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殺人選択劇  作者: サンダ
3/3

第2話  ぬるい風の食堂

 少しだけ迷うも、グライは食堂に入ることにした。

個人的な理由で、バーダイブのせっかくの好意を無駄にするのも勿体ないと思ったのだ。

その室内は、少しだけ湿度が高く感じた。

先ほどまで雨が降っていたのだろうか。

大きな窓から覘ける空は白い雲の間を縫う様に青が視覚できる。

再び食堂内に視界を戻す。

テーブルが所狭しと並んでおり、最大で50名程度は収容できると以前に料理長は語っていた。

今は、満席と比較すれば3割程度の客が確認できる。


 厨房のカウンターに向かった。

行動が早いバーダイブはすでに注文を完了し、どの席に座ろうか考えているようだ。

それを尻目に、ある人物の前に立った。

「へっ、グライか。

 まだまだその稼業で稼げそうだな」

料理長はグライを見るなりそう言う。

前回会った時、グライは右膝に負傷を抱えていた。

傭兵の任務をこなしている際、依頼内容を大きく上回る数の敵兵に襲撃されてしまったのだ。

危機的状況から辛くも生還したが、依頼主は戦死してしまったため、

前金として貰った僅かな金額しか受け取れなかったのである。

その際「命あっての人生だ。他の仕事を探すって選択ができるぜ」と言ってくれていた。

基本的に、施設で自室を持てる時点で傭兵を辞める事も可能であった。

しかし、グライは傭兵を続けた。

そこから時は流れ、3つの依頼をこなし今に至る。

それぞれの任務は、負傷した時ほど難易度は高くはないため、着実に成果を上げることができていた。


 「料理長、今日のおすすめは?」

グライは聞く。

自分の好きなメニューを選んでもいいが、

この質問をした時に返ってきた答えは間違った事がないのだ。

「今日のおすすめは『ロイヒ竜の唐揚げ定食』だぜ」

ロイヒ竜とは、ロイヒと呼ばれるここから50キロほど離れた地方に生息している地竜の事である。

※地竜とは翼を持たない、つまり飛べない竜の総称

全長は5メートルほどである。

地竜とは言え、立派なドラゴンの仲間であり、年間百人近くがこの竜の犠牲になっているらしい。

「ロイヒ竜…珍しい。何故、入荷しているんだ?」

素直に思ったことを質問する。

「そりゃおめえ、倒した奴が持ってきたに決まってるだろ」

と言いながら、目の向きはこちらにはない。

料理長の不敵な笑みから察するに、その視線の先にロイヒ竜を倒した者がいるのだろう。

グライは同じ方向を見ることにしてみた。


 そこには、3名の傭兵たちがそれぞれ好みと思われる朝食を摂取している。

と、そこにバーダイブも加わり、計4名が視界に入ることになった。

「あいつら4人だよ。この唐揚げ定食の原料を提供してくれたのはな」

そう言いながら料理長は先述の定食が乗せられたトレイをグライに手渡した。

「い、いつの間に…」

「馬鹿野郎、俺は料理のプロだぜ。舐めるんじゃねえよ」

と、自慢げに言い放った。

実際は、弟子の料理人が裏の厨房で作っていただけであるが。

「コイツをどう仕留めたか知りたきゃ、奴らに聞くんだな」

そう告げながら料理長は厨房へ去っていった。

(まだこの定食を食べるとは言っていなかったんだが…)

心の呟きは届くことはなかった。


 グライも、先ほどの4人に近づき、話しかけた。

「俺もご一緒させてくれ」

各々から口頭や会釈で返事をされる。肯定的な返事を貰えたようだ。

グライも椅子に腰かけた。


偶然ではあるが、この4人(実際にはグライも含めて5人であるが)

この施設の中でもトップレベルに活躍している者達である。

そんな彼らの武勇伝を聞くのも悪くない。

と、グライは自身の定食の原料調達方法について尋ねてみることにした。

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