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僕と妖怪少女と常日頃 Re:salvation  作者: 工藤将太
第2章【陰陽道所属の世界】
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第2章29話 「白昼夢 香山由理(Part.3)」


ひそひそと話す内容は主に報復という名のただの憂さ晴らしだった。

次期総大将候補選の時と同じ黒く塗られた仮面を被り

そんな会合の護衛を務める者を頭から足にかけて真っすぐに縦半分に

斬り下ろし、その妖怪の死体を会合場所に広げながら登場する。

肉片や内臓が飛び散り由理が着る灰色の男用の袴を、

赤く濡らしながら目だけが見える仮面は狂気を物語っていた。

紅く鋭く肉食動物が獲物を屠るときと同じ狩りをする目で

由理はふーっふーっと息を切らしそして息を整えて呟く。


『その話……私も混ぜてください……♪』


よく状況を飲み込めていない妖怪らに由理は容赦なく

傍にいる妖怪の首元を刺し殺し、綺麗に頭だけを獲る。

そしてそれを輪切りをする要領で6つに斬り落とし

その光景を間近で見て怯える妖怪らの近くに疎らに散らばせた。

その時間数秒―――他に余った妖怪ら8人に刀を抜かせるには丁度良い

芸当だった。由理はセミロング状の髪をふんわりと

どこからか吹く風に乗せて横に流して目の前を見つめる。


(あと8匹……)


酒吞童子には初め止められたことだった。

次期総大将候補が裏切り者と称される妖怪らを一人で討つということ。

当然自分の部下にも酒吞童子の部下にも止められた……のだが

自分が起こした不始末は自分が片付けるべきだろう、と思った私は

今こうして一人で夜討ちをしているといった状況だ。

正直脅し程度……とは思っていたのだがまさか初撃を撃ってくるとは

思わなかった。しかもほとんどが私に敵意を向けて、の攻撃だ。

敵意を向けるのであれば仕方ない。

私もそうして斬り伏せていく内に今この場にいる。

見せしめで一匹殺したが問題ないだろう。そう何も問題はない。


『ふっ…ふざけr―――』


鼻目掛けて突き刺し脳みそが刺された傷口から噴き出すのを確認して

そのまま由理は持つ刀を抜き取る。

扱う刀は別段ここで使う意味のない"無尽刀槻"と呼ばれる刀でそれを抜き取る。

そして今頃かのように会合参加者らの中に見覚えのある妖怪を見つめた。


『ああ……あなたも参加していたのね……黒鳥くん?』


『俺は成り行きだ。にしてもお前ひとりか?由理。』


驚き構える妖怪らの中に未だ胡坐をかき続け座る黒鳥優破がそこにいた。

由理は仮面を被り正体を隠している。

意味があるのかと言われれば無いのかもしれない。

だが最後に見る顔が見えないのは良いことなのだろう。

何故ならその下の顔がどういった表情をしているのか、

笑っているのか怒っているのか冷酷な表情なのか。

それは果たして分からない。

だがもしそれが見えないのであれば良いことだろう。

お互いにとっても、死ぬ上でも生きる上でも顔は印象に残る。

だからこそ由理は仮面を被り続けている。


『こっ…黒鳥殿!!こっ此奴めを……!!』


『あぁ?殺るのはてめぇらだろうよ。

 それにもうバレてる時点でお前らに未来はない。

 ……俺がここに来た意味は一つ、由理。

 お前が来るだろうからここに来てみた―――それだけだ。』


と黒鳥は顔を黒く染め上げそのまま身体のあちこちを変化させていく。

由理はその姿を見たことがある。

由理もまたそれに呼応するかのように変化を行う。

その光景にひっそりと逃げようとする妖怪ザコ

死んだ妖怪の持っていた刀で飛ばして刺し貫き

由理は息をするかのように自然的に他の裏切り者を

何の苦もせずまた何の感傷もせず

次々と殺していき部屋には"武装変化"をした黒鳥優破と

"憑依変化"した香山由理だけがいた。

黒鳥は途中由理が裏切り者への攻撃を避けつつ座っていたがために

上半身だけが少なくとも血しぶきを受けていた。

だが由理は上半身にも下半身にも血のりをべっとりとつけ

灰色だった服も今や赤く塗りつぶされ黒い仮面も赤に染まりつつある。

その状態ではぁはぁと息を漏らす由理を黒鳥は羽を羽ばたかせる勢いで

詰め寄る。そして鋭く伸ばした右手のかぎ爪で由理の顔を引っ掻く。

だが不意打ちによる攻撃を由理はわざとそのまま顔へ攻撃を許し

代わりに腰を後ろ右に回して右腕を黒鳥の腹に押し込んだ。

右手に持つ無尽刀槻は黒鳥の装甲に止められたがヒビが入り軋む音が響く。


獣人系の妖怪は種族によって"武装変化"を纏うことが出来る。

それは自分の羽に妖気を乗せてまるで甲冑や鎧のような固い装甲へと

変化させることが出来るというものだった。

だが弱点として羽に妖気をのせているために全部の羽に妖気を集中させて

しまうと部分的には脆くなる傾向があった。

特に胸や顔を覆う装甲以外は脆く砕けやすい、

その筈なのだが由理はその胸の装甲を刀で砕いてしまった。

それぐらいの腕力を由理は憑依変化で生み出していた。

前にも言った憑依変化は全種族の妖怪ができる妖怪変化の一つで

種族ごとによって効果が違う分、瞬間的な力が得られるもの。

由理はそのスタンダードな妖怪変化、

憑依変化を使い黒鳥の装甲にヒビを入れたのであった。


『かはっ……!!……へぇ。どんな顔をしてるかと思えば……』


『隙、見せたね。』


黒鳥は由理の顔を見て驚いたためかそのまま後ろに後ずさりする。

だがそれを由理は見逃さずその場所を確実に無尽刀槻で突き通す。

心臓を的確に突き通したためか心臓は原型を止めたまま無尽刀槻に突き刺された

状態で黒鳥の背中からそれは露出していた。

どくん、どくん、と鳴る心臓は次第に小さく音を失くしその本体は

冷たく温度を無くしていく。

黒鳥は由理を見上げて吐血しながら瞼を閉じていく。

それに由理は溜め息を吐いて刀を抜き取り心臓はボテッ……と

ずり落ちるのを確認すると満足したのかそのまま会合場所を見つめる。


『会合はもう終わりですか?皆さん』


仮面の外れた声はさっきよりも聞きやすく場所全体に行き通っていた。

だが誰も耳を貸せるものはいない。

するとどこからかの足音、来たのは自分の部下であり友人の吉崎通だった。

髪が透けるような白さで顔つきは幼い異性、男で数少ない透明人間という

種族の妖怪で由理の数少ない友人であり幼馴染だ。

状況を見て察したのか…と由理の顔を見てその察したような顔は困らせていた。

由理をまじまじと見ながら通は呟く。


『もっ……もう終わった感じ……?』


『何が?』


『だって由理……こんななか笑ってるから』


由理はスッと右手を押さえてそして自分が今まさに笑っていることに気付く。

あっ……と声を漏らして由理は震えながら自分の両手と自分の姿を見ながら

この場をもう一度見つめる。

暗かったのかと言われたらそうでもない。明かりはついているし

その明かりも黄色の弱い火の光ではあるがそれでもこの場を照らしていた。

場所は紅く臓物をびちゃびちゃと散らばせながら弱くだがはっきりと

由理の目にそれを焼き付かせる。

これをたった一人……自分がやったかと思うと一瞬怖くて

心臓が抉られそうな気持ちを感じ由理は口元を押さえる。

それに通は心配し血の海の中駆け寄り由理を支えた。


―――暗転。

気付けばそこは自分の部屋だった。

家族の写真と手元には無尽刀槻と酒吞童子から奪取した刎鬼。

由理はガバッと起き上がって無尽刀槻を抜く。

刀は誰かが拭いたのか綺麗な刀身をたなびかせていた。

ふぅ……と溜め息をつくのも束の間あちらこちらが痛むのを確認し

そして傍に護衛の歩いてくる音を確認すると


『起きた。着替えるから外で待ってて。

 ……通、あなたも。』


妖気が全く隠せていない透明人間はそっと身を現し分かりました、と

一言呟くと妖気と身体ごとそこからいなくなる。

閉められた襖の中着替えをし、始めあの時着ていた戦闘服が血のりも

洗われた状態で畳んであるのを見てどうやら数日間寝ていたことを自覚する。

カレンダーや時計は集中力の邪魔だと物心ついたときから置いていない。

だが正直無くてもよく気にせず、だがしっかりと規則的な日常を送れている。

由理は袴に似た着物のような服に着替えると

そのまま襖を開けて酒吞童子のところへ向かい部下らに告げると、

刀の手入れ道具と二本の刀を手に酒吞童子の所へ向かった。


―――と今までのことを由理は思い出しながら

刀の表、鎺元はばきもとから峰にかけて打粉をかけ

ムラなく軽くポンポンと叩いていく。

刀の裏をかけていく辺りで酒吞童子からある疑問を言われる。


『……先の話だが躍起になっている間に折れたと言ったが

 ならばその刀は何なのだ?

 お前がここに運ばれてきたときに一緒に持っていた刀だぞ?』


『さっきも言ったけどこれは私の愛用の刀だよ。

 あのとき使った刀は折れちゃったから途中でこの刀に持ち替えたの。

 やっぱ普段使い慣れてるやつの方が良いね』


そうか……と納得させた由理は拭い紙で刀の表と裏とを綺麗に拭いていく。


(途中から使いだした……ことにしておこう)


由理は今の話を少し折り曲げた状態で話している。

刀を鞘に一度収めながら油塗紙を畳み油をつけ刀を抜き刀棟の方から

丁寧に油を塗っていく。


―――由理自身あの戦闘をすべてこの無尽刀槻ですべてケリを

つけたのだがそれだと後世に残る黒歴史や自分の過去に、

自分自身がまるで化け物のようだと思えた。

結果的に由理は途中で刀を持ち替えたと酒吞童子に釈明した。

正直酒吞童子から伝わる話は他の妖怪らに多く伝わる。

その方が自分自身があの会合での夜討ち中終始ずっと"笑っていた"

などという噂を流されたら困ると思ったのが

この話の改ざんに繋がっているのだが……何せ誰も知らない。

通だけが知っているのだろうが多分そんな訳ないと疑っているか

もしくは黙っているだろう。

……もし囁かれればそのときは奴らと同じ、"壊す者"と同じだ。


『さて、ひと段落ついたかな?』


『うん。ついたよ』


では…と話して自分の今後つまり自分自身が陰陽師の次期総大将と

嫁ぐことになる話を酒吞童子は話し始める。

由理は目釘を打った刀を鞘にしまうとその話を聞き入る。

それは今後を左右するものだから―――







―――気付けばすっかり夕方になりつつあった。

明日は人と会う約束をしているのに由理は一日を無駄にした気持ちで

いっぱいだった。起き上がってあちこち痛まないのを確認すると

そのまま起き上がって服を脱ぎ始める。

すべてが露わになった状態で無尽刀槻を眺める。


―――どうしてあのとき笑顔だったの?


心の中の私がそんなことを言った気がする。

だがその返事を今の私は笑いながら答える。


「だってあの妖怪ごみ達私を愚弄したんだよ?

負けたくせに粋がっちゃってさ…」


―――そうじゃないでしょ?


そうじゃない。

愚弄したから?馬鹿にしたから?負けたのに文句を言うから?

ううん。全部違う、全部全部そんな消しカスでも消せるような

ものじゃない。


―――じゃああのとき笑顔だったのは?


笑顔は嬉しいから作るもの。

でもどうして?愚弄したやつを、馬鹿にしたやつを懲らしめたからでもなく

いっちょ前に自分の力を誇示させたわけでもない。

じゃああのときの笑顔は……達成?


―――そうでしょう?あなたはあの時からそう。


「そうだったね。

 あのときお母さんを殺されてからずっとそう。

 私は自分の居場所を破壊されるのがただ……怖い、いや。

 嫌いだから。」



―――それにアイツに復讐してない。


「うん。そうだね。

 まず終わらせないと何か為さないと何か情報を掴まないと

 何人か始末しないとこんなの終わらないよね。」


―――復讐したら?


「……したら?あぁ……そのときはみーんな殺すよ。

 今まで散々私のテリトリーを踏み歩いてきた奴ら

 みんな!!!みんな殺してやるんだ……えへへ……お母さんお父さん

 喜ぶかなぁ?喜ぶよね。だってあのとき総大将を討ちかけたのも

 私だもんね……♪」


あのとき―――酒吞童子が総大将として名を連ねる前の総大将。

私のお父さんとどこかの誰かさん(笑)を殺したアイツ。

毒盛っても他の誰かに飲まれちゃうから殺そうとしたけど駄目だったし、

まぁそのときに奪われたものとかいっぱいあるけど酒吞童子が来てくれて

助かったよ。お陰で私に情けをかけてくれた酒吞童子が私を養子に

迎い入れてくれた……!まぁお父さんのお陰もあるから本当に感謝だったけど。





あれ?心の中の私は言わないの?お母さん(笑)は?って。


―――だって再婚した義理のついでなんて意見いらないでしょ?


そうだね。

それもそうだ。

あんなついで、死んでも痛くはない。

でも正直私の親類はみんな戦争で死んじゃって私一人だ。

あーあ……やっぱりこれもアイツのせいだよね。

なら慈悲はないよ、絶対殺すから。

~~♪~~~♪


鼻歌まじりに着替える由理は今まで考えてきたものを

まるで最初から考えていないかのように切り替えて

明日のことを思い浮かべた。


「明日はみんなと会えるんだ……楽しみだな♪」

次回以降からついに第1章後半へと物語は動き出します。お楽しみに(^^♪

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