第2章20話 「重荷」
知り合いからよく分からない設定が…等ご指摘をいただきました。
なので設定集を作りました('ω')
※2018.8.4追記
雲雀は本をめくる。
白い何も見えない虚ろな目で本を手でなぞりながら。
その光景を幼きツキネは?顔で見ている。
『雲雀、見えるの?』
『ええ、目では見えないけれどなぞれば分かるわ』
彼女には生まれつき視力が無い。
ただその代償に生まれたときから持っている力が二つあった。
ひとつは触れたものの情報が頭に直接伝わる力、
もうひとつは一度入れた情報は取り出すまで残る力。
彼女はその二つを使い分けて今もなお生きている。
だがツキネには分からなかった。
『それじゃ触れられないものは分からないの?』
『ええ。だから私は第三者がどんな感情でどんな身振りで
どんなことをするのかは分からないわ。
もしかしたら私を殺そうとするかもしれないし、
犯そうとするのかも。でも見えないし触れられないから分からない。
あなたもそうよ、ツキネ』
『―ぇ?』
小さくつぶやいた驚きの声に雲雀はツキネを撫でる。
見えない目で虚空を怖いものとせず優しく触れる。
『あなたがこの先に挑むものも見えないもの。
到底不確かなものよ、すれ違いざまに殺されるかもしれないし
もしかしたら事故で死んでしまうかもしれない。
でもね?それは仕方の無いことなのよ』
雲雀は続けて話す。
ツキネにはよく分からなかった。
確かにこの先に待ち構える脅威がどれほどなものかもしれない。
でもそんな運命に抗うことも不確かなものだろうか、と。
反論したツキネに雲雀は
『正しい、確かに正しい……けれどそれでも不確かなものよ?
運命は何も一つじゃない。様々に分かれてまるで木の根のように
広がるの。根が長ければ長いほど運命は幾重にも広がるわ。
問題は広がった先に何があるか。でもその何かは分からない。
だからこそ不確定なのよ。』
『でもそれは自分一人と考えた場合じゃない?』
『確かにそうね。……じゃあツキネ?』
んぅ?と咄嗟の質問に言葉が詰まりながらそう答えるツキネに
雲雀は笑いながら目を細めて呟く。
『もしもそれらすべて知ってる人物がいたら
ツキネはどうする?』
・
「雲雀…お前は何を…」
「何って、企みって……そういうのは無いわよ?」
ヘラヘラと笑う雲雀の顔はそれは狂気に満ちた
満面の笑みだった。
まるで小馬鹿にするような嘲るような謎の顔。
でも一貫して"笑"の気持ちは見られた。
またそしてその笑みが指すものについても気づいていた。
「あんた…人の痛みについて考えたことあるか…?」
「無いわよ?で、それが回答?」
キッパリと答えさらっと流す雲雀の回答に慶の怒りは頂点に
達しそうになっていた。
雲雀は他者の痛みを知らない。
だからこそ傷に塩を塗ることも火に油を注ぐことも躊躇しない。
そんな生き方…そんな価値観…
「―言っておくけど人の価値観なんてその人のモノだから
だからこうだとか、だったらなんだとかとか聞かないわよ?
それにさっきも言ったと思うけど私は自分が不幸だとは
一度も思ったことが無い。これが私の生き方、これが私。
あなたは?他人のために自分を犠牲するのがあなたの生き方?
自己犠牲の心とか心底笑っちゃうわ。」
「―なっ…てめぇっ?!!」
「自分をヒーローだと物語の主人公だと思うのはやめなさいな。
もしもそうだと思うならどうしてこんなところで
すぐに回答を出せないのかしら。
あなたは一著前に好きな人を守ってこれた?
ここに来るまでのあなたがどういう生き方をしてきたかは分からないけど
過去を引き摺るのはもうやめなさい。
あなたはあなたの今があるんだから。
良いじゃない?"目"があるだけマシよ」
雲雀はそう本を閉じる。
そして立ち上がり杖を手に―せずに本棚へ本を仕舞う。
慶の横にいるクロは気づいていないせいか止めようとはしていない。
だが散々雲雀が罵倒し責めた相手は目の前で起こっているために
注視して雲雀を見ていた。
雲雀は本棚でふぅとため息をつくと後ろを振り向かずに呟く。
「敵が後ろを向いているのにあなたは攻撃しないのね。
へたれ大将さん(笑)?」
そこでクロは立ち上がっている事実に気づき駆け寄ろうとしたところで
その横の慶が一目散に駆けて雲雀に近づき本棚を壁に
いつ抜いたか分からない速さで白い抜き身の刀身を雲雀の首に当てる。
それに驚きもたじろきもしない雲雀は慶を素直に褒める。
「ひゅー…やればできるじゃん。
ねぇ、自己犠牲の心ってどういうもの?
本当にそれで良いの?
あなたの信条はそんな辺鄙なもので良いの?」
「……良い訳ないだろ…?
でも俺の信条なんて決断も含めて俺が決めることだ。
何でもかんでも好き勝手言いやがって……あんたは自分の命が惜しく
ないのか?」
「ええ。いつかは死ぬもの。」
そうニコッと笑う雲雀に慶は虫唾が走る。
そして雲雀は反してどうでも良いかのように区切る。
「で、私の質問なんだけれど。」
「ツキネ、か。」
「…分かるじゃないの。
本当はね、君に話そうとしたことがあったから
逆に呼ぼうとしていたところなんだけど来てくれたから
手間が省けたよ。
で、あとは君から出された質問ももう自力で
解いたんだし…君ってばやっぱり頭の回転良いねぇ」
は?となった慶にいつの間にか離れた雲雀は続ける。
「確かにエクリクシィ・ホープの言うとおり
介入を妨害せず運命に身を任せてみるのも良い。
でもそれは違うと君は踏んだ。
そして運命に身を委ねるか抗うか。
君はこの質問を私にぶつけた訳だけど…結局君自身が勝手に
自己解決したんじゃないかな?」
あ…と言葉を失う慶に雲雀は笑いながら
そしてもう一つと付け加える。
「これは私からの助言だが、
別に選択肢は二つしかないと言ってるわけではないんだよ。
勝手に二つしかないと思い込んでいるだけでね。
さあて君からの質疑応答は終わったことだし、
今度は私の番だ。
席についてくれると嬉しいかな、山城くん」
そうさっきと同じ席に着く雲雀に慶は渋々席につく。
座ると同じように今度は泣かずに横に席につくクロを横目に
慶は雲雀を見る。
話は雲雀の話す本題へと移った。
「さて…遠回りになったけれど今回ここに
クロを招いて君を来させた理由だけれど…
正直私は互いに干渉しない人物だ。
何を言いたいのか?と顔で言ってるから
どういうことかを言わせてもらうとね…
つまり私は互いの戦う・奪う理由を知っている。
そしてその私を山城くん、君はどう思うのか試させてもらった。
その理由次第では君に私の考えを説こうとも思ったからね。」
手をひらひらさせて笑う目に光のない雲雀は虚空を見つめながら
だがしっかりと慶とクロを見つめるように鋭い眼差しで見つめた。
雲雀は慶の悩みを簡単に論破した。
初めから分かっていたかのように、なんだそんなことかと軽くあしらった。
そしてあしらってどうしてそんな風に接するのかその理由を話した。
慶はそんな意見を右往左往させる雲雀を
未だ信じられる、信じれるという眼差しでは見ず
疑念が混ざった瞳と顔つきで答える。
「で、試した結果は?」
「上々だ!この上ない回答だよ。
そこでその回答に私からの解答を授けよう、理由は説く。
そしてクロをどうして交えるのかその理由もね。」
雲雀はふふっと笑う。
その笑みは先ほど浮かべた笑みとほぼまったく同じ。
それに慶は反応する。
「あんたは自分の命が惜しくないと言った時
今と同じような笑みを浮かべた。
何の話をする気だ?」
「そうカツカツするなよ若造。
わくわくしないか?
今まで見れなかった物語の真実が見れるということに。
それよりもまずは断りを入れておこう。
まあその断りが先の理由であるのだけれどね?」
と雲雀は椅子に座ったまま会釈するように頭を下げる。
そして試した理由を告げる。
「試した理由は本当に君たちが信じられるかを検証したかったからだ。
これはツキネとも相談してね、クロ。
君にも話すことにしようということにしたんだよ。」
「わたし…ですか?」
「そう。山城くんも気になるだろ?
どうして"アナスタシオスが命を追い求めるのか"
という理由をさ。」
その言葉にその質問にクロと慶は同時に目を見開く。
それは両者がここに来た後にどうしても
知りたかったことの一つだったからだ。
どうしてアナスタシオスが命を追い求めるのか。
先ほど雲雀はこう言った。
―私は互いの戦う・奪う理由を知っている。
「さっきの戦う、奪うって…
アナスタシオスと、ツキネのことか…?」
「ああ。そうだ。
アナスタシオスがどうして命を奪うのか、
またどうしてツキネがそれに立ち向かうのか。
深く掘り下げるのはまた今度にするとして。
取り敢えず今日は切り上げて明日話すとするがどうかな?
今話すかい?」
目は細く、穏やかな眼差しで見つめる雲雀を見て我に返る慶。
クロもまたハッと我に返った様子だった。
ここの空間の時間は止まっているが身体的時間は進むために
老いと言ったものは来るのだそう。
つまりは…えっと……
「山城くん、君いま失礼なこと考えた?」
「ええ?!いやそんなことは…」
つまりは身体的な疲労感は来てしまう。
ツキネは定期的にここに来て間もないころ
俺に話していた…はずだ。
はずなのはそんなに覚えてないからなのだが。
だがまあツキネが寝ていたのが今も記憶に新しいしそうなのだろう。
「なら明日、お邪魔させていただきます。」
姿勢を直して言い放ち立ち上がる。
クロもまたそれでは雲雀さま…と立ち上がるのを雲雀自身が止める。
そのまま促すように雲雀はクロに慶に見送りをさせるように
二人を書庫から追い出したのだった。
追い出すときの俯いた雲雀の表情は書庫の明かりが少なくなったせいか
慶は見ることができなかった。
狭間の世界の時間設定は"その世界の時間という概念が止まっている"ということを表しています。
特に深い設定は設けていませんが要は、歳は取るということです。(漢字合ってるかな??)
狭間の世界では朝昼夜といった時間は進みません。
ですがその中にいる人物らの時間は進んでおり着実に成長しています。
ということは登場キャラの寿命は…?
詳しくは設定集にて載せる予定です。
次に続きます。




