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激闘! 退魔師試験!②


 小野から試験のことを聞かされ、赤本を受け取った2週間後。

 日本の退魔師を統括する組織――『結社』の入職試験の日がやってきた。


「ここが試験会場か……」


 試験会場として案内されたのは、とあるサッカースタジアムである。

 普段はサッカー選手がプレイしているであろうその場所へと、俺はタクシーで連れてこられた。

 まさか送迎までしてくれるとは思わなかったが……今回は小野の方から『結社』への入職を誘ったため、特別措置であるらしい。


「こちら受付になりまーす。退魔師、僧侶、陰陽師、修験者、それにエクソシストの方々は受付を済ませてくださーい」


 スタジアムの正面ゲートでは、スーツ姿の女性が手招きをしながらカオスな言葉を吐いている。

 人目もあるのに、そんな開けっ広げにしていいのかよと思うのだが……不思議なことに道を行く通行人は誰も彼女の言葉に立ち止まることはない。

 反応しているのはこの場所に招かれた人間。『結社』への入職を願っている受験生だけだった。


「へえ……面白いな。幻術の一種かな?」


 おそらく、案内状を持っている人間以外には受付の言葉が聞こえないように術を使っているのだ。

 視覚ではなく聴覚に働きかけるなんて、面白い幻術である。


「よし、これは俺も気合を入れないといけないな!」


 軽く頬を叩いて、受付へと向かった。

 小野からもらった案内状を手渡すと、スタジアム内にある待合室に行くように指示される。

 廊下に置かれた案内板に従って進んでいくと……そこには奇妙な人間ばかりが集まる部屋があった。


「うっわ……胡散臭い」


 そこには仮装大賞の待合室のように雑多とした人間が集っていた。

 学ランやブレザーを着た学生がいる。ランドセルを背負った子供がいる。

 スーツにネクタイのサラリーマン風の男性がいる。エプロンを着た主婦らしき女性がいる。

 和服の老人がいる。作務衣の若者がいる。浴衣の女性がいる。ふんどしに法被のお祭り男風マッチョマンがいる。

 メイクをしたピエロがいたり、ウサギの着ぐるみがいたり、ヴェルサイユかよってドレスのお嬢様がいたり、ブーメランパンツの男性がいたり、二本足の猫がいたり、明らかに人間じゃないっぽいマネキンがいたり……。


「うっわ……ティラノサウルスがいるよ。アレも退魔師なのか?」


 仮装大賞というよりもハリウッドではないか。

 俺はどこの不思議な世界に迷い込んでしまったのだろう?


「とはいえ……驚かされるのは格好だけか。実力は大したことはないな」


 ボソリとつぶやいて、部屋の壁際に移動する。

 待合室にいる不可思議な格好の者達には度肝を抜かれるが……彼らからは脅威になるようなオーラは感じない。

 驚くべきなのは外見だけ。ほとんどが大した戦闘能力を持っていないことだろう。

 聖のように人外らしき気配をまとった者も少ないし、紗耶香のような武術の達人っぽい人はもっと少ない。


「辛うじてマシなのは……あの3人くらいか。なかなか面白そうな空気をまとっていやがる」


 俺は雑多とした人間の中から、とびきり強いオーラを放っている3人に焦点を当てた。

 試験会場にいる人間の大部分は一般人に毛が生えたレベルの術者だったが、油断ならない気配を持った者が3人ほどいた。


 1人目は壁際に立っている少年。俺と同じか少し下という年齢で、黒髪で青のブレザーを身に纏っている。俺でも知っている県内の金持ち学校の制服だ。

 かなり整った顔立ちの美少年である。まるでライトノベルの主人公のようだ。


 2人目は巫女さんの格好をした少女。長い黒髪の美少女で年齢は同じくらい。

 紗耶香もよく似たような服を着ているのだが、こちらは剣術少女の紗耶香と違って華奢な印象。強く抱きしめたら折れてしまいそうなほど儚げだった。


 3人目は少女……と呼んでいいのかわからない謎の女性である。赤い髪、小麦色の肌。年齢はわからない。どうしてわからないのかというと……その女性がお面をかぶって顔を隠していたから。

 彼女の顔を覆っているのはアフリカの原住民が付けているような派手な色のお面。おまけに小麦色の身体は胸に白い布を巻き、腰から太ももにかけてを腰蓑で隠している。

 いったい、どこの民族だよというような格好である。

 露出過多で胸元とかかなり際どい部分まで見えてしまっているが、明けすけ過ぎて不思議と色っぽく感じられなかった。


 1人の美少年と1人の美少女。そして、謎の原住民。

 この雑多とした人間で溢れかえった空間では目立っていないのだが……俺の目は誤魔化せない。

 彼らはかなりの使い手だ。『神』を倒した俺が戦って負けるとは思わないが……警戒くらいはしておいた方がよさそうだ。


「……俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。もしもライバルになりうるとすれば、あの3人くらいか」


 試験では必ずしも相手を蹴落とす必要はないと聞いているが……試験の内容は毎年、別なものが用意されるため油断はできない。


「はい、それでは時間になりますので試験を開始します! 皆さん、静粛にお願いします!」


 待合室にスーツ姿の男性が入ってきた。

 メガネをかけており、真面目そうな顔立ちはまるで学校の先生のようである。


「一次試験……筆記試験会場に案内いたしますので、私の後をついてきてください。荷物はこちらに置いておいても構いませんが、盗難などの責任は取りませんのでご注意を」


 100人ほどの受験者がスーツの男性の後に続く。荷物を置いていく人間は誰もいなかった。


「お?」


 ちなみに……ティラノサウルスはそのまま待合室に残っており、その背中から降りてきた男が試験会場についてくる。

 あのティラノサウルスは式神とか使い魔とかの類で、この男性が使役している術者だったのだろうか。


「はい、こちらが会場です。好きな席についてください」


「ここって……サッカーコートか?」


 案内されたのはスタジアム内にあるサッカーコート。

 緑の芝の上には無数の机が並べられており、問題用紙らしき紙が裏になって伏せられている。


「席は決まっていませんので、お好きな場所に座ってください」


 試験官が指示をする。

 俺は手近な机の椅子を引き、腰かけた。


「制限時間は1時間。カンニングなどの不正が発覚したら即退場です。筆記用具は持参していると思いますが持っていない方がいたら貸し出しますので申し出てください。なお、制限時間開始前に席を立つ行為はカンニングとみなしますので、トイレに行きたい方は今のうちに行っておいてください」


「あの……どうしてこんな広い場所でやるんですか?」


 受験生の1人が挙手をして訊ねる。

 それは俺も思っていた。ペーパーテストをするだけならば、わざわざスタジアムのサッカーコートなど使わずとも屋内で良い。


「ここでテストをするには理由があります。ですが……それは後でわかることです」


 スーツ姿の試験官が淡々とした口調で言う。

 何やら、含みのある言い方である。ペーパーテストだからと言って、油断しない方がよさそうだ。


「というか……俺は実技よりもこっちが油断できないんだけどな」


 自慢ではないが、妖怪やら幽霊やらとの戦いだけならば誰にも負けない自信がある。

 知識面に関しては完全に素人なので、最初から油断なんてできるわけがなかった。


「それでは、準備は良いですか? 試験を始めますよ?」


 トイレに行っていた数人が席に戻ってきて、全ての席が埋まった。

 試験官がスタジアム内に視線を巡らせるが……試験開始に反対意見などは上がらない。


「それでは、筆記試験を開始します。試験はじめ!」


 試験官の合図と同時に、受験生が一斉にテスト用紙を表にする。


「ん……?」


 その瞬間、異変が生じた。

 俺は不思議な気配を感じてテスト用紙から顔を上げる。


『オオオオオオオオオオオオオオオッ……!』


 その瞬間。

 スタジアムの上方。空に開けた空間から、見上げるほどの巨人が出現したのである。


本作のコミカライズが開始いたしました!

コミカライズ版のタイトルは『クエスト無双~俺だけ使えるチートスキル~』になります。

「booklista STUDIO」というサイトで公開していますので、良かったら読んでみてください。

https://studio.booklista.co.jp/

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コミカライズ版 連載開始いたしました!
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レイドール聖剣戦記 コミカライズ連載中!
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