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僕と妖怪少女と常日頃 Re:salvation  作者: 工藤将太
第2章【陰陽道所属の世界】
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第2章28話 「白昼夢 香山由理(Part.2)」

私事ですが過去の話(=回想)に回想を重ねたらこんなことになるんですね。


次期総大将候補選に選ばれた少年がまさか女性だったとは

誰もが驚きそして由理はその一部の参加者の怒りを買ったまま

次期総大将候補として名を連ねた。

現総大将、酒吞童子を前に由理は刀を片手に

その背後には警備の者らが6人配置されていた。

酒吞童子は胡坐をかいてはいるが由理は正座し目を瞑っていた。

次期総大将候補選は候補が選ばれただけでは終わらない。

選ばれたのち現総大将自らとの盃を交わすことでこれが完了する。

仲介役の酒吞童子の部下が酒吞童子に盃を満たしそれを

酒吞童子自らが由理に手渡す。

だが由理は手渡された盃を見ることなく目を瞑ったまま耳を立てる。

ササッと背の奥、警備の者らが一番聞き取りやすい葉が風で揺れる音。

普段では決して耳を傾けないであろう音に由理は注視していた。

サーッと流れる音に誰かの声…声は由理の傍で流れているであろうに

由理はその声よりも音の方が遥かに聞き取れていた。

風で葉が揺れ木の枝が横や縦に縦横無尽に揺れて擦れ

土や石がコロコロとぶつかり土煙を上がったのを目を瞑ったまま

由理は感覚的に感じそしてその刹那に明瞭に聞き取れた音に対し

呼吸をするように自然にかつ滑らかに右手側に置いた刀を抜き

鞘を素早く左手で抜き取りかかる時間が秒に満ちない中

剣先は確かにその音を立てた人物の首元に届いていた。

由理以外の者らが風圧で押される中首元に突き立てられた本人、

つまりは警備の者に化けた妖怪は固まる。

由理の口は見えずただただ鬼とも猫ともつかない殺気だった目で

その者を睨み続けていた。


『ひっ……!』


突き立てられた妖怪が怯えるとその拍子に抜こうとしていたと

思われる隠し刀をゴトッと落とす。

由理は目をチラリと下に向ける。だがそれも数秒以下ですぐに

右手で構える刀身を左手でその者の首元に押し付けつつ

血がすぅっと垂れたところで由理は口を開ける。


『次期総大将候補選は盃を交わすまで続くと言うが

 まさにこのことか。

 …暗殺、にしては方法が些か古典的ではあったな。

 ……女だから古典的なやり方でも十分だと踏んだか?』


生憎だが…と言って由理は目をしっかり見つめ続け

刀を首元につけたままその妖怪を諭す。

由理は周りの目が明らかに異様な雰囲気ではない、ということを

知りつつ時間が押しているような感覚に見舞われた。

次期総大将候補選は盃を酌み交わすまで終わらない…


(ああ…そうか。だから一向に候補が選ばれないのか)


次期総大将候補選は誰でも立候補が可能で

選ばれなかった者は何も死罪になる訳ではない。

次の機会だって臨めるし挑める。

そう、次の機会がたとえ遅かろうが早かろうが

来れば自分の番に回ってくる。

そこでまさかとは思ったが本当に"暗殺"しようと

してくる者がいるとは思わなかった。

先に言ったがこの次期総大将候補選は誰でも立候補可能、

男女の差別もない至ってシンプルで公平なものだ。

だが今まで女性の候補が無かったのは女性は古くから戦闘について

の知識が男性よりも少ないことに一理ある。

だからこそ由理じぶんが候補に名を連ねたのが

ずっと参加している者らにとっては不都合でかつ

新参者でかつ女性というところが癪に障ったのだろう。


(……となれば相手は一人ではない、か)


取り敢えずは酒を飲まねばな、と由理は考えをまとめる。

そしてニコッと妖怪の首元から刀を離すと刀の柄の頭をその妖怪の

股間目掛けて振り下ろす。ブチッ…という音に阿鼻叫喚が

部屋中に木霊するなか由理は刀を下げながら鞘の中にしまいつつ

茫然とする妖怪らに一瞥しながら酒吞童子から盃をもらい飲む。

飲み終えると酒吞童子は苦笑しながら由理にしか聞こえないような

音量でボソッとやり過ぎるなよと呟くと由理もまた同じように

ええ、と頷き胸から取り出した懐紙で包み懐中に収めると酒吞童子は告げる。


『以上を以って次期総大将候補は香山由理とする。

 ついては次期総大将候補としての権利をすべて香山由理に移譲し

 私が総大将から身を退いたときには正式に総大将として

 我が位を継いでもらうものとする!異論は認めぬ!!』


こうして由理は阿鼻叫喚が木霊する部屋の中、

次期総大将候補として選ばれるのであった。







『それで…問題はひと段落ついたか?』


『うん、まぁ…みんな腰抜けどもばっかだったけど。』


次期総大将候補選が終わりまた盃杯も終わり…

場は酒吞童子の部屋にて移る。

部屋には酒吞童子と由理の2人で2人とも胡坐をかいて座り

酒吞童子は頬杖をつきながら由理は刀を磨きながら話していた。

由理の磨く刀は酒吞童子から文字通り譲り受けた妖刀、"刎鬼"だった。

そしてもう一本の刀、計2本の刀を携え磨いているというような状態だった。


『そこにあるもう一つの刀は…あのとき玉を砕いた刀か?』


『え―ああ、あれは躍起になってるやつら潰してたら折れたわ。

 まぁどうせ妖刀でもなんでもない刀だったしどちらでも良いんだけどね。』


由理は刀を磨きながら思い出す。

次期総大将候補選時、由理は確かに妖刀があれば思い通りに事が進むと

考えていた。だがある仮説を立てたときその考えは拭われた。

その仮説こそ"ここで候補者が決まっても意味がないのでは?"と

いうものだった。総大将が持つ妖刀、"刎鬼"について知っている者は

少なからずいる。そんなことは由理でも分かった。

じゃあもしも…刎鬼を使い次期総大将候補選で暴れればどうなる?

次期総大将候補選は至ってシンプル、勝ち残った一名が次期総大将候補だ。

つまり下手に過度な力を見せびらかすようにして戦えば

余分な参加者の余分な火力が自分に集中してしまうことになる。

弱いものから潰した方が手っ取り早いかもしれないが強大な力を振るっている

やつが同じ土俵に立っているなら何としても排除したいと思うのは

ごく普通なことだ。となれば…妖刀は使えないという結論に至る。

結果的に由理はごく何でもない普通の刀を使用した。

だが代わりに由理はある稽古を続けた。

元々剣術の心得がある彼女は確かに並大抵の剣士よりも強い。

だがここでもう一つの仮説、参加者の中に妖刀を扱うものがいるのでは?

と考えた。自分の考えとまさか同じ考えに至ってるなんて、とは

由理は考えもしない。だってそれなら最強は一人で十分なのだから。


と…長くなったが由理は結局仮面を被り女性であることを隠したまま

真剣一本で参加者3桁を超える次期総大将候補選を目隠しした状態で挑んだ。

由理がやった行動は単純で目隠し、という稽古とその後の戦闘だった。

いついかなる時でも戦闘を侮辱したりまたハンデを背負う戦闘者を前に

したとき少なからず相手は力を一瞬抜く。

由理はその一瞬一瞬すべてを見抜きそして残り由理ともう一人の参加者

になったところで目隠しを外し妖刀を取り出したのだった。


(…昔、お母さんに聞いたことがある。

 力とは前に出すものではない、強大であればあるほど隠した方が良い。

 過度な力は周囲に余計な期待と切望と憎しみを持たせると。そして―――)


『―――出すときは一瞬で良い。

 力などただの道具を持ち上げる燃料でしかないのだから。』


由理は妖刀で最後の一人を斬ったときそう呟き斬る。

同時に最後の一人の斬撃は由理の仮面をたたっ斬りそして…盃杯へと

場面は移る。盃杯を交わした後由理は未だ阿鼻叫喚しているものに対して

最後の一人が奪った刀を二本目の刃としてその者に突きつけた。


『おい…誰の指示だ?』


『ひっ…あぐぐ…あぁぁ……』


だが答えれる様子でもなく潰れ血と尿が滲み出ている妖怪に対し

由理は悪びれる様子もなく容赦なく刃をその者の股間に向けて


『そんなに痛いならもう斬り落とそうか?なァ?』


由理は刃を下に向けた状態で呟く。

目は真剣でただ一人として見ているわけでもない。

どこかに転がっている石ころを見るような蔑んだ憐みの目で

早く言った方が身のためだ、と由理は刀を音を鳴らすように動かす。


『今私を攻撃するってことは要は乗っ取りで

 奇襲で暗殺で反逆なんだよなぁ…

 で、30秒やるから言って♪

 言わなかったらこのまま下に突き通すから』


『え―』


30秒と言われ困惑する玉を潰された妖怪と、

次期総大将であり女性である由理に困惑する警備の者達。

だが由理の目の気は確かだった。

ゆっくりとカウントダウンを始める。

だがゆっくりすぎるため刃を向けられた妖怪は言わないようにしていたが

途中から早くなったがために言い訳をし始める。

だが目は空虚で口だけが動き後ろに後ずさりしようとするも

後ろは壁で逃げ場がない。それどころか固まって動けずにいた。

カウントダウンが10秒になったところで妖怪はその者の名前を白状し

また同時に所属"チーム"なるものを呟いた。

それにお暇しようとしていた酒吞童子はん?と思い立ち上がる。


『まさか…わしも篭絡させる気でいたか。

 ふむ……わしが出向けば容易いことだがそれでは…』


『そう、ならそのチームってどこにあるの?』


由理の言葉に警備の者らが一同にえっ…と呟く。

由理は何か悪いことでも言った…?とキョトンとしているので

酒吞童子はそれに対して誤解を解く。


『多分こやつらが組んでいるチームというのはいわば会合だ。

 同盟…と呼んでもいいが一つの目標を立てそこに向かっていくという

 集団みたいなものだ。』


『え、じゃあチームってのはここに?』


その応えにうんうんと頷く警備の者らと酒吞童子に

由理はなんだぁ…と呟き刃をそのまま下に突き刺す。

下はただの布切れの部分を当てたがそれでも妖怪の者は気絶し倒れる。

由理はじゃあ潰しましょうか、呟いた。



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