第2章27話 「白昼夢 香山由理(Part.1)」
遅くなりました!申し訳ありません…旨の内は活動報告にて追記という形で報告しておきます!
本編に関係のない話ですが他の作品もちょっとばかし投稿が遅れそうです!
慶が源代と電話を取っている最中寝室では由理が寝息を
立てて寝ている…というのであったが本来はよく寝付けなかった。
由理は昼間の光が少し戸から漏れた暗い和室の中で
虚空を見つめ思い出し考える。それはここに来るまでのこと、
由理自身が総大将に選ばれることになった出来事のこと……
由理は元々総大将に選ばれることはなかった妖怪、屍。
香山家はそんな屍らの一族で由理はその跡取り娘だった。
所属する反百鬼夜行は百鬼夜行の信条から外れた妖怪たちが作った組織で
総大将にはその反百鬼夜行(=反鬼)の中で
随一強い者がなるという決まりがあった。
たとえ出身が泥にまみれた奴隷のような者でも力が強ければ大将になれる
という絶対不変のルールだ。
だがそれでは毎日混乱の日々が続くかもしれないと考えた第一代目総大将は
総大将候補を選定しそれらを戦わせ
最後に生き残った一名を次期総大将にするという決まりを設け
そしてこれは"次期総大将候補選"と呼ばれた。
由理はこの次期総大将候補選に挑戦することになるのだが
その経緯はやや複雑なものであった。
由理の両親が殺されたのは第六代目総大将のときである。
このときの総大将は自らの戦力を自分の力であると過信し過ぎていた。
そして無謀にも陰陽道と手を結んだ百鬼夜行に進軍する。
しかし結果は惨敗。
隊を率いていた由理の父は総大将の怒りを買い殺され
父を庇った母も殺された。
由理は父の友人であった酒呑童子が父の代わりに親権を持ち生き延びた。
幼き由理を引き取った酒呑童子はそれから数か月後、
狂った大将を殺し第七代目総大将となりそして10年の歳月が経った後でも
酒呑童子は第七代目総大将であり続けた。
そして―――由理が18歳になった頃その話は持ち上がる。
場所は酒吞童子の部屋、ある和室の一角で起こった。
『はぁ?私が結婚?』
『女子が使っていい言葉じゃないが…うーむ…。』
酒呑童子本人から持ち出された話は婚約だった。
由理はもう18で良い歳になる。世帯を持っても良い話だと
酒呑童子は考えたからである。だがそれはいっちょ前の話で本質は違った。
話の本当の筋を酒呑童子は語る。
『百鬼夜行と陰陽道は既に通じてあるが今日、陰陽道から申し出があった。
―――同盟関係を結ぼうという申し出だ。
なお百鬼夜行と反鬼は存じてあるとは思うが停戦状態…
まぁ戦いの指示も何もしないがそれでもその状態であることは分かると思う。
そこでだが陰陽道の申し出を受けようかと思う。』
へぇと着物を羽織り茶色の長髪を下ろした状態で
右の碧眼を瞑り左の緑眼で酒呑童子に気の抜けた声で返事をする。
酒呑童子はそんな由理に赤と茶色の混ざった瞳で見ながら
無いはずの髪をたくし上げる動作をしながら呟く。
『だがその申し出は…婚約関係だった。』
『…はぁ?それで?』
由理の目の形が変わりジト目で酒呑童子を見つめると
酒呑童子はやはりこういう反応が来たか…と考えながら
由理に話を始める。
『私自身は良い、だがこれを話したとき由理はどう反応するのか
と伺ったのだよ。別にこれは受けなくてもいい。
そのときはまた違う人選をするつもりだ。』
『いや、私が怒ったのはそこじゃなくて。
なんで私?陰陽道の主人は男…ならまぁ私が選ばれるのは……
いやいや!!!』
言いたいことがまとまらないのか苦悶するように悩みながら
由理は酒吞童子に告げる。
『なんで私?!
私は正当な後継者じゃないわ。
香山家の跡取り娘で…いや今は酒吞様が
私の親代わりなのは分かる。それでもだからと言って…!』
考えがまとまらないが言いたいことだけはあった。
つまり由理の今の立場は反鬼の現総大将、
酒吞童子が親権を持った子供というものだ。
だが正当な手続きをしていないため婚姻関係になることが事実上できない。
※親権を持っているだけで次期総大将候補に選ばれていないため
酒吞童子と由理の関係は義理の親子というものだった。
そのため総大将自ら次期総大将候補に選ぶことは出来ない。
だが酒吞童子はこの際良いだろうと勝手にこの縁談を承諾する。
結果的に由理は次期総大将候補選に出なくてはいけなくなってしまった。
その事実を受け止めきれない由理に酒吞童子はやや苦笑いで
『すまん!だが百鬼夜行の次期総大将候補はもう婚約者がおるみたいでな。
縁談で同盟関係を結べるとすれば陰陽道と反鬼しかなかったのだ。
なに、反鬼と百鬼は確かに今でもいがみ合ってはいるがそれは陰陽道も
同じだ。なあに!これで落ち着けば良いこと―――』
『良いこと?!!どうして酒吞様は戦うことに関しては誰よりも強いのに
頭で勝負することは誰よりも馬鹿なんですか?!!!!
つまり私が次期総大将候補選で勝ち残って
縁談を承諾するっていう前提ですよね?!
じゃあもし私が負けて違う妖怪が勝った場合はどうなるか分かってますよね?!』
それに応えられない酒吞童子の姿は由理よりも小さく見えた。
由理は知っていた。次期総大将候補選において男女の差別はなくとも
女性が介入したという事実はまだ一度もないということに。
もしも自分が次期総大将候補選に出て負けたとしよう。
そのときは妖怪(♂)が陰陽道の総大将(♂)と縁談をするということになる。
誰がそんなBLを求めるか。……いやアリかもしれないと由理は一人妄想をする。
だが真面目な話もしそうなれば陰陽道をからかったとして同盟関係は最悪破棄され
以前と同じ状況になる。百鬼と陰陽道から反鬼は戦いを申し出られるという
最悪な状況になるだろう。
それは避けたい。実に避けたい状況になる。
由理はチラッと横目で酒吞童子を見る。
先の威厳はどこにやら…縮こまった姿勢で由理を伺っている。
イライラさせた目でギロっと見つめ返すとすぐに
隠れるように縮こまった様子になったのを見て
由理ははぁと溜め息をつかせながら考える。
―――百鬼夜行と手を組むのも反鬼としては不味くはない。
何せ百鬼には同期である銀次郎や美世らがいる。
だが酒吞童子様が手を組むと表面上約束したのは陰陽道だ。
百鬼夜行であれば同種、つまり妖怪らがいるのにどうして妖怪らを
退治する人間、陰陽師と同盟を組んだか。
由理の悩みは激化を増す一方だった。
だがしばらく考えた後由理は何かを悟ったような顔で座り酒吞童子になおり
その前に向くとでは…と始めてその言葉を紡ぐ。
『―――決めました。良いでしょう。』
『…!ということは……縁談話を受けてくれるのか…?』
はい、しかし条件があります。と由理は
酒吞童子と話す和室の一角、その奥に飾られる刀を見つめ呟く。
『そちらの刀…妖刀"刎鬼"をお譲り頂けませんか?
それがあれば次期総大将候補選…すべての参加者は刎ね落とすことができます。』
その顔と声に酒吞童子はびくりと肩を震わせながら
由理の邪心の混ざったような笑みと震えと期待に満ちた声に目を向ける。
飾り刀として今は飾り続けている妖刀"刎鬼"は昔とある陰陽師が鬼を
斬り殺したことで普通の刀が妖刀へと変わったとされるものだった。
妖刀は妖気を纏った刀…妖刀ごとに種類さまざまに効果があるが、
酒吞童子はこれを自分が斬り殺した第六代目総大将から強奪したものだった。
手にした時、酒吞童子は邪悪に満ちた妖気を感じ以後飾り刀として
置いてあるのだが由理がその存在を知っているとは思わなかった。
『確かに…この妖刀であれば参加者すべてを脱落、いや殺せるだろう。
だがそれではこの妖刀の力があったからこその次期総大将候補選になる。
そういう風に解釈してしまえば…』
『酒吞様、私は生れついての反百鬼夜行派です。
反鬼の大義名分は強い者が勝ち上がるというもの。
それに使うものが金であれ権力であれ何であれ力がモノを言う。
ならばその妖刀を貸してはくれませんか。
拝借しそれを使用してもなお正気を保っているならお譲りください。
それではどうですか?
別段、反鬼の名を汚してはいませんよ?』
由理の言葉に確かにそうだな…と渋々納得する酒吞童子に
由理は心の中で感謝を浮かべた笑みを浮かべ表には真面目な表情で酒吞童子に
なおり
『では次期総大将候補選、そして生き残ったのち縁談を受け
もしも正気であると判断されたのち妖刀"刎鬼"をもらいます。
よろしいですね?』
『ああ…分かった。
うむ、まことに助かる。そのために妖刀は渡そう、でも由理
そこまでいきなりどうして解釈が、理解ができた?
その理由はあるのか、あるなら教えてくれ』
『…あると言われればありますよ。
……もしも縁談を受けて陰陽道の殿方の傍に行けるのであれば
いつでも"機"があります。』
き?機会を得るの機?かと酒吞童子は妖刀を由理に立ち上がって
渡しながら見つめる。すると由理はええ、といつもの穏やかな顔で
嘘が一つもないまっ平らな笑顔で呟く。
『機会がいくらでもできます。
酒吞様、私はあなたが誰よりも
今回の縁談について嫌っているのは分かります。
でもそれは私も同じ、酒吞様ほどではありませんが。
今のままで行けば第三者の攻撃で
反鬼が飲み込まれることなど容易いのも知っています。
だから縁談を受けて関係性を保つようにするのだとおっしゃりましたが
私はあくまでもその縁談を別の意味で受けます。』
『別の意味…?』
『ええ。だから嬉しいのです。
だっていつでも機会ができますよ、
機を伺える相手ならですが。』
『まさか…!由理、殺しに―――』
『―――冗談ですよ。では妖刀、拝借しますね。』
酒吞童子が驚いて見た由理の顔は
振り向いてしまったからかよくは見えなかったが
さっきまでとがまったく逆の顔をしていたように見えた。
そしてその後由理は次期総大将候補選に一参加者として
出場し妖刀を携え仮面を被り一見少年の格好で初めてとなる
次期総大将候補選を勝ち抜くことになるのだった。
次回更新は活動報告にて((+_+))




