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ヒジリの伝説 ヴァンプの仮面①

新章突入!

どうぞよろしくお願いします!


「ヤアアアアアアアアアアッ!」


 闇夜の中に少女が舞う。

 少女は右手に握りしめたナイフを振りかざしながら、複数の敵と戦っていた。


 おかっぱ頭の小柄な少女。彼女に襲いかかっているのは黒い影である。

 外見は人間と変わらないが、牙は長く目は爛々と輝いていた。まるで人間と獣を組み合わせたような怪物である。


「クッ……まさかこんな所で敵に見つかってしまうとは、しくじりましたわ!」


 おかっぱ頭の少女がナイフで応戦しながら、悔しそうに叫ぶ。


 少女はとある建物に侵入していた。

 とある目的のためにその建物に忍び込んだのだが……警備をしていた『獣』に補足されてしまい、戦闘になってしまったのだ。


「だが……こんなことでは諦めません。そんな私に痺れるあこがれる!」


『ガアアアアアアアアッ!』


 少女は襲いかかってきた『獣』の胸にナイフを突き刺した。

 銀色の刃物が差し込まれた瞬間、『獣』が粉々の塵になって消滅する。


「今日のところはこれくらいにしてやります! だけど……必ず私は舞い戻ってきます! 首を洗ってまっておくがいいです!」


 少女は負け惜しみを吐いて、追いかけてくる『獣』から逃げ惑いながら建物から脱出した。


『ガアアアアアアアアッ!』


 仲間を殺された『獣』であったが……どうやら、建物の外には出られないようだ。

 そういう習性なのか。はたまた、彼らの『主人』によってそう命じられているのだろうか建物から逃げた少女を追いかけることなく低い唸り声を上げた。




     〇          〇          〇



「そういうわけで……先輩の出番です! 戦いに行きましょう!」


「何がそういうわけなんだ? 俺はまだ一言も説明をしてもらってないんだけど?」


 部屋に勝手に入ってきて、勝手なことを喚き出すアホの後輩。

 朱薔薇聖に顔を顰めながら、俺は溜息を吐く。


 あの吸血鬼の『神』降臨から1ヵ月。俺の家に転がり込んできた聖は、相変わらず勝手気ままな生活をしていた。


『神』との戦いが終わってから、器となっていた聖に対して『結社』から殺処分の命令が下った。

 そんな命令に反発して聖を庇ったのはいいものの、結果として家に聖を引き取ることになってしまったのだ。


 聖はこの世界に降臨した『神』の器。

 秩序を重んじる『結社』の人間は聖を危険存在として抹殺するように求め、俺が彼女の身柄を預かることを条件に処分を猶予してもらっているのだ。

 ウチで聖を引き取っているのも同じ理由。下手に教会の自宅で一人暮らしをさせようものなら、『結社』の極右派閥によって暗殺されてしまう恐れがあった。


 そんなわけで聖と同棲……ではなく、同居生活をすることになったのだが、アホの後輩と同じ屋根の下で寝泊まりしてトラブルにならないわけがない。


 今日もまた、聖は俺のところに厄介事を持ち込んできていた。


「あのさあ、聖。何の話だよって突っ込みたいところだけど……それ以前に、ここが何処だかわかってるのか?」


「え? どこと言われましても……ここはどこ? わたしは巨乳美女?」


「どんな記憶喪失だ! 風呂場だよ! ここは俺ん家の風呂場!」


 そう……ここは我が家の風呂場であり、俺はまさに入浴している真っ最中だったのだ。

 もちろん、風呂の正装として全裸である。温泉や銭湯でもあるまいし、わざわざ自宅の風呂でタオルを身につけたりはしない。


「ほほう……これは失礼いたしました。私としたことが気を逸ってしまいました」


「とか言いつつ、湯船を凝視するんじゃない! 逆セクハラはやめろ!」


「失礼、セクハラは先輩の専売特許でしたね。キャラが被ってしまって申し訳ありません」


「そういう問題じゃないけどね!? 出て行けって言ってんだよ!」


 女の子の身体に興味津々の俺であったが、自分が見られるのは普通に恥ずかしい。

 人の振り見て我が振り直せ……女子に対するセクハラ行為は控えたほうが良いのかもしれない。


「少しはTPOをわきまえろよ。居候なんだからさ、家主にはもうちょっと気を遣おう?」


「わかりました。失礼します……」


 聖は珍しく素直に頷き、ペタペタと浴室から出て行った。

 アホの後輩にしては聞きわけが良い。彼女なりに居候という立場に思うところがあるのだろうか?

 ちょっと言い過ぎただろうかと、少しだけ悪いことをした気分になってしまう。


「バビュッ!」


「ぶはあっ!?」


 などと思ったのはわずかな間。

 聖が再び浴室に飛び込んできて、俺は思わず噴き出してしまう。


「ちゃんとTPOをわきまえてきました。先輩、これで文句ありませんよね?」


 一糸まとわぬ全裸になって風呂場に飛び込んできた聖は、無表情な顔で得意げに言い放ったのであった。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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