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僕と妖怪少女と常日頃 Re:salvation  作者: 工藤将太
第1章【百鬼夜行所属の世界】
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第1章9話 「展開」

「あの………?」


香山が声を漏らす。

だがその声を聞かせまいと慶は周りを一瞬見渡し口を塞がせた。

慶らの周りには今この村の住民…妖怪達が

こちらをじらりと見つめては、コソコソ声を漏らしていたからだ。

妖怪の中には稀だが人間を食らうものもいる。

なので下手なことにならないよう、

こうして香山を真ん中にして歩いて居るのだが

とうしても妖怪達は寄ってくる。

目的は謎の妖気の塊だろうか。

それを銀次郎と詩織が必死に止めて宥める。

そしてまたしん…とした空気に包まれるが

その空気を断ち切ったのは銀次郎だった。


「慶………キンナラ様は多分物凄く

 怒ってるぞ。」


「ああ、分かってる………。

 怒ってるで済めば良い問題なんだがな…。」


「あ、てか慶。香山さんにキンナラ様のこと

 について説明してあげたら?」


銀次郎、慶、美世の順に会話を進め未だキョトンとする

由理に慶はああ。そうだなと呟き語り出す。


「香山、今から会うキンナラ様について

 説明する。よく聞いとけ。」


コクコクと香山は頷いた。


妖怪の住む村や町を代々統治するのは

決まって何代にも繁栄してきた天竜八部衆のだった。

天竜八部衆と現総大将ぬらりひょんが縁あって今の百鬼夜行を

築いているらしいのだがまず誤解を解いておきたいのが一つとして

天竜八部衆は何も妖怪ではない、ということだった。

妖怪ではなく神に近しい存在という立場であることだ。

彼らは仏教、いわば仏法…その規律を守護するという役割を

持ってはいるがここでは省略する。


そして先にも言った緊那羅という存在は

齢いくつかは誰も知らないがとうに3桁はいったとされる

天竜八部衆の一人であり怪村あやかしむらの村長だった。

見た目は50~60代の女性の人間として本来の姿を隠し振舞っている。


(…それで何か問題があるの?)


由理は喋ってはいけないと慶に釘を刺されたためか

身ぶり手振りで応答する。

だがそれに答えようとしたときもう既に緊那羅のいる所まで

着いてしまっていた。

もう夕方になってて暗くなっているも電気は一向に点かない。

留守か…?銀次郎は先にいるかどうかを確認しに行ってもらい

慶は由理にその先の問題について話し始める。


天竜八部衆は名のごとく八名によって構成される神格だが

その者らはそれぞれ特有の大罪にも似た性格で

特に緊那羅は憤怒…怒りやすい性格だった。

どこからどこまでが機嫌を損ねさせるかまるで不明だが

それでも慶は由理に言いすぎるな、答えすぎるなという

ことを由理に告げる。

由理もまったく知らない妖怪に怒られるのに

流石に気が引けたのか渋々ではなくすぐさま頭を縦に振り

慶と美世が安堵したところで銀次郎が帰ってくる。

帰ってくる頃になって玄関の明かりに電気がついていた。


「大丈夫だそうだ…が、慶。

 ちょっと色々心配だぞ?緊那羅様…何か気立ってるし。」


「ああ、分かった、行くぞ。」


「笑顔で待ってる、だとさ」


嫌な笑顔だと思うが…という声は口の中に飲み込み

銀次郎、慶、香山、美世、詩織の順で入っていく。

そして扉を開けた瞬間、老化に放置されたか分からないろうそくの灯火が

ボッ!……とつきまるで部屋を案内するかのように

ろうそくの火の灯による道が開けた。

そして進んでいった先に居たのは。


「クソガキ共めっ……この私を待たせるとは

 中々のもんだぞ?んん??」


―――そこにはもうすでに怒りが頂点になりかけた

緊那羅がイライラしながら慶らを見つめた。


慶は由理に小さくなんかごめん香山…。と耳打ちするも

香山は額に汗を浮かべながら

唇を噛みしめながら笑顔で何かを訴えかけてくる。

だがそれはそれで経験だ。俺のせいじゃない。

そして由理に何かしらの妖気があるのかを感知してか

人間自体を連れ出したわけじゃないことを確認して

緊那羅は元の姿、頭に一角、額に目が3つある姿に戻る。

あい変わらずの毒舌は直らず戻りもしないが。


「北園、峰澤、坂崎は席を外せ。」


と、緊那羅は3人を席から外し俺と香山だけが、

向かい合って座った。何故俺…?と思うがそれはすぐに

どうでもよいこととなる。


「落ち着いたな…………名前は何と申す?」


「香山由理と申します…?」


「疑問符を浮かべながら言うものではないぞ、

 香山由理。わしの名は緊那羅と申す。

 そこの山城慶のいる村、つまりここの村長

 に当たるのぅ。それがわしじゃ。

 他にも仏教八部衆という物にも加わって

 おってだなぁ…………ー」


「そこら辺で止めて本題に移ったらどうです?

 緊那羅様。」


と、慶が会話の流れを断ち切る。

進行役…としての役目を慶は買って出たのである。

緊那羅はそれに対して呟いた。


「久々のおなごなのだぞ?わしは嬉しいぞ。

 わしと同じおなごが来るなんてのぅ。」


その呟きに香山はええっ?!と声を大にして驚く。

その叫びに慶は固まり目で何をやってるんだと

ガチの睨み目線を由理に送るが由理はそのまま

多分男だと思っていたのだろう。

相当驚いたのか口が開いている。


「おなごだと分からなかったのか?」


そう、香山に対し笑みを溢して呟く。

香山は必死に否定しているが、その真意は

態度でわかってしまった。


「緊那羅様、本題に移った方が良いかと。」


「そうじゃな。では本題じゃが……香山由理。

 そなたにはわしを超える妖気が存在しておる。

 現段階では落ち着いているが、

 いずれその力がそなたを包み込むかもしれん。

 その時は…………分かるかのぅ??」


「…………。」


黙り混む香山を見て冷静に、

緊那羅は呟いた。


「生き地獄じゃよ。例として挙げればの話じゃが

 火責め、水責め、木馬責め、塩責めやその他…

 多数ある。」


その単語に嗚咽交じりにうげっと呟く由理。

実際これは問題で現実だった。

だがお構いなしに緊那羅は由理に告げ続ける。


「それを抑えるためにそちにはこれを授ける。

 そして何年か妖気を抑え込める訓練をして

 もらいそれで成果が出なかったときは、

 その時に、対処を考えるとする。」


と俺も本でしか見たことない石を緊那羅は香山に

渡した。あれは妖気を唯一抑え込めることの出来る

勾玉妖石。本来の勾玉とは違い薄い赤色に中心が

黒く光輝いている。


「え…えとこれって……

 何年かってのはその間この村に居るってことですよね」


「そうじゃが、何が言いたい?」


「監禁ですよね?」


その言葉に図星を突かれたのかどうかは分からないが

それでも変わらず緊那羅は話す。


「……確かに他にも対処法はあるぞ?

 だがこれ以外死ぬというリスクが伴われる。

 それでも良いのか?」


「……。」


「どうするか決めるのはそちだ。」


と緊那羅は香山を指差す。

だが由理は緊那羅の思惑に対する返事としては

些か早すぎる答えを喋り出す。


「皆が幸せになるなら良いです。

 やってください。」


その後、由理の身柄の保証は百鬼夜行が見ることとなり

またそれが自分自身を唯一の救える方法と信じて。

由理は人生の中で一番に見えない先を前にその答えを

呟いてえへへ…と作り笑いを見せた。




…その頃一方、怪村の神社

その境内で事件は起きていた。

発見者は追い出された詩織と美世と銀次郎。

3人は緊那羅の娘、空理恭子が境内で倒れているところを

発見するのだった。駆け付けた場所に数枚の黒い羽根と

何かの紙切れと……舞った黒い羽は不吉な未来を告げた。

補足説明:天竜八部衆

物語上では神に近しい存在と明記していますが本来は「八部衆」「天龍八部衆」と

呼ばれる仏法を守護する8つの神様とされます。

神様設定は入れてもいいかなと思いましたがそれだと読み手も書き手もそのうち混乱するだろう

ということで神に近しい存在と明記しています。

能力のようなものも前回出てきましたがそれもオリジナルです。

モデルとかは参考にしていますがあくまでも参考です。

ネット百科事典Wikipediaにて検索するとより詳しい情報が載っているかと思います。

よりリアルなほうが知りたい方は検索することをお勧めします。

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