5/5
新暦795年 大国と小国(4)
---
「……あら?」
「どうかなさいましたか、レイラ様。」
「いいえ、なんでもないの。……それよりウェルチ。この戦はいつ終わるのかしら…。」
「そればかりは知る由もありません……我が国の王様も、必死に戦っております故。私たち女はこうして家で、城で、戦う男達を待っていることが責務なのです。」
「それはわかるけれど……。」
「今は逼迫していても、きっと転機は訪れる。国王様はいつも仰っていますでしょう。財力に任せて小国を小馬鹿にする愚かな大国は、技術に勝る小国に敗れ、いずれ滅ぶのだと。」
「……」
彼女は静かに黙った。
メイド長であるウェルチも、こうなってはダメだとわかっていた。
けれどそれは王女が戦を嫌っているからだと、勝手に想像していて。
「とにかく、今日も戦火が激しくなりそうです。無闇に外を歩かれぬよう。いくら城下町とはいえ、いつ敵兵が奇襲を仕掛けてくるかわかりませんから。」