迷宮前にて
『迷宮を攻略しろ』
それは、そんな一言から始まった。
「なんだ、ここは?」
俺は頭痛をこらえ、周囲を見渡した。
周囲には大勢の人がいて、頭を押さえたり気分が悪そうにしていたりする。俺と同じように頭痛をこらえているかのようだった。
この場にいる人は男女年齢バラバラで共通点がないように見えるけど、若い方では中学生、年齢が上のほうでは30歳ぐらいが上限のようなので、「身体が完成しつつあり、衰えだす寸前」の年代が集められたと考えられる。
残念ながら、近くに見知った顔はない。
今いる場所はよくわからない、とにかく広い場所だった。足元が岩か何かのようなので、洞窟か何かの中なのかもしれない。
全体的に薄暗いのはまだいいとして、天井などを見ても光源があるように見えない。足元に影があることから、上に光源があるのは確かなようだけど……。
荷物の類はなし。
財布やスマホなどは見当たらない。財布はポケットに入れていたんだけど……着の身着のままってことか。
そこまで現状把握に努めていた俺は、現実逃避をしたくなる自分を諌め、思い出せる範囲で自分の記憶を思い返すことにした。
俺の名前は「八木 鎮」。18歳の大学生で男だ。
入学したての大学1年生である俺は、バスケサークルの先輩らと居酒屋に向かう途中だった。
先輩たちは高校の部活で知り合った人たちなので、その縁で飲み会に誘われたのだ。
店に入った記憶はない。
大学近くの居酒屋だったので店までは歩きだった。
――もしも、ここが天国か何かだったとすると、俺は移動中に交通事故か何かで死んだということになる。車が突っ込んできたのなら、自分たちが車に乗っているかどうかは関係がない。
もしくは、思い出せないだけで店で急性アルコール中毒になったのかも。飲みなれない、というより、酒を飲むのは初めてだ。そういう不手際もあるだろう。
先輩方が近くにいないのだから、後者の方があり得るか?
……まぁ、どうでもいいか。会えた時にでも考えよう。
俺はこの時こんなことを考えていたが、冷静になってみるともっと考えるべきことが他にあったし、あとで「あの時はパニックになっていたんだろうな」と思うのだった。




