プロローグ
―――春。暖かな陽気に包まれ、緊張と希望を胸に新たな出会いを求める季節。
この通学路を通うのも二年目へと突入した。両脇に咲いた満開の桜が桜色のトンネルを作り出している。ふわりと風が僕の瀬を押してくれるようだ。
片手を青く晴れた空へ翳してみる。指の隙間から光が脱走中だ(?)とても気持ちがよい。まさに青春と謂ったところだろうか。
三年生の卒業式が終わり、僕も高校二年生へとなっていた。
まだ見ぬ友情愛情劣情―――諸々込み込みで『青春』を求め、いざ行かん!! 申し遅れました。僕の名前は神埼伊之助。みんなからは『カンコレ』って呼ばれているよ。
そんな僕も、どんな新しい友に会えるのか気になって気になって仕方がないよ。想像しただけでワクワクしてくるね。
僕は小さく笑い歩みを進める。
左手の拳を右手の掌に叩き合わせて、爽やかな空気を変わらないただ一つの吸引力で胸いっぱいに吸い込むと、学校に向けて駆け出す。
と、ここでハプニング。
覆面を被った大柄な男―――うちの制服を着ているから多分同級生か下級生―――が僕の両腕両脚に華麗な手さばきでロープを巻き付け、おぶり、手刀を駆使することにより意識を刈り取ったのだ。
その日、高校付近の交番には覆面の大柄な男と全裸の少年を見たという通報が絶えなかったと言う。
シリアスを完全に排除した物語となっております。