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僕と妖怪少女と常日頃 Re:salvation  作者: 工藤将太
第2章【陰陽道所属の世界】
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第2章22話 「過去に浸る Part2」

一方で山城慶とクロロン・ヴェールは書庫から出て

帰路のような廊下を歩いていく。

二人は何も言葉を交わさないままそのままゆっくりと歩いている。

無音の沈黙が一種のBGMになったところで先にそれを破ったのは慶だった。

寝間着とはいえ袴姿の慶は同じようにメイドの格好ではない、

私服…とここでは言うがそんな格好をしていた。


「それ…私服か?」


「え…ああ、はい。

 メイド姿を基本的にしていますが

 夜間の休憩時にはこのような格好を…。

 すみません、あそこで呼ばれるとは思わなかったので

 こんな惨めな格好を…」


すみませんと謝るがそれは別に良いと慶は宥める。

格好としては私服とはいえ

白黒のモノトーン調の制服のような格好だった。

どこかで見たことのある制服だなと

そう感じた慶はさらに質問する。


「それって何かの衣装なのか?制服みたいだなって思ってたけど」


「…!!……中々お詳しいですね。

 その通りです、これは元々私がアナスタシオス…さま…いや、

 アナスタシオスに仕えていた時の制服です。」


途中で言い直して制服だということを

認めたクロに慶は少なからず動揺しつつ

固まる。だが昔みたいにそれを訊いて

怒鳴るような思いはこみ上げて来なかった。


「そ、そうか…そうなんだな。

 ちなみに訊くがどうして制服を…?」


「―誓いです。」


「え?」


誓い?何の?そう慶が思わず?マークを浮かべていると

それにクロは微笑しながら答える。


「私とあの人…アナスタシオスとの誓いです。

 私が勝手にそうしていますが私が次に彼に会った時に

 ちゃんと向き合ってこの姿で戦うためです。

 多分少なからず動揺するでしょうしね、そこを狙って私は…」


急に足を止めたクロは

そう虚空に左手で何かを握りしめる。

ナイフ…か?そう考える慶にクロは

小さく"殺す"と呟いた気がした。

それに気づかないように慶はクロの肩を叩く。


「なんにせよ、あんたも色々考えてるってことか。

 それなら期待に応えなくちゃな。」


慶は歩いてそう後ろのクロに言う。

クロはハッとしたように少し俯き加減でついてくる。

そしてすみませんと呟くのを慶はまたあははと笑いながら宥める。


「良いよ、別に。

 そうだよなぁ…頑張ってるのは自分だけじゃないもんな。

 ありがとう、クロロン・ヴェール」


後ろを振り向き手を差し伸ばす。

するとクロは先の俯きの状態のまま顔を少し赤らめて


「はい、こちらこそ。

 山城さま…」


「さまって何か歯がゆいな…慶で良い。」


握り返した手に笑う慶にクロもまた笑い合う。


「私もクロで良いです。こちらこそ

 今日はありがとうございました。」


見送った後の扉に手をかけ元の世界へと足を運ぶ。

慶は一つの確かな決めたことを

胸に狭間の世界から出たのだった。







慶が無事に世界から出たのを確認するとクロはその足で

ツキネのもとへ行こうとしていた。


(そうだよなぁ…頑張ってるのは自分だけじゃないもんな。)


慶の言われたことに対してまったくその通りだと

感じて自分自身の思いで行動をしようとツキネにその決心の旨を伝えるためだった。

クロの出生は幸せなものではない。

物心ついたときには人身売買として売られる隷属の身。

それをアリス・シャルロッテと当時のアナスタシオスに救われ以来は

アナスタシオスに忠義を尽くすことを決めた奉仕役となっていた。

奉仕役とはいえ言わばメイドのような存在。

日々着実に業務をこなすなかクロとアナスタシオスの関係は増し

ある意味ではアナスタシオスの良き理解者となっていた。

だがある日を境にアナスタシオスは変わる。

変わったあとのアナスタシオスは日々命を追い求めるようになった。

その理由は良き理解者であった自分でさえ知ることは無かった。

だが奉仕の身に付けくわえられたものこそ今の自分を模るものだった。

今でも忘れられないあの一言。


―――誰か殺してこい


「……私もあの日を境に変わったんだっけ。」


奉仕役は一人で良い。

私はアナスタシオスに仕えていた人たちの命を

すべてアナスタシオス本人に捧げた。

理由はただ一つの忠義を尽くすため。

そうしてアナスタシオスの忠実なメイドとして

殺しの命を刈り取る右腕として。

花を咲かせる立場から摘む立場へ。

私は気付けば赤い血の中にその身を投じていた。

今も感じるあの手の感覚。

手からこぼれ落ちていく命一つ一つの重みを今私は感じている。

遅すぎた後悔だけれどそれがある意味今の私を作っている。


病室へと訪れた私は私を血の中から掬い上げてくれたその人の

隣に座って見る。


―――あなたはどうして人を殺すのですか。


目の前の人物がいつの日かの自分に言い放ったその言葉。

どうしてと言われてもと思ったが確かに今考えればそうなのだろう。

私は殺しすぎたいのちに何も思っていないとなれば嘘になる。


―――そうするしかなかったのなら、あなたは哀れな人に従ったのですね。


哀れ…うん、確かに今思えばそうなんだろう。

アナスタシオス(あのひと)は哀れでクロロン(わたし)も憐れだ。

でもそれでも分かったことがある。

だがその分かるは時間的に遅すぎたなとクロは考える。


「やっぱり死ねば良かったんでしょうか、あのとき。

 アナスタシオス様にも裏切られた私をディオミス様はどうして…

 どうして斬らなかったんですか?」


そう眠る今の主君に問う。

だが答えは返ってこない。

今も眠りにつく主君にクロは溜め息をついて立ち上がって病室から出る。

パッとしないモヤモヤな感情を引きづってクロはそのまま歩く。

はやくツキネ様を見つけて自分の考えを言おう。

そう思ったのだった。


次の投稿時間は19時もしくは21時予定です。

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