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激闘! 退魔師試験!⑪


 その後、紫蘭とカスミのために風呂を沸かしてやった。

 魔法を使って汚れを落とすことは容易いことだが……気分の問題がある。

 突如としてジャングルに放り出され、丸一日、妖怪変化に追い回された疲労もあるだろう。


「ちょ……紫蘭ちゃん! まだ服を脱いじゃダメですよ!?」


「え? 何か問題ありましたか?」


 まだ俺がいるというのに服を脱ぎだす紫蘭に、カスミがあわあわと両手を振る。

 残念ながら、巫女装束の下には襦袢(じゅばん)を着ていて胸が見えたりすることはなかった。

 それでも、着やせするタイプなのか意外と膨らんでいる胸から細い腰までのラインはなかなかに眼福である。

 世間知らずなのだろうか、男の視線を気にしないあたりもお嬢様っぽい。


「いいもの、見せてもらった……それにしても、ちょっと不用心すぎないかな?」


 2人が入浴している間、リビングに戻ってきた俺はぼんやりとつぶやいた。

 この状態で俺が裏切り、彼女達に襲いかかったら絶体絶命。メダルを奪われるどころか、貞操の危機である。

 ひょっとしたら、あえて隙を見せることで、こちらを信用していることをアピールしているのかもしれない。


「……まあ、どちらにしても俺は裏切ったりはしないけどな。お風呂を覗いたりもしないよ。本当に」


 その気になれば、スキルを使って彼女達の入浴を透視することだってできる。

 だが……そんなことはしない。

 俺が風呂を覗くのは紗耶香と春歌と早苗と聖だけ……じゃなくて、紳士として心に決めた女性以外の入浴は覗かない。いや、本当に。


「ん……この気配は……?」


 俺はふと建物の外に不穏な気配を感じた。

 玄関から外に出ると……ゴリラのような生き物が家を取り囲んでいる。

 本物のゴリラではない。彼らは棍棒などで武装しているからだ。


「武器を使える猿なんてマンガの世界だけだろうに。まったく、昇格に興味のない俺のところに、どうしてこんなに集まってくるのかな?」 


『ングルルルルルッ……』


「仕方がない……お客さんもいることだし、面倒だけど相手になってやるか」


 入浴中の2人に手出しさせるわけにはいかない。

 ゴリラもどきの数は10体ほど。いずれも身長2メートル近く、がっしりとした体格をしていた。

 俺は先ほど土塊に戻した獅子型ゴーレムを再構築する。


「コイツらを家に入れるな。頼んだぞ」


『ンゴオオオオオオオオオオオッ!』


『ンゴッ! ンゴッ!』


 ゴリラもどきが棍棒を振りかざし、一斉に飛びかかってきた。


「人は武器と智慧ゆえに動物に勝る。しかし、動物が武器を取ったらこうも強い」


 世界最強の剣士のように言いながら、先頭で飛びかかってきたゴリラもどきの頭部を拳で叩き割る。


「とはいえ……俺よりも超弱いけどな? 俺は武器も智慧が無くても獣よりも強いから」


『ンゴオオオオオオオオオオオッ!』


 次々と飛びかかってくるゴリラもどきを殴っては投げ、殴っては投げを繰り返す。


「スキル発動。【神鋼】かーらーのー【武王】!」


 身体能力を極限まで強化するスキル――【神鋼】

 ありとあらゆる武術を極めることができるスキル――【武王】

 2つのスキルを併用した俺はまさに天下無双。今なら、バス〇ーコールを喰らっても単独で返り討ちにできるだろう。その気になれば七〇海どころか四〇の椅子だって狙えるかもしれない。

 ゴリラもどきの中には玄関に回り込んで侵入しようとする者もいたが、獅子型ゴーレムが上手いこと防いでくれた。


『ングオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』


「お……ちょっとは骨のありそうな奴が出てきたな」


 ゴリラもどきの大半がやられたタイミングで、倍近いサイズの大猿が木々の間から姿を現す。

 白い体毛を背中に伸ばしたシルバーバックの大猿。明らかに他のゴリラもどきとは圧力が違う。サイズだけではなく、格の違う戦闘能力が伝わってくる。


「俺じゃなかったらヤバかったな……ひょっとして、君らは雛森さん達を追いかけてきたのかな?」


 タイミング的に可能性がある。

 早朝、野営していた彼女らを襲ったという妖怪変化はコイツらなのかもしれない。


『ングオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』


「ま……どっちでもいいか。片付けちまえば同じだな」


 大猿が近くに生えていた木を引き抜き、俺めがけて叩きつけてくる。

 回避したら家が壊されてしまう。俺は仕方がなしに右手で大木の一撃を受け止めた。


『ングオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』


「ふむ……なかなかのパワー。俺じゃなかったら潰れてるよ」


 俺は大木を受け止め……そのまま押し返す。


『ングオオッ!?』


「はい、ご苦労様。もう退場していいよ」


『ングオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!?』


 掴んだ大木を力任せ振り回し、大猿を天に投げつけた。

 4メートルもの猿がクルクルと回転しながら宙に舞う。


「【万能魔法】――『爆』!」


『ングオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!?』


 右手から放った魔法が大猿に吸い込まれ、粉々に吹き飛ばされた。

 ボスがやられたのを見て、残っていたゴリラもどきが逃げていく。あえて追撃はしなかった。


「はい、メダルゲットー……って、『1/10』?」


 空に上がった汚い花火からメダルが落ちてきたのだが……これまでのメダルとは微妙に違う。

 メダルの色は銀色で、おまけに表記されている数字も『1/10』だった。

 ゴリラもどきが落としたメダルを確認すると、こちらは銅色で『1/100』と記載されている。これまで手に入れたメダルと同じものだ。


「もしかして、魔物の強さによってメダルの種類が違うのか? 強い魔物ほど数字の大きなメダルを持っていて、『銅』の次は『銀』。ということは……『金』のメダルを持った敵もいるのかな?」


『銀』のメダルを持っていた大猿はそれなりの強さだった。

 最強となった俺だからこそ無傷で快勝できたが、よほどの強者でなければ勝つことは難しかっただろう。


「『銀』でこの強さということは、『金』のメダルを持っている魔物はどれくらい強いんだ? ひょっとしたら、俺でも苦戦するような強敵がこの島にいるんじゃ……」


 俺が口にすることができたのはそこまでだった。


『クオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』


「へ……?」


 次の瞬間、金色の炎が天から降り注いだ。

 俺を中心に半径50メートルほどがとんでもない熱量の炎に包まれる。

 一瞬で何もかもが蒸発して、後には全てが焼かれてクレーターとなった地面だけが残されていたのであった。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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