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僕と妖怪少女と常日頃 Re:salvation  作者: 工藤将太
第2章【陰陽道所属の世界】
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第2章41話 「戦火の渦中に」

遅くなりましたが投稿再開です(/・ω・)/

山城慶が準備を終え狭間の世界から再度発ったすぐに書庫では

そのままツキネが机で本を開いて読んでいた。

しかしそれは同じページを何度も開き行ったりは来たり……

しているような傍から見れば複雑な光景だろう。

だがそれにツキネは気付かず少し上の空でもはや本の文章を

見ているのかはたまたその前にある空気を眺めているのかは分からなかった。

と、そこにまだ本調子ではないのか少し足を引きずりながら

書庫に入ってくる高身長の姿。

影ですぐにツキネはそれが誰なのかを理解し、

声を掛けようかとも考えたが先に喋ったのはその姿の主だった。


「彼は行きましたが興味はないのですか?ツキネ様」


「ないわ。けじめなんてただ自分のミスを取り戻したいようなものじゃない。」


高身長の男、ディオミスにツキネはそう呟く。

だが至って冷静でいつもとは違う温厚な雰囲気は持ち合わせてはいなかった。

どういうわけであれディオミスはふふっと笑いツキネに話しかける。


「何もなさらなかったのは過去の自分に対してのけじめ、なのでしょうか?」


「本当イライラするやつよね、アンタ。

 ―――というかなんでそんなものに固執するのかしらね、

 復讐?責務?個人での感情?

 昔の自分を見てるみたいで本当嫌になるわ。」


「応援にいかせない理由、それは何かあるんですか?」


ディオミスはツキネの主張をうんうんと聞いた上で

変わらず笑みを零したまま呟く。

それにツキネは睨みながら話した。


「”仲間が来たことで力が増す、そうなればアイツにも勝てるかもしれない”

 本気でそう思ってるの?自信が生む謎の力で頼ってるようじゃ

 彼は何も成長しないしましてや奴に勝つこともできない。

 そもそもその力を過信したばかりに今回こうしてずさんな結果になったんじゃない。


 ―――本当ならあそこで見切りをつけても良かったんじゃないか?


 って思うけれどアンタがそのタイミングで起きて救出に行くんだもの。

 治療しないわけにもいかなかった。」


「見切り、ということは他に候補でもいるのでしょうか?」


「候補としては他にもいるわ。

 特にアナスタシオスの存在を知っていた、って彼が言っていた

 反百鬼夜行の大将の女の子とか。

 もしくは彼の親友と呼称している私と同じ狐の男の子とか。

 まぁ彼の付近にいる人物を当たるのは得策だと思ったけれど

 ……アンタの彼に対する評価は結構高くてそこに驚いているわ。」


ディオミスはハッとして驚くとすぐに笑いだが

目だけは少し開きながらツキネを見つめた。


「彼、山城慶を推薦したのは私です。

 もしもここにもう一度帰ってくることがあれば私は彼に色々と教えるつもりですよ。

 あの世界の術式、あれはこちらの魔法やスキルに匹敵する力を持っている。

 書庫の管理人である雲雀様にもお聞きしましたが

 使えないだけで知識は得たそうなのでそこに関しても

 教鞭を取りつつ今後のためにも学びたいものです。」


ディオミスは慶のことを擁護しつつも

自分自身の欲望も同時にそう呟いて曝け出していた。

そんなディオミスにツキネは嘲笑するかのようにフッと鼻息を鳴らすと


「アンタも結構腹黒いわね。」


「そうでしょうか?私はただ単に欲望に忠実な死神ですよ。

 そう、別に誰が死のうが構わない、物語を面白くするのであれば

 私はその演目を手伝いもする。それが私を作っているのですから。」


ディオミスはまた不敵に笑みを零した。







狭間の世界から抜け出した慶が辿り着いたのは

百鬼夜行の裏である森林の中だった。

周囲が暗いために今は夜だということが分かる。

慶は抜け出してそこが自分が狭間の世界に行く前にいた場所だ

ということを悟ると周囲を妖気探知で確かめた。

だが周囲にはいないものの一点としてその方向に集中的に

妖気が集まっていることに気付くとそれが百鬼夜行の内部の方を示していることに気付き、

また同時に慶はそれがすぐに良くないものだと理解する。

何故ならば既にその方向は明るく赤と黄色のコントラスに

塗れた戦火に見舞われていたためだった。


「これ……は……!」


予想以上の最悪な光景だった。

多分前いた世界も傍から見ればこんな光景だったのだろう。

だがどうして戦場の舞台が百鬼夜行になっているのかが理解できない。

慶は百鬼夜行裏の森林から百鬼夜行へと滑り降りるように山を下りる。

百鬼夜行の森林側には確か給仕をするための場所があり

またそこに裏玄関があったことを悟ったためだった。

すぐさまそこを目指して行動に移し裏玄関を開けようとすると

それが凍り付いてるのを理解する。


「凍ってる……?

 ―――いや今は中がどんな風になっているのか見ないと!」


好奇心ではなく自分がこの戦場に行けば

どうしてこんなことになったのかが理解できる。

いや、原因は自分ではあるがそれでも百鬼夜行で争っている理由が分からない。

慶はドアを無理やり開けるとそこには血まみれの男女の姿があった。

女を覆いかぶさって守るような態勢を取っている男、

というのが想像がつきやすい光景だろう。

するとその光景に戦火の光が一瞬映ったとき慶は

それが誰なのかを理解して駆け寄る。


「し、詩緒か……?!どうした?!

 というかなんで詩織まで……!!」


北園詩緒と詩織。

詩緒の方は陰陽道に属し、詩織の方は百鬼夜行の方へと属していた。

女子供は逃げ出したとアナスタシオが言っていたために

詩織がこの場にいることが信じられなかった。

何より詩緒がどうして血に塗れているのかが理解できない。

まさかこの先で殺されかけたのだろうか?

そう考え見るとその先もまた凍らされ開けることは困難を極めると見えた。


「……!―――や、ま……しろ……さま?」


「!―――そうだ!山城慶だ!

 詩緒?どうしてここに?!」


途切れ途切れに消え入る声を呟く詩緒は慶の方をほぼ光のない瞳で見つめた。


「どう、し……てあなた……が……」


慶は詩緒を少し起こそうと触れようとしたとき

夜の青い月がその部屋を照らして理解する。

戦火の光よりも明るく眩しくそれでいて目を傷めない光は

詩緒の抉れた腹の傷を露わにしていた。

そしてほとんどが氷となった詩織は既に

息絶えていることにも気づき慶はそれに驚き硬直する。

だがその光景をよそに詩緒は慶から詩織に目線を外して呟いた。

さっきまでとは違う途切れ途切れの声ではないが

命はほとんど無い、と印象づけるもので。


「あなたが百鬼夜行へ、行き戻ってこなかったことをみな心配しました……

 源代様の一件もありまた百鬼夜行が壊滅したという情報を受け、

 山城……慶様がそれに巻き込まれた可能性があると囁かれたのです。」


慶は自分が想定し恐れていたことが現実になったことを知る。

慶がいなくなり不審に思った陰陽道は百鬼夜行へ行く。

そこで干からびた山城源代の身体とそれと交戦をした痕跡があったという。

その痕跡のあとには大量の血痕と慶自身の着ていた衣服の残骸も紛れており、

陰陽道は既に亡くなった山城源代がどうしてか山城慶と交戦になり、

そこで行方が分からなくなってしまったとそういう結論に至ったという。

だがそこでは終わらずそこに反百鬼夜行が居合わせたことで

陰陽道のやり場のない何か、その矛先が反百鬼夜行へと向いたという。

詩緒は当時、反百鬼夜行に非はないと考えたが指導者のいなくなった

陰陽道はその組織の使命に従いこうして戦争を始めた。

その組織の使命、陰陽道の使命は妖怪を討滅するという根本的にあるものである。


「どうしてこんなことになっているのか……

 それすらあなた様にも源代様にも聞くことはなかった。

 いや聞いたとしても多分私たちで解決できるものじゃなかった

 、のかもしれませんね……。

 ―――先に戦いの幕を切って落としたのはこちら、陰陽道側です。

 ですが……」


そこで詩緒は顔をしかめながら長考するかのように

目を閉じようとするが考えられずにそのまま目を開いて虚空を見つめたまま呟く。


「私は知らない。

 彼がここの組織にいたのかどうかも。

 でも彼の姿を見て陰陽師の皆様方は意気揚々として妖怪を殺しにかかりました。

 妖怪もまた殺しにかかりました。

 ですが……彼女だけ、は……おこっていた。

 先陣を切った陰陽師を見て彼女は”鬼”へと変貌した……」


鬼?彼女?そして組織にはいない彼?

慶は左下を見るかのように考える。

頭では考えれる。だが心だけはそれを考えたくないとしていた。

でも既に起こって欲しくないと考えていたことが起きている。

考えたくなくともその可能性は大いにあり得る。

すると詩緒は眠たそうに首をカクカクと前に下した。

それに慶は気付くと既に詩緒の命が途切れかかっていることに気付く。


「……山城さま。

 話の途中……なのですが……すこし、眠ってもよいで……しょうか?

 とてももう、喋れそうに……ないのです」


多分彼は死ぬだろう。

止めるか?頑張ってこの状況を打破するからそれまで待てと?

そんな酷な真似は……


「……ああ、分かった。

 でも寝すぎはよくないぞ?……ありがとう、北園詩緒。

 短い間だったけどサポートしてくれてありが―――……とうな」


詩緒は目を開いたまま力を完全に抜けきった様子で虚空を見つめた。

慶はそんな目を手で閉じると起き上がって氷漬けになった扉を開け放つ。

すぐに部屋の冷気はなくなり熱風がふわっと顔中を覆った。

炎が燃え盛る中慶はその廊下を歩いていく。

詩緒の話を聞き届けて正直考えたくなかった。

でもきっと俺が考えた予想は現実だろう。


(アナスタシオス……奴がきっと陰陽師側の誰かを操り反鬼に攻撃を仕掛けた)


詩緒は見たことがない、と言っていた。

であればそうなると考えても良いかもしれない。


……


「もう、迷ってる場合じゃない。

 行くしかないんだ……前に。」


一際強い妖気に向かって慶は歩き出した。


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