第五話『戸籍作ったよ!』
耳朶を突く強烈な方向。
「あれは……魔獣だ……闘気のない君達には、到底敵わない」
「たかが低能生物だろう?」
「智宏……?」
「俺達は素手で鰐を討っている。行けるよな、伊之助」
「……オッケー」
智宏は一匹の恐竜の腹下に潜り込み、逆立ちの要領で蹴りを入れた。恐竜は口から血を吐いた。
僕はそんなに強くないので気合いでどうにかする。
「はぁあぁああああああああああああああ…………」
「GUWOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!」
少年に手当てを受けたとは言え、まだ右腕は痛む。
「おッッらァッ!!」
「「!?」」
なので、背中に隠していた槍で突いた。
「GUWOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!??????」
「ぐるォァォああああッッ!!」
ジャンプし、恐竜の頭に蹴りを入れると、目玉が飛び出したので目の収まっていた穴に槍をぶちこんだ。
「はッはァ……are you ready?」
「GU,GUWOOOOOOOOOOOPO!!!!!!」
グシャリ。恐竜が倒れる。僕は地面に着地するや否や踏み込み、後ろで尻込みをする恐竜の喉元に腕を突き刺し、拡げ、そこから潜り込み、肉やら骨やらを解していく。
恐竜の絶命する声が耳朶を打つ。
「弱いッ!! 弱すぎるぞォッ!!」
後ろに現れた恐竜には槍を十連刺し。
「聖・なる・愚か者ッ!!」
恐竜は花火かくや四散する。
ベットリと返り血を浴びてしまう。
「一応これで全部か……はぁ…はぁ……」
何かが走り去る音がしたのでそこに向けて槍を投げると悲鳴が聴こえた。卑怯なり。
「戦い方が魔王と勇者だな……」
「はぁ……はぁ……疲れましたね…」
マシューはまた放心してしまったようだ。
「大丈夫だよ……マシュー」
僕はまた膝をつき頭を下げた。助けられなかった。もっと早くここに着いていれば。もっと早く助けてあげれれば。
後悔は尽きない。
「遅れてしまって…まもれなくて……ごめんッ!!」
「え……何言って―――」
「もしこれが僕がいなく、智宏だけだったら、結果はもっと良い方向に傾いていたかもしれない!! 貴方の仲間を助けられませんでした…ッ!!」
正義感だけが先行してしまった阿呆のような結果だ。誰が僕を赦してくれようか。
「君は正義感が強いのだな…」
「……」
「とても言いにくいのだけれど」
「……?」
「これ……私の義肢だわ…」
「………………は?」
「ちゃんと仲間は生きているよすまないね…紛らわしいものを落としてしまった」
え、じゃああの目玉は……アッ!! おい、これおにぎりじゃねえか!!
「この血は!?」
「魔獣のものだね」
「~~~~~~ッ!!」
本当に……良かった!!
「しかし、君たち二人は本当に強いね。闘気も感じず、魔力の動きも見られなかったが……」
「智宏はともかく、僕は弱いですよ? 故郷の学校でも瞬殺でしたし」
「君の故郷はどこ? 異次元の強さだよ」
「実のところ異世界から来まして」
「何!? 異世界転移者だったのか……」
「なら強さにも納得が……」
うんうん。
「なら、戸籍が欲しいわけだ」
「戸籍ですか」
「そう。作りに行こうか」
「あっ、はい」
この人は静かな人だなあ、って思ってたけど以外と少年のお父様感が強いね。
でもちょうど良かった。
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本籍:ロックハンド王国タィーダック市中央区二丁目一番地
氏名:コレノスケ・カンザキ
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戸籍事項:
転 籍【転籍日】大陸創成歴1000年7月21日
【従前本籍】異世界
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戸籍に記録されている者:
【名】コレノスケ
【生年月日】異世界/平成15年6月6日
【父】異世界/無し
【母】異世界/無し
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身分事項
出生:【出生日】異世界/平成15年6月6日
【出生地】異世界/宮城県石巻市
【届出日】大陸創成歴1000年7月21日
【届出人】クルス・ギザール
婚姻:無し
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意外とガチな戸籍だった。
でもまぁ、良いね!! なんか異世界に戸籍をつくるってなんかワクワクするね。