激闘! 退魔師試験!㉑
2人の入浴を見送った俺は、リビングに戻って夕食の準備をはじめた。
準備とは言ったものの、別に自炊をするわけではない。
魔法で収納していた食料品を取り出してテーブルに並べるだけである。
今日のメニューはレトルトカレー。袋に入ったカレーを魔法で温めて、あらかじめ炊いておいたご飯にかける。
魔法で収納されたものは時間が止まっているため、冷めることも腐ることもない。
ホカホカご飯をそのまましまっておくことができるため、非常に便利である。
「あ、ご飯できてる! しかもカレーじゃない!」
「月城さんが準備してくれたのですね? 申し訳ありません、何から何まで世話になってしまい……」
入浴を終えてリビングに戻ってきたカスミが嬉しそうに声を上げる。その後ろには、申し訳なさそうな表情の紫蘭も続いていた。
2人が身に着けているのはTシャツと短パン。汚れている服から着替えている。
その気になれば服の汚れなんて一瞬で綺麗にできるのだが……眼福なので、あえて着替えてもらった。
「うん、ワイシャツと迷ったけど……これはアリよりアリだな」
ラフな格好で部屋着感があって、彼女が彼氏の部屋にお泊りしているような日常的なエロさがある。
裸にワイシャツの方が露出という点では上かもしれないが、そちらは変に『媚び』があって不自然さが勝ってしまう。
やはり俺の選択は正しかったようだ。俺は小さくガッツポーズをする。
「賀茂様はいらしてないのですね。どうかされたのですか?」
「ああ……アイツは夕飯は自分で摂るからいらないってよ。必要以上に俺の世話になりたくないみたいだな」
せっかく誘ってやったというのに……晴嵐にはすでに断られていた。
まったく、よほど俺のことが気に入らないらしい。借りを作りたくないという内心が透けて見えた。
「いらないって言うのならいいさ。俺達だけで食べちゃおうぜ」
「うん! いっただっきまーす!」
「……いただきます」
カスミが迷うことなく食べはじめたのを見て、紫蘭も遅れてスプーンを手に取った。
美少女2人との和やかな食事タイム。
2人とはまだ出会ってから1日も経っていないのだが……妙に彼女達とも馴染んできているような気がする。
「こんな生活も明日でラストか。無事に九尾の狐を退治できると良いんだけど……」
「私達なら絶対にできますよっ! 賀茂さんって人も加わりましたしね!」
「お前が言うなよ……妖怪にセクハラされてただけじゃないか」
どうして、カスミが自信満々なのだろう。
犬に舐めまわされたり、河童に抱き着かれたり……これだけ妖怪にセクハラをされまくっていて、心が折れていないメンタルがすごい。
もしもこれがマンガや小説の世界であったのなら、読者サービスの大活躍といえなくもないのだが。
「俺は手出しはできないけど……本気で危なくなったら加勢するから、泥船に乗ったつもりでいてくれ」
「泥船に乗ってどうするのですか……ふあ」
紫蘭が大きなアクビをした。
食事中だというのに、彼女らしからぬはしたない態度である。
紫蘭がすぐに口元を手で押さえて、顔を赤面させた。
「も、申し訳ございません。私としたことが……」
「いや、構わないよ。随分と疲れているみたいだな。今日は早めに休んだ方がいい。食器の片付けとかは俺がやっておくからさ」
この家は結界によって隠されている。たとえ九尾の狐であったとしても、容易に見つかることはないだろう。
念のため、敵の接近を警戒するために番犬のゴーレムでも設置しておこう。
「ありがとうございます。それでは、お言葉に甘えて……やはり森の中ということもあって、昨晩は眠れなかったものでして」
「朝から戦いまくりだったもんねー。紫蘭ちゃん、今日も一緒に寝よ?」
「カスミさん、その前に口を拭いてください。せっかく入浴したのに汚してどうするんですか」
紫蘭がハンカチでカスミの口についたカレーをふき取った。
食事を終えるや、2人は一緒の部屋に消えていく。もちろん、俺とも晴嵐とも違う部屋である。
もう一度、晴嵐の様子を見に行ったのだが……こちらも相変わらず、部屋から出てくる様子はない。
先ほどと違っていたのは、扉の前に晴嵐の式神である白龍がとぐろを巻いていたこと。どうやら、俺を警戒して警備のつもりで設置しているようだ。
「まったく……失礼な話だな。人の家に泊まりこんでおいて礼儀というものがなってない!」
お前は生娘かよと突っ込みたくなってしまう。
俺は憮然とした気持ちになりながら、テーブルの上の食器を片付ける。
「さて……俺も風呂に入るか」
この後、もう一仕事する予定があるのだが……その前に汗を流しておくとしよう。
俺はリビングを照らしている魔法の照明を消して、脱衣所へと向かっていった。
「学園クエスト」のコミカライズ版、2話目が更新されました!
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