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迷宮攻略の、その後

 日本に戻ってきた俺たちだが、様変わりし過ぎたその有様に、声が出ない。


 端的に言えば、ほとんどの地域がモンスターによって占拠されていた。

 人間はモンスターに敗北したのである。





 俺たちはモンスターの一団を駆除し、休憩できるスペースを確保した。

 そこは公民館だったのだろう。俺たち15人が横になれるだけのスペースがあった。

 残念ながら電気も水道も使えないほど屋内は荒らされていたが、レトルト関係には手が付けられておらず、俺たちは久しぶりに日本の食事を口にすることが出来た。


 せっかく日本に戻ってきたというのに、誰も口を開こうとはしない。

 迷宮内より文化的な食事ができたというのに、それを喜ぶ声もない。



 それもしょうがないだろう。

 恐ろしい事に、腐乱しつつある死体がここまでにいくつも見つかった。


 老人や子供を中心に何人も死んでいる。

 そして、その死体が放置されている。

 火事もあったのだろう。焼け焦げた区画も見つかった。


 ここは俺たちにとって余所の地域だが、こうやってモンスターがいるまま放置されているという事は、地元も似たような状態かもしれない。

 スマホやパソコンは見つかったが、ネットができないどころか、そもそも電源が入らないので本体だけあっても意味が無い。災害用のラジオもノイズばかりで意味のある音を出してはくれない。

 情報を集める手段が無く、目隠しされた状態が余計に不安をあおった。





 ちょっと考えれば分かる事だ。

 モンスターが大量発生するとどうなるか?


 インフラの崩壊だ。

 完全に駆除できる規模ならいいが、少しでも残れば被害が大きくなる。

 道路や鉄道などは、モンスターが発生することを想定されていない。

 空港や発電所などは警備が厳重だが――1ヶ所や2ヶ所ならともかく、全国規模でモンスターが出れば、防衛は追いつかないだろう。


 俺たちはセーフティエリア確保のために簡単にモンスターを駆除してみせたが、それは今まで戦い続け、武を研鑽してきたからだ。

 誰でも出来る事じゃないし、むしろできない連中の方が多い。

 きっと大勢死んだだろうし、その中に身内や友人がいないと考えるのは楽観論にしても無理がある。



 俺自身、かなりキツイ。

 もっと早くに出てくるべきだったかと後悔している。


 それに、だ。

 誰も俺を責めはしない。


 最初にスキルを鍛えてから出ようと言い出したのは俺だが、みんなもそれに賛同した。


 しかし、感情論においてそんな事はどうでもいいはずだ。

 誰かに八つ当たりして、精神の鎮静化を図るぐらい、普通だろう。

 それでも誰も俺を責めない。


 無駄に成長したステータスのおかげなのか、そうでないのか。

 精神が安定しているのはいい事だけど、素直に喜べない。





「人類の生き残りがゼロってことは無いと思う。どこかに絶対に生き残りがいるはずなんだ。

 それにほら、俺たちよりも前に出て行った連中がいただろう? そいつらが簡単に死ぬとは思えない。

 だから、探そう。生き残った誰かを助けよう。家族や友人も、その中にいるかもしれない。

 俺たちの力なら、それが出来る」


 一晩寝ると、少しは考えもまとまる。


 ここはもう放棄されたエリアだろうが、ここ以外に、もっと守りやすい何処かに生き残りの拠点があるはず。

 迷宮で先行していた連中が合流していれば、守り切れない事もないはずなんだ。


 可能性はゼロじゃない。

 むしろ、人類が全滅している可能性の方が低いだろう。



「ネット小説だと、学校や警察署、自衛隊の基地で籠城してました!」

「ショッピングモールとか、大きいデパートに人がいる可能性もあります!」

「少年自然の家とか、キャンプ地って線もありませんか?」


 賭けるべき可能性が見つかれば、歩き出せるのが人の強さだ。

 これからの方針を決めるため、全員で意見を交わす。


「コンビニに行きませんか? 何があったのか、新聞で確認できると思います」

「そうだな。いつまでの新聞があるかで、いつこうなったのかが分かるはずだ」

「喫茶店は? バックナンバーがあるかもしれない」

「高いビルの上から周辺を探せば……展望台があるところって、旅行誌に載ってないかな?」


 何ができる? 何をした方がいい?

 それをみんなで確認して。


「よし!

 まずはいつものパーティ単位で情報収集。そのあと、近くの警察署、デパートやショッピングモールを全員で探索するぞ!

 情報収集は12時まで。時間までにここに戻ってくること!」

「「「はい!!」」」


 俺たちは再び歩き出した。









 その数日後。

 俺たちは生き残りの人類と合流に成功する。

 そこで、俺たちは色々と話を聞いた。



 俺たちが迷宮に連れて行かれた日から、世界中でモンスターが出てきたらしい。

 日本の社会は俺たちがいなくなってからもだいたい60日は持っていたが、その後は諸外国との交易が出来なくなった事もあり、武器の類が不足してじり貧になったようだ。

 一度どこかでインフラが崩壊してしまえば、文明崩壊まではあっという間だったという。


 彼らもステータスやスキルを得ていたが、初期に迷宮を攻略していた連中の情報が大々的に広まっていたため、俺たちのような神に至るスキルを得ている者はいなかった。

 しかも即戦力が求められる事もあり、選択の余地が無いというか、成功例に倣った人がほとんどだという。

 神スキルまでの時間が短くて済む偏ったスキル習得をした者は早い段階で殺されたりしたようだ。



「まぁ、地道にやるしかないよなぁ」

「迷宮があれば育成が効率よくできたんだけどねー」


 ≪神名≫スキルに至るように人を育てようにも、地上は迷宮ほど効率よく動けない。

 倍どころか、10倍以上の時間がかかるだろう。

 死に戻りも無いので、危険管理はより慎重にしないといけない。

 モンスターの分布が分からない事も効率悪化に拍車をかける。

 こんな環境で≪神名≫に人が至るとも言い切れない。


 先は長く、険しい。





「鎮さん、子供の世話をお願いねー」

「おう、任せろ!」


 その後、俺たちが中心となって大きな集団、新しい国を興すことになるが、それはまた別の話。

 俺たちはただ、今を生きていく。

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