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僕と妖怪少女と常日頃 Re:salvation  作者: 工藤将太
第2章【陰陽道所属の世界】
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第2章33話 「これからどうするか」


「じゃあ話を戻すが今後は

 アナスタシオスの動向といつスキルを使ったか、

 それを知る必要があるってことか?」


慶とツキネは引き続き書庫で話を進めていた。

途中から話に参加しなくなったクロロン・ヴェールと

雲雀は話が長かったためか席に座って寝ている。

なおツキネは二人を起こす気はなく、

いつも疲れているだろうからとそのまま会話を続けていた。


「そう、その中で重要なのはアナスタシオスが

 いつスキルを使ったかどうか。

 前にも話したことあるかもしれないけど取り敢えずもう一度話すとして、

 アナスタシオスのスキルは【復活】他者の命を吸い取り第三者に分け与えられる。

 重要なのはこのスキルをいつどこで使ったか。

 そこが分かればそれを使う前に遡って運命を断つことができる。」


しかし問題はもう一つ残っている。

アナスタシオスの【復活】は一度使うと天界や魔界、狭間の世界、

常界といった世界において間接的には二度と死ななくなるという点だ。


「紗々の娘、美世に憑依したときもそうだったと思うけど

 彼はあの手この手で生き長らえ、

 そして自分より下と判断した者を配下につく

 ことができるから厄介なんだよね―」


「え?ちょっと待て。今なんつった?」


そこでツキネはあっ、と言って思い出す。

そして慶に申し訳なさそうにこのことは言っていなかったと謝り始めた。

それはアナスタシオスの【復活】というスキルの中に組み込まれた効果が

何も命を吸収できる、二度と死ななくなるの二つだけではないということだった。

それは生命エネルギーに関与した派生したスキルによるもので

アナスタシオスの【復活】は他者の命をエネルギー体として吸収し、

それを第三者に与えることのできる効果を持っているというのが

一番正しい言い方なのだがしかしそれは

何も寿命だけの生命エネルギーだけではないそうだった。


「命を吸う過程で自分より下だということを思い知らさせてほぼ暗示のような

 ものをかけることができるの。

 支配……と前の世界では言っていたけれど完全に相手を支配するってことじゃなくて、

 取り敢えず自由を奪う程度の暗示をかけることができるみたいなの。

 まぁ暗示だから逆らうこともできるそうだけど

 ほとんどは逆らえず言うことを聞いて廃人になるケースが多かったわ。

 実際彼と戦う時は彼に暗示をかけられた人々を倒すのにとても時間を要したしね。

 じゃあ取り敢えず話を戻すわね。

 問題はそんなアナスタシオスに接触できた

 人物がいるかを調査する必要があるということ。

 ……まぁいなきゃ百鬼夜行に潜伏していたっていう事実はないだろうしね。」


ツキネは慶をちらりと見ながら呟く。

百鬼夜行に潜伏という情報は慶の父である源代からも聞けた情報でもあるが、

ツキネもどうやら既に知っていた情報だった。

ツキネは紗々にアナスタシオスの捜索を依頼し数年後百鬼夜行に所属したことで、

アナスタシオスがどうやら百鬼夜行に潜伏していることを知る。

そしてまたツキネは百鬼夜行を主に調べる形で様々な工夫を凝らし、

百鬼夜行への情報を集めその過程でアナスタシオスと狭間の世界に

ついて調べる慶らのことを知った。


「前俺がいた世界でもアナスタシオスが百鬼夜行にいたという事実があるのだから、

 純粋的に考えて今も百鬼夜行にいるかもしれないっていう

 予想はあったかもしれないけど……まさかもう知っていたとは。」


「調べるってことは内部も外部もキッチリ綺麗にやらなくちゃいけないの。

 でもねそれは百鬼夜行に潜伏するアナスタシオスの話だけ。

 アナスタシオスに関わった妖怪たちについてはまだよく分からないことが

 多いわ。だから前の世界では"黒鳥優破"と"ディオミス"にも協力を依頼したわけ。」


黒鳥優破……前いた世界では反百鬼夜行派の一つのリーダーを担っていた人物だ。

八咫烏の妖怪で最後はアナスタシオスに操られた百鬼夜行の一部によって、

反百鬼夜行派諸ともほとんど掃討させられてしまったかなり悲しい立場にあるのだが

今の世界ではどうしているのだろうか?

慶は考えながらもディオミスについての話をツキネに振る。


「ディオミスさんって……確か今は昏睡状態にある人だっけ?」


そう言うとツキネはあたかも嫌そうな顔を浮かべて呟く。


「"アレ"をさん付けして人呼ばわりするとは思わなかった……

 というかディオミス自身自分を人って称してたの?」


うん……?

慶はあまりよく分かっていない顔でツキネに受け答えする。

ディオミスさんは前いた世界で紗々に付き添い

アナスタシオスとの戦いに加わった紗々さんの友人という人物だ。

その後慶に自身の主であるツキネを紹介し、アナスタシオス撃破後

慶と紗々と共に狭間の世界に帰り昏睡状態に陥ることとなった。

慶が覚えていることはそれぐらいでそういえば人かも妖怪かも分からなかった。


「そういえばよく覚えていないかも……

 紗々さんの友人としか言ってなかったから。

 どういった人物なんだ?」


「彼は人でもないし妖怪でもないわ。

 部類分けをするなら……魔人であり魔物かしら。

 彼の素性は"死神"よ。」


しっ……死神?!!!と慶は驚き立ち上がる。

だがそれをツキネは何を今更といった顔で見上げていた。

そしてさらに驚きの事実を突きつける。


「それにアイツ、アナスタシオスとの戦いで負傷して

 昏睡状態ってことになってるけど本当はただの魔力切れ。

 今は魔力ってのを補うために眠って回復してるだけよ?

 あとアイツ、もう一つ素性明かすと魔界のトップよ。

 つまりは魔王。今は私との契約でその身から外れてるけど。」


昏睡状態ではなくただの魔力切れ、魔王だが今は離れツキネの補佐役。

いくら聞いても驚き飲み込めない事実を前にして、

慶はとりあえず元の話に戻して進める。


「と・り・あ・え・ず。

 黒鳥優破とディオミス……さんに協力を

 依頼して調査を進めて何か得られたのか?」


「……いや。

 何も得られなかったわ。既知の情報しかなくてね。

 そして黒鳥優破は契約を無視して行動をしたからそのまま契約を破棄して

 元の人物に戻したわ。

 元の人物……つまりは介入転生者ではなく元に戻したってとこかしらね。

 ディオミスの収穫としてはあなたを見つけてくれたこと、

 そして百鬼夜行派かどうかは分からないけどアナスタシオスには

 どうやら協力関係を強いてる人物がいることを見つけてくれたわ。」


「協力関係……それって他の派閥がいるかもしれないってことか?」


「それはどうかしら。

 気を失う前にそれを発言して欲しかったわね。

 今はずっと寝ているし。」


ツキネははぁ……と溜め息を吐きながら俯き、

次に顔を上げたとき慶を見ながら呟いた。


「今後のやるべきこととしては取り敢えずアナスタシオスの動向を探ること。

 どこで何をしていたのか。何でも良いわ。

 また協力関係を強いてる人物がいるのならその人かもしくはグループを

 調べることも重要になってくる。

 そしていつスキルを使ったか。これは冒頭話した通り。

 いつ使ったのか分かれば、使う前に戻ってしまえばいい。

 そして青龍刀で断ち切ってハッピーエンド。

 私もあなたもやることは終わるわ。」


「その後のことは……いや。

 今話しても意味ないか。」


「その後のこと?そうね……前あなたに言った条件は

 あなたを元の世界に返して、アナスタシオスが関わって死んでいった者たちが

 誰一人死なない世界を見させてあげることかしらね。

 それ以外になら……そうね。私の過去でも話してあげましょうか?

 聴くのならだけど。」


ツキネはとても長いから今じゃ語り切れないと笑う。

だが慶は今言ったツキネの言葉に少し動揺していた。

確かに慶はアナスタシオスに良いように運命をかき混ぜられてここにいる。

だがもしもアナスタシオスがいなかった世界で

戦争が起きたり対立抗争が深まったら?

そうなれば今の世界と何ら変わらないんじゃないかということだった。

反百鬼夜行が生まれたのは百鬼夜行派の意見に対立したからだ。

そして百鬼夜行派が未だ存在するのは

陰陽師と反百鬼夜行派と対立しているからで、

また陰陽師も百鬼夜行派と反百鬼夜行派を掃討するために生まれている。


(そうだ……アナスタシオスがいても、

 いなくても何も変わらないんじゃないか?)


アナスタシオスが関わって死んでいったものが誰一人死なない世界。

確かに良いかもしれない。反百鬼夜行派を掃討した百鬼夜行派の行いは

アナスタシオスが独自に仕掛けたものなのだから。

でももしもそうじゃなくても攻めていたら……?


「……何か深刻そうにしているけどどうかしたの?」


「あっ……いや……」


何でもないっていう顔はしてない。

そうツキネはキッパリと言って慶を見つめる。

慶もそう言われてはと考えて口を開けた。


「もしも……アナスタシオスが消えた世界でも

 戦争が起きた場合は前と何も変わらないんじゃないか……いや。」


何も変わらないとかじゃない。

前より酷くなるだろう。

アナスタシオスがやっているのは搾取だ。

だが他は?

戦いのきっかけを与えたのがアナスタシオスなだけできっかけなど

誰にでも作れる。

だとしたらきっかけが作られるのが早かったら―――


「―――元々闘争本能とは自然界で生きていくために備わった性質のこと。

 でもそれが戦いに直結しても戦争には直結しない。

 その理由が何故か分かるか?」


「えっ……それはどうして……」


「利益よ。

 利益があるから戦争というのは起こるわけ。

 平和とか悪とか振りかざしてもそれは建前上であり机上の空論なの。

 君は今アナスタシオスがいない世界を目指している。

 そうでしょう?でも君がやることはアナスタシオスだけを消すこと?

 それ以外は?」


それ以外……つまりアナスタシオスがいなくなった後の世界のことだ。

慶は考える。いなくなった後の世界でどう生きるかを。


「私はこうしろああしろとは言わない。

 この問題は君が決めることだから。

 一つ言えるのだとすれば君から見て私はどんな立場?」


「……救世主」


するとツキネは笑いそんな大層なものじゃないと話し、


「じゃあ君がそれになれば良いじゃない。

 言ったけど私もそんな大層なものになった覚えも、

 また君になれとも言ってない。

 それに……ある意味君の中でも良い目的ができたんじゃない?

 アナスタシオスがいない世界でも戦争は起こさせないっていう。」


ツキネは立ち上がって寝た二人を起こしながら悩む慶に

ひとまず話し合いは落ち着いたと呟きながら話し始める。


「その問題はじっくり考えると良い。

 君がどうしたいかは君だけのものだからね。

 取り敢えず今日はここいらで解散しよう。

 私も話疲れたから休むとするよ。」


そう言ってツキネは後のことを起きた二人に任せて書庫を出た。

慶はまだ一人残された書庫で考える。

だがツキネに言われた通りじっくり考えたほうが良いとして

起きた二人に話したことを簡単にまとめて元の世界へと帰るのだった。

次回へ続きます(^^♪

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