表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/15

第七話『魔王と勇者のこと』

「泊まっていきんしゃい。ふかふかなベッドがあるよ。ちょっとイチゴの匂いがするけど」


 というのは、ナナキさんである。団長が居ない。帰りやがったあの人。


 マシューはシャウトをキメ、智宏はオーラグマナで遊び、僕はパンティのメンテナンスをしていた。


 人の家でやることではないかもしれないが、今やら無ければいけないものだったのだ。この世界には紙でお尻を撫でる習慣はあれど、その紙が低能なのだ。

 …そう、おっきい方がついているかもしれないのだっ!!


「いえいえそんな、悪いですよ」

「良いんだよ。暖かいお風呂もあるんだ。ちょっとイチゴの匂いがするけどね」

「ほら、この阿呆二人も満足らしいですから」

「この時間帯はターバンのガキが出るらしい」


 はいはい、どうせイチゴ味。


「危ないのだよ。だから、泊まっていきんしゃい」

「お言葉に甘えるぞ、ナナキ」

「さんだろ!! ナナキさん!!」


 全くこいつは!! 隙あらばイキる!! もうおまえ無自覚イキりはうぜえよ!! お前、うぜえよ!!


「俺も泊まりたーい!!」

「良いよ!!」


 こいつらなんか馬鹿しそう。面倒臭いことは嫌なので僕は帰らせて貰おうかな…。


「コレノスケさん…」


 ピートくんに声を掛けられる。


「なにかな、ピートくん」


 僕は、ピートくんに向き直った。


「泊まっていかないんですか…?」

「うん。マシューがここに泊まるってことは、自警団の食堂の人員が減るってことだからね。僕一人でも、いた方が良いでしょ?」


 あの食堂見る限り、団員すげえ居そう…て言うかすげえいるから、たぶん豊満体型なおばちゃんだけじゃ「お残しは許しまへんでぇ」ならぬ、「おかわりは許しまへんでぇ」になっちゃうだろうからね。


「そう…ですか…」

「明日もまた来るよ」

「はい…待ってます!」


 うーん、遊びたかったのかな。僕って昔から小さい子とかから好かれるんだよね。

 不良女さんの弟くんの勉強みたらキスされたし。弟くんから。いまの中学生って同性にもキスするんだね。

 …日本はイタリアだった……?


「うん。じゃあね、二人とも。また明日」

「おー」

「泊まってきゃ良いのに。広いぜ?」

「僕には六畳間あたりが一番!! これ一番言われてるから」


 と二人と軽く会話をしてから外に出る。


 夜風が寂しさを掻き立てるが、一人で脳内恋愛ショートショートをして紛らわせる。


 早く帰らねば。



 帰ると、予想通りの惨状が。食堂はもはや混雑時のきったねえ下北沢の中華料理屋のような光景と化していた。


「ちょうど良かったわ、コレノスケ!! ビール運びな!!」

「了解です!!」

「それが終わったら、皿洗いよ!!」

「はい!!」


 大忙しだ。


      ○


 まったく、あのバカはすぐに帰る。顔に『面倒臭そうだ』と書いてあったな。


「ベッドふかふかやでふかふか!!」


 おい、マシュー。なぜお前は似非関西弁を使える。異世界に関西弁はナンセンスだぞ。


「それにしても、お前の魔力属性金色かあ…」

「金色の魔力は強いのか?」

「強いってもんじゃねえ。魔法最強さ! なんたってあの歴代魔王最強とも言われている初代魔王が使っていたお気に入り属性だからな!!」


 ほお。ん? お気に入り属性?


「初代魔王は複数の属性を使えるのか?」

「ああそうさ。十一色の属性を使えるんだ。基本の七色と銀色、金色、それと白色と黒色だ」

「その中でも金色を重宝していたのか」

「ああ!!」

「魔王なのに、随分と楽しそうに語るんだな」


 そう私が申すと、マシューは首を斜めに傾けた。


「? 何を言っているんだ?」

「なんだ、違うのか。俺たちの世界では魔王(イコール)悪者、というイメージが浸透していてな」


 主に劇中劇を最低最悪にしたといわれるあれの原作RPG。


「そうなのか」

「この世界での魔王とはなんなんだ? ちらほら話題に出ている勇者についても教えてもらいたい」


 少しばかり興味があったので聞いてみた。


「魔王と勇者は称号さ。魔王は桁外れた魔法の才能がある異世界人が喚ばれなるんだ。初代魔王は、とてつもない朴念仁だったらしく、でも大陸の住民のピンチにゃ誰よりも奮闘したそうだ。つまりは魔法を統べる王ってことだ。その字の通りだろ?」

「勇者は」

「勇者だな。よし、聞いて驚くなよ? 初代勇者だが…『魔王召喚に巻き込まれた一般人』だったんだ」

「…何?」

「巻き込まれ召喚され、魔法の才能もないもんだから最初は追い出されたり詐欺にあったり…人格が破壊されていく程度には迫害されていたらしい。けどな、すげえのは誰よりも強い闘気(オーラ)と勇気を持っていたことだ。魔獣の大群に一人で突っ走っていく程だからな」

「勇敢だな…」

「ああ。だから『勇敢な者』って意味で『勇者』なんて呼ばれ始めたんだ」


 巻き込まれた一般人…明らかに主人公ポジションじゃないか。


「ちなみにその初代魔王、初代勇者の名前はわかるか?」

「持ちの論! こっちの世界じゃ一般教養だぜ!!」

「ほぉ。それで?」

「反応薄いなあ。初代魔王の名はトモカズ。初代勇者の名前はイオリ…らしい」


 トモカズとイオリか。日本人の名前だな。

 あとで調べておくか。なぜ俺たちがこの世界に来たのか、わからなくても、帰るヒントくらいは見つかるはずだ。

あれ? そういえばシリアスが入ってる回があるなあ…。シリ…アス…?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ