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第三話『股間がモッコリです』

 屋敷の門の前につくと、甲冑の人たちが連行されていた。


「何だね、君は随分と露出激しめだが」

「お父様を助けてほしいと、頼まれたもので…終わったのですか?」

「お坊ちゃんか? ああ、二分でかたを着けた」

「はーすごいんですね……団結力と武力の織り成す結果…ですか?」

「ははっ、そんなんじゃあない。単に主への忠誠心だ」


 ダンディーなお髭さんと話した後、着るものを貸してくれるとのことで少年とついでに智宏を迎えに行くことに。


      ○


「随分とはやかったじゃないか。そいつは誰だ?」

「クリスチャンさん。僕らに着せるものをくれるらしい」

「おおまじか。黒丸切れかけてたんだわ」


 ということで、馬車に乗り込み少年のお屋敷へ。


 異世界ってこともあって、規格外な広さだよ。例えるのなら、岩手銀行赤レンガ館だよ。


「……すごいな」

「すごく……大きいですね」

「そうだろうそうだろう」


 僕と智宏の間からヌッと金髪のイケメンが現れた。


「お父様!!」


 へ、へー……この人がお父様ねえ…。物凄く元気そうでなおかつ物凄く呑気そう。


「君が息子をまもってくれたのかね」


 と、智宏の手をとるお父様さん。この人、なんか面倒くさそうなのでそのまま智宏にすべての責任を押し付けたい。


「あっ」

「おっと少年。言質無用だよ」


 少年の口を人差し指で塞ぐ。


「でも……全部あの人に…」

「良いんだ。あんなの…誇っていいことじゃないからね」


 我ながら格好いい台詞。これで納得してくれるだろ。


「勇者みたいだ」


 勇者…? やっぱり異世界だからいるのかなあ。会ってみたいなあ。


 そんなこんなしていると、話し終えたのかお父様さんが僕を見た。


「誘拐に気付き、息子を救ってくれたのは君らしいじゃないか」

「おい、智宏貴様ァ!! 僕を売ったなァ!?」

「そっくりそのまま返してやるよ性根鎖野郎ォ!!」

「今ここでかたつけようか、あぁん!?」


 僕と智宏は顔面を握り合う。


「というか僕は……本気で…!! 暴力こそ語るに値しないものはないって思ってるから!!」

「いい心意気じゃねえかクソ野郎」


 人を救うためなら振るって良い? 馬鹿言え。何があろうとその拳は『誰かを傷付けた拳』だ。決して正義という御託に正当化して良いものじゃない。


「大衆は露になった個人の正義を多数決に決めてはならない……」

「それも結局は御託だろう?」

「きぃぃいっ!! ムカつくぅ!!」


      ○


 服というものはこんなにも偉大なものだったのか。暖かくてしょうがない。


「さて、どうするのさ。智宏」


 お屋敷からの帰り。銀貨四枚を貰って山道を歩く。


「金そんなにないからな。無駄遣いは出来ない。結局どっかでバイトだな」

「戸籍もなにもない奴を雇用してくれるようなお人好しがいるかなあ」

「ご都合主義があるかどうかだ」

「To be or not to be……だね…」

「ご都合主義があるかどうかそれが問題だな…」

「言い直さなくても良いのに」


 異世界来たんだし、チートスキルが欲しいなあ。こう、馬鹿みたいに強くなる魔法とか。治癒魔法とか。


「なんで、ラノベって回復系の魔法を虐げたがるの?」

「それはだな、そうしないと世界観というものの説明がややこしくなるんだ」

「結構簡単な気がするけど、ここはほならね理論なのかなあ」

「だろうな。やってみなくちゃわかんねえ」


 ということで少し考えてみよう。


 えーっと。

・個人は魔法の適性があり、炎や水や土がある。その他にも簡易的な『回復魔法』もあって、大概の怪我は回復魔法で治せる。

・つまり治癒に特化した治癒魔法は不要である(ここ意味わからない)


「確かに、ちょっと面倒くさいかも」

「だろ?」


 そんなこんなで山を降りる。


      ○


「おっ、町が見えてきたんじゃない?」

「ん? おお、中世ヨーロッパの町並みだな」

「ナーロッパだね」


 町に入ると、とても騒がしく活気づいていた。良いね、こういうの。大好きよ。


「働き口探すか」

「だね。良いところがあれば―――」

『お二人さん!! 働き口探してるの!?』

「「?」」


 声の方を向くと、木剣を背中に掛けたそばかすの少年がいた。歳は僕たちと同い年くらいかな。


「うちで雇うよ」

「マジか!!」

「やったね、智宏!」

「ああ、ちなみにあんたんとこは何をしてんだ?」

「ふっふっふっ……聞いて驚くなよっ!! スロウス家直下の自警団『スロウスファミリー』さ!!」


 ……。


「あれっ? 反応がないな。部分的聴覚障害か?」

「いや…聴こえてたよ…でも、僕たちスロウス家知らない…」

「ああ……たぶん凄いんだろうが。俺たち…田舎から来たもんでな…」


 ん? 田舎?


「(ねぇ、智宏。田舎って……)」

「(異世界から来たって言えば問題なるかもしれないだろ)」

「(なるほど)」


 智宏はやはり頭が良い。自慢の友人だクソ野郎ぶち殺してやりたいよ。


「そうだったのか。俺からも質問。名前は何て言うんだ? 俺はマシューだ」

「えーっと……」


 智宏に肩を叩かれる。智宏を見ると目で「偽名を使う。兄弟で行くぞ」と語っていたので「オーケー」と呟いた。


「俺はマリ・モッコリだ」


 ちょっと待てネーミングセンスクソダサ野郎。田舎者に家名あるかよ…ッ!!


「ほぉ、そっちは?」

「えっと……」


 僕は思考した。モッコリというクソダサい家名に合う名前はなんだ。モッコリ…モッコリ…はっ!!


「コカンガ・モッコリです!!」


 なんか…敗北に近い勝利を修めた気がする。


「服も良いところのやつだし、田舎の領主から来たのか」

「ま、まぁな…くっ…」


 てめぇ……なに笑ってんだよ…。てめぇがモッコリなんてクソダサい家名考えるからだろうがよォ…。


      ○


 ということで、つれてきてもらいました自警団の本部的な場所。右側には団員の寮があって、中央は会議室やらなにやらがある。


「ここの食堂で働いてるんだ」

「食堂」


 聞いた話によると、マシューは自警団の団長さんに助けられて、ここで働かせてもらってるらしい。


 夢はでっかくこの町の笑顔を守ることだそうだ。少年漫画の主人公感がするのはなんでだろう。


「皿洗いから始まって、食材の買い出しに行ったり、時には自分で狩るときもあるんだぜ」

「猪とか?」

「ああ。魔猪とかは魔抜きしないと食えないから、普通の猪だな。んで、兎や鳥」

「ほぇー……」

「早速だけど、二人には買い物にいってきて貰おうかな」

「オッケー。何買えばいい?」

「アカニンジンを五十本、アオキャベツを五十個、イエスタ牛のバラ肉を五十個、ハーブを四十個だな」


 極端に多い数字。何を作る気なんだろう。


「了解! じゃあ行ってくるね!!」

「あ、ちょまて金!!」

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