けて固まっている。

 破壊光線を浴びた九尾の狐であったが……何故かその姿は様変わりしており、若い女性の姿となっていたのだ。

 十二単を身にまとった女性の姿。まるで平安絵巻から抜け出てきたようで、その顔はあまりにも美麗。

 まるで、かぐや姫でも現れたようだった。


「ラスボスが第2形態になるのはお約束だが……普通はどんどん化け物じみた形になるもんだろ。どうして美女になってんだよ」


 どうでもいいが、個人的には大きな疑問である。

 相手が美女になってしまうと、余計に倒しづらくなってしまうではないか。


『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!』


 十二単の美女が両手を広げた。先ほど以上の膨大な霊力が集まっていく。

 九尾の狐……否、今は『玉藻前』と呼ぶべきだろう。


「これは……」


「逃げろ、みんな!」


 晴嵐が叫ぶ。

 止める暇もなく、玉藻前の身体から閃光が生じる。

 全方位への無差別攻撃。玉藻前を中心として、霊力による強烈な破壊光線が放たれた。


「さすがにこれは無理か……!」


 この一撃をまともに喰らってしまえば、パーティーは全滅を免れまい。

 手を出すなとは言われているが……ここはもう動くしかない。


「時よ止まれ……ザ・〇ールド!」


 魔法によって時間を停止させる。

 今のうちに仲間を連れて退避……しようとした矢先、玉藻前がジロリとこちらを睨みつけてきた。


『アアアアアアアアアアアアアッ!』


「うおっ!?」


 停止した時間の中、玉藻前がこちらに突っ込んできた。

 時間を止めているというのに平然と動いている。


「マジか……一瞬でこっちの術に対応された!?」


『アアアアアアアアアアアアアッ!』


「くっ……!」


 振り下ろされた手刀を腕で受け止める。

 ただの打撃だというのに、とんでもなく重い。

 身体が潰れてしまいそうな圧力に【神鋼】のスキルをフル稼働させる。


「な、め、ん、なアアアアアアアアアアアアアッ!」


『アアッ!』


 玉藻前の胴体を蹴り飛ばして距離を取る。

 同時に、魔法が解除されて再び時間が動き出す。すでに放たれていた玉藻前の閃光が辺り一帯を包み込んだ。


「くっ……しまった!」


 俺としたことが。敵の攻撃を防ぐことができなかった。

 3人の仲間が閃光に包まれようとしている。


「やられた……みんな!」


 助けに行きたいところだが、目の前にいる玉藻前がそれを許さない。

 こんな強敵に背中を見せて仲間を助けにいくなど、いくら俺でも不可能だった。


「くっ……わああああああああっ!?」


「きゃあああああああああああっ!?」


 仲間達の悲鳴が聞こえてくる。

 どうにもならない事態に、俺は焦りから表情を歪めた。


「バビュッ!」


 しかし……ここにきてまた、予想外の事態が生じた。

 焼け野原と化した地面の下から何者かが飛び出してきて、閃光にさらされる3人をまとめて抱え上げる。


「緊急退避するヨー! 逃げるでゴザル~!」


 3人を抱えて全力ダッシュしているのは褐色肌で南国のお面をつけた女だった。

 実技試験がはじまってから1度も姿を見ていなかった『三強』最後の1人――謎の口調の南国部族風女性――ジーラである。


「どうして地面から!? イリュージョンかよ!?」


 いったい、いつから地面の下に潜んでいたのか。ひょっとしたら、最初からそこにいたのだろう。

 そういえば……俺達が来る前、九尾の狐が何者かと戦っていたようだが、ひょっとしたら彼女なのか。


「九尾の狐に爆炎で吹き飛ばされて地面に埋まってたのか!? よく生きてたな!」


「そのまま逃げてくれ! 僕が防御する!」


 ジーラに背負われた晴嵐が脇差を抜く。俺が渡した刀である。


「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・前・行! 我を守り給え、急々如律令!」


「私も援護します! 鐵丸、全力で撃ちなさい!」


『ウウウウウウウウウウウウウッ!』


 晴嵐が結界を展開して、紫蘭に操作された鐵丸が左腕の『砲』から霊力のバズーカをぶつける。。

 わずかに迫ってくる光の勢いが弱まった隙に……ジーラが走る走る走る!


「きゃあああああああああああっ!?」


 カスミが足手纏いのお荷物になっている。

 まあ、いつも通りの展開だ。防御特化の変身もあるのだが……変身方法を教えている場合じゃない。


「も、モードチェンジ! フォーメーション・シープ!」


「あ」


 そうかと思えば、自力で変身しやがった。

 背負われたまま尻を強調させた謎のポーズを取り、虹色の光に包まれて変身する。

 カスミが変身したのは『(シープ)』形態。防御に特化した能力を与えたコスチュームである。

 カスミの身体が白くてモコモコな綿に包まれた。まるで全身に泡をまとっているようである。


「な、何でもいいから助けてえええええええええええっ!」


 カスミの身体からモコモコが剥がれ落ち、シールドとなって追いかけてくる閃光を防御した。

 これこそがソープ……じゃなくてシープの能力。身体にまとった防御壁であるモコモコを操ることにより、鎧や盾にすることができるのだ。

 モコモコを身体から離すたびに露出が大きくなってしまうという仕様で、限界まで盾を分厚くしたことでカスミの身体は限りなく全裸になっている。


「まさか教えなくてもフォーメーション・チェンジができるなんて……彼女はあの装備に選ばれているのか?」


 あるいは、エロの神に愛されているのだろか?

 乳首と〇〇〇だけを辛うじて小さなモコモコで隠しているカスミに、俺はそんな感想を抱く。


「わあああああああああああああああっ!?」


「きゃああああああああああああああっ!?」


 ジーナを含めた4人の活躍により、どうにか彼らは玉藻前が放った閃光から離脱した。

 殺しきれなかった衝撃によって吹き飛ばされ、ジャングルの中に消えていくが……とりあえず、死んで(ゲームオーバー)はないだろう。


「とりあえず一安心。これで……」


『アアアアアアアアアアアアアッ!』


「お前を倒すことに専念できるよな!」


 襲いかかってきた玉藻前の攻撃を躱して、カウンターのパンチを腹にぶち込んだ。

 相手は美女。顔を狙わなかったことを褒めてもらいたいものである。


「手を出すつもりはなかったんだけど……この状況だ。美味しいところを横取りさせてもらうぜ!」


 玉藻前に人差し指を突きつけ、ビシリと宣言した。


 実技試験。最終決戦。

 俺VS玉藻前。最強カードの頂上決戦のはじまりである。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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