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激闘! 退魔師試験!⑦


「ここは……ジャングルの中か?」


 気がつけば、周囲の景色が一変していた。

 見回した視線の先にあるのは鬱蒼と生い茂った木々。何となくという印象ではあるが南国っぽい植物が多い気がする。

 転移して別の場所に飛ばされたのか。それとも、魔術で生み出した亜空間にでも閉じ込められたのか。

 事情はわからないが……ここが実技試験の会場ということで間違いはないだろう。


「ふうん、周りには……誰もいないな? みんな別々の場所に飛ばされたのかな?」


 ジャングルの中を見回してみるが誰の姿もなかった。

 ブレザー姿の美少年も、巫女姿の少女も、お面を被った部族の人も。

 パンツ丸出しで吸い込まれていったセーラー服おっぱいさんの姿も見えなかった。


「ん……?」


 周囲を窺っている俺であったが、ふと足元に1枚の紙が落ちていることに気がついた。

 それはここに送られる直前に配られた御札なのだが、そこに書かれていたはずの幾何学的な文様が消えており、代わりに日本語で文章が書かれている。




退魔師試験 実技科目『生き残り』


この無人島で3日間を生活してもらう。


合格条件は72時間後まで生き残ること。

何らかの手段によって試験終了時刻までに島を離脱した場合、実技試験は不合格とする。

過度のダメージを受けて『安全装置』が働いた場合も同様である。


試験終了時刻までこの島で生き残ることができれば試験は合格。『乙種』の退魔師として認定する。

また、試験時間中に退魔師として特別に大きな結果を残した者については『甲種』の退魔師としての認定を検討する。




「ふむ……えらく曖昧というか、詳細をぼかした説明だな」


 合格条件が『生き残る』というシンプルな内容であるにも関わらず、『甲種』とやらの認定には『特別に大きな結果』というよくわからない結果が求められる。

 これが退魔師という怪異に立ち向かう戦力を育成するための試験である以上、ただ無人島で食べ物と水を探してキャンプをしろということではあるまい。


「む……」


『ウケケケケケケケケケ』


 そんなことを思案していたら、さっそく招かれざる客がやってきた。

 クネクネと身体をくねらせ、奇怪なダンスを踊りながら白い人型が出現する。

 人型などと称したものの、それを見て『人間』だと認識するものはいないだろう。

 それの全身は蝋で塗り固めたように真っ白で、丸い2つの眼球と限界までつりあがった赤い唇以外、人間らしい身体の部位がついていないのだ。

 まるで子供が作った粘度細工のような歪な形状の生き物である。


『ウケケケケケケケケケッ!』


 それが俺を認識するや、クネクネ、クネクネと不思議な踊りをしながら飛びかかってきた。

 見ているだけで正気を失いそうになるほど不気味だったが……俺はそんな怪異に対して冷静に対処する。


「スキル発動【万能魔法】――『(ファイア)』!」


 右手に拳大の火球が出現させた。

 飛びかかってきたクネクネ白人形にすれ違い際、生み出した炎を浴びせかける。


『ギャアアアアアアアアアアアアアアアッ!』


 炎に包まれたクネクネ白人形がばたりと倒れて、そのまま消滅した。

 うん、雑魚だ。スキルを使わずとも拳で殴っただけでも倒せたような気がする。


「とはいえ……あんな不気味な生き物に素手で触りたくないからな。燃やしておいて正解だよな、うん」


 俺は自分に言い聞かせるように頷いて、消滅したクネクネ白人形の残骸を見やる。

 炎に焼かれて消滅したはずの怪異であったが……それが倒れていた場所には小さなメダルが落ちていた。


「これは……メダルだよな? あのモンスターから出てきたのか?」


 怪異が消えて、代わりに現れたのは十円玉のようなサイズと色のメダルだった。

 手に取って確認すると……それはやはり銅でできていると思われ、表面には「1/100」と彫られていた。


「百分の一……何の数字だ?」


 何が百分の一なのだ。

 おそらく、試験に関係のあることなのだろう。


「……試験の合格条件はあくまでも生存すること。つまり、これは合否そのものには関係ないはず」


 となれば……合格のさらに上にある特別ボーナス。

 『甲種』の退魔師認定に関係があるのではないだろうか?


「まさか……このメダルを100枚集めると『甲種』に認定されるというわけか……?」


 『1/100』のメダルが100枚集まれば『1』になる。

 即ち、1人が甲種の退魔師として認定される資格を得ることができる。


 甲種の認定条件は退魔師としてふさわしい活躍をすること。

 ならば、妖怪や魔物を倒して、その証明としてメダルを集めることがその活躍にあたるのではないか。

 この島がどれくらい広くて、どれだけの怪異が生息しているのかはわからない。

 だが……上を目指す人間であれば、奪い合ってでもこのメダルを手に入れようとすることだろう。


「『甲種』の資格にどれほどの価値があるかわからないが……人からメダルを奪いそうな奴はいるな、確かに」


 レストランで騒ぎを起こした3人組を思い浮かべる。

 彼らであれば、他人からメダルを奪うことくらい平気でやるだろう。


「つまり……この試験において乙種認定されるためには『生き残り』。甲種認定されるためには『狩り(ハンティング)』が必要となるわけか」


 敵は島に巣食っている怪異だけではない。

 場合によっては、受験生同士で戦いになることだってあるだろう。

 それこそ、ハン〇ー試験のように。


 生き残りとメダル争奪。

 2つの目的が絡み合った実技試験の幕が開いたのである。



ここまで読んでいただきありがとうございます。

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