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僕と妖怪少女と常日頃 Re:salvation  作者: 工藤将太
第2章【陰陽道所属の世界】
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第2章37話 「杞憂」

期間を空けまして再開です!

目を覚ますとそこはすでに見知った天井。

だがここが今いるべきではない世界だと理解しそれと同時に起き上がろうと

身体を起こそうとするもその身体は動かず、緊張といったものではない

何かに縛られたような感覚があることを認識する。


―――何があったのか?


自分に何が起こったのか?頭でそう考えて俺は周りを見渡す。

どうやらここは病室のようで自分はその病室のベッドの上にいるんだと分かった。


「―――もう体調はよろしいので?」


久々に聞いたその声の主を見る。

そこには最後に会ったときより少し痩せて髪が肩までかかった好青年の姿があった。

好青年とはいえおそらくは自分より遥かに年上だろう。

そんな雰囲気を彼は醸し出していた。


「……お久しぶりです、ディオミスさん」


「さん付けなんてそんなご大層な。会えて嬉しいですよ山城さん」


あなたもさん付けはよしてくれ、と微笑する慶に

ディオミスはそうですねと微笑み返すとそれで……と始め語りかけた。


「どこまで……覚えていらっしゃいますか?

 ああ、いえ覚えていないのであればゆっくりと思い出すと良いですよ。

 それに今のあなたの身体ではまともに動くこともできないようですから」


「……質問に質問を返すようで申し訳ないんですけど、

 何があったか知っているんですか?」


するとディオミスは少し戸惑いながら困ったような反応を示した。

聞くと自分が今いる世界の狭間から抜け出した後すぐにディオミスは目を覚ましたという。

そのため何があったのか、また何が起きているのか

その全容を未だ全てを把握しきれてないという。

そんな中で慶は今所属する世界からディオミスによって助け出されたそうだった。


「すみません、お力になれるようなことは何も。

 すべての出来事とその事情に関してよくよく理解していないのです。

 しかしあの時何が起こったのか、というのではなく

 あなたが運ばれた経緯は知っています。

 無論その場に立ち会わせましたから。」


どうやら俺は何かしらの攻撃を受けたらしく

それで辛うじて逃げたであろう先の林で倒れていたそうだった。

もともとは雲雀さんが俺に用があって呼ぼうとしたらしい。

そしてその時ディオミスは駆けつけて救出、現在に至るそうだった。

今何故起き上がれないのかその理由を聞くと身体の損傷が激しく

今はその治癒に慶自身の身体が専念しているためだという。

そんなに酷いケガだったのかを聞くと左腕は千切れる寸前、

両足の腱は切れ背中が鋭利なもの……刃の類で深く傷つけられているらしい。

その他にもあるらしいのだが慶は少し聞き飽きたようにその話を途中でやめさせた。

そして慶は苦しそうに頭を抑える。


「……!話し過ぎましたか。少し休んだほうが良いでしょう。

 私は取り合えず一度目を覚ましたということをツキネ様に言っておきます。

 では何かあれば申し付けください。」


そう言ってディオミスはスッと礼をして静かに病室の扉を閉めて出て行った。

慶は依然とその頭痛に苛まれやがて疲れてすぅっと眠りについた。







眠りついた先で慶は自分に起きたことを思い出していた。

なぜ忘れていたのか?というのではない。

瀕死による気絶とショックで軽い物忘れをしたようなものだった。

だがその夢―――現実が偽物ではないと分かれば分かるほど

慶はもうその記憶を思い出したくないと、そう感じていた。

たとえもう一度世界をやり直すことができるとしてもその記憶だけはもう二度と見たくない。

感じたくないと思えるほどのトラウマを慶は思い出しまた

それを脳に焼き付かせようとしていた。

後悔か?自分が百鬼夜行を離れ陰陽道へとついたための罰か?

もしくは物事を合理的に判断しすぎたか?

いや、そうではない。

別に前にいた世界、前にあった自分と変わらず慶はただ誰かの助言に

時として惑わされ、自分の記憶と後悔を照らし合わせ、

もう二度としないという誓いを立てたかそのどれかのせいなのか?

慶はその記憶を現実を前にどう生きたほうがよかったのかを、

どう行動すればよかったのかを考える。

だが考えれば考えるほどその生き方が望ましくないというのがその後を追う。

どちらにせよ慶はこの現実に対してけじめをつけなくてはいけないのは確かだった。


―――ツキネを呼ぼう。


そう考え慶は悪夢から目を覚ます。

不思議と汗はかいておらずそれよりも自分がいかに冷静であるかを笑った。


―――この状況を楽しんでいる……のか?


いやそれはない。楽しめるわけがない。

見知って大好きだった友人のソレを前に俺は楽しめるほど狂ってなんかいない。


―――じゃあ俺はこの状況を悲しんでいるのか?


ああ、それはあり得るだろう。

だがそれは世界に向けてじゃない。

無論ツキネや狭間の世界に向けてでもその背景と歴史に向けてでもない。

自分自身に対して、どれだけ自分自身が甘かったかを悲しみ

笑うしかやり過ごす術がない、と嘲け笑うしかなかったのだ。

不思議と身体は起き上がれる。

前よりも少し治癒力は増しているようだった。

鬼は確か傷を受けていけばいくほど治癒力は高まっていき強靭な身体へと成長していく。

今の姿も、自分自身も昔に比べれば確かにそうなんだろうと考えた。

だがただ考えただけ。

行動に移すなら今それを、実行に移したいと考えた。今だけだ。

慶は病室を後に書庫へと向かう。

廊下は寒く風がその身体を撫でた。

髪はぼさぼさのままで衣服も簡易的なものだ。

だが俺は早く実行に移したかった。

はやくこの出来事をみんなに聞いてほしかった。

傲慢だろうか?

自分自身が受けて考えるべきことをみんなと共有するというのは?

でもそれをするべきだと胸の心の中の俺が叫んでる。

俺はすぐにその方向へと足を運んだ。


「ツキネ、いるか」


「もう起きたんだ、早いのね」


ツキネはそう本を片手にそっと椅子に座っていた。

書庫にはいつもいるはずの雲雀の姿はなくまた従者であるクロの姿もない。


「私になにか用?」


「話したいことと聞きたいことがある。

まずは話したいことから。そのあとに補足として聞いておきたいんだ。」


言うとツキネはふぅ、と溜め息をつくとこちらには振り返らず椅子に座るように慶を促した。

慶もまたそれに従って座るとツキネは慶の顔をちらっと見て


「あとで風呂にでもいってきなさい、結構身なり酷いわよ」


「ああ、知ってる。

 だって―――俺はあの時死にかけたんだからな。」


と、一間置いてそう呟くとツキネは苦虫を噛んだような顔で慶を見つめた。

本を置きツキネはその続きを求めた。




山城源代が死んだことに俺は違和感を感じていた。

どうして百鬼夜行内部で死亡が確認されたのか、

確かにそうなれば百鬼夜行に疑いの目が行くのは確実だ。

だが百鬼夜行から反百鬼夜行が生まれた後、百鬼夜行と陰陽道は争いを止め停戦状態になった。

陰陽道も第三者の組織の出現に百鬼夜行合わせて2つの勢力を相手にするということは考えるに、

かなり大きな問題になると踏んだからだ。

だがそれは百鬼夜行も同じ。

百鬼夜行もまた陰陽道と反百鬼夜行が同盟を結び

百鬼夜行に仇をなす存在となればかなり脅威とも取れる。

幸いにもこの3勢力は互いに停戦状態になったのだが

その脅威は実際ほとんどが実現することになった。


陰陽道の山城慶と反百鬼夜行の香山由理の婚姻だ。


これにより百鬼夜行はこの2つの勢力が脅威と感じる部分もあったはず。

だから山城源代を殺した―――とはならないはずなのだ。

婚姻の際に山城源代は家督を息子の慶に継ぎ、

また反百鬼夜行の酒吞童子が座る総大将の座は義娘の由理が継いだ。

つまり脅威を排除する場合家督を継いだ慶、もしくは総大将の座についた

由理を殺す方が手っ取り早い。慶と由理の2人が死ねば混乱状態となり

互いに殺し合うことも考えられるし、そこに百鬼夜行が巻き込まれたとしても

抵抗なしに降伏すればその殺意の視線は百鬼夜行には向かないはずだ。

それに場所の点も違和感というか謎があった。


どうして山城源代を百鬼夜行内部で殺したのか?


百鬼夜行内部で殺せば確かにその目は百鬼夜行に向くだろう。

実際に百鬼夜行の動きが怪しい報告もあった。

その報告も合わせれば今回の主犯は百鬼夜行だとして他2つの勢力は矛先を両者共に向けるだろう。


そして、そもそもどうして山城源代は百鬼夜行にいたのか?


慶が最後に会話した通話、あれは山城源代があの時間に百鬼夜行にいたことを指している。

だとすれば自ら赴いた、わけではなく誰かに呼ばれた可能性がある。

あの時間は確か夕時だったはず、普通なら門も締まり

宴会や会合以外じゃ両者共に会わない時間なのだ。

まぁ両者の大将の仲の良さ、交流のことは全く知らないためこれは考慮しない。

ならば、山城源代は誰かに呼ばれ百鬼夜行内部で殺されたと仮定しても良いかもしれない。

だがこの言葉にはある真実が隠されている。

そもそも誰かに呼ばれたとしてわざわざその場所で殺す必要があるのかどうか。

そこに関して議論したときその考えが導き出される。


―――山城源代は百鬼夜行に呼ばれて、そこで殺された。

だが死体は隠さず百鬼夜行内部で発見させる、

それできっと殺意の目線は百鬼夜行に向くだろうから。


「これは憶測だ。

 でも俺はあのときその考えに至って試しに、百鬼夜行に単体で訪問したんだ。

 考えを凝らすのも悪くない、でも実際に行って

 間違っていたら別の可能性を模索すればいいって。

 そうして犯人が百鬼夜行だと決めつけて行動したんだ。

 ―――いや百鬼夜行じゃないな、百鬼夜行の動向がおかしかったのもあった。

 だからその百鬼夜行を操っている人物がいてもおかしくないってのも考えた。

 前いた世界のように。そして俺は単身で訪問してその後はすぐさま異常に感づいた。

 門番は誰もいなかったんだ。」


異様な冷たさと暗さと静けさ。

慶はガラガラと扉を開けてそのまま土足で踏み歩いた。

空気の雰囲気でいつでも逃げれるようにと考えたためだ。

そして一角を通り過ぎて山城源代がいた場所へとたどり着いた。

冷たく何もないような空虚な空間。

ふと誰かに見られたような気がして慶はその方を振り向変える。

その少女はそそくさとその場を去った。

慶は思わず呟いた。


さとり……?』


その後を追って慶はある一室へと辿り着く。

いや、一室とは言えないほど狭い。

人一人寝ればもう窮屈なくらいだ。

そこに辿り着いてその奥に覚と思わしき人物は何故か床の何かに食らいついていた。

咄嗟に慶は刀を構えその先を見つめる。

覚と思わしき人物がこちらを見つめるように振りむかえったとき慶は悪寒と共に目を見開く。

その人物は確かに覚だった。


だが目は虚ろ―――いやそもそも目がなかった。


潰れ血と目だったものが身体にこびれついていた。

慶はそれに目をつむって見ないように視線を横にずらして覚が食らいつくものに気付く。


それは……覚同様幼く頭のない狐の女の子だった。


『―――っ?!!!』


声にならない悲鳴を上げて慶は顔を歪ませる。

それが何なのか、それは憶測だ。

でもその名前は言いたくない、認めたくない。

自分が妹のように思った存在だということを、彼女を。

慶はすぐさまその行為を止めようと考える。

何でも良い、取り敢えず殺してでも止めなくちゃいけない。

そしてそのまま覚を無我夢中で斬りかかろうとしてその刀をある男が止めた。


『……!』


『いたいけな女の子に暴力を振るうのは無しだぜ?山城源代の息子くんよ』


その姿を最後に目撃したのはなぜか今いる同じ場所にいたものだった。

アナスタシオス、醜い笑みを浮かべて彼は慶を嘲笑した。


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