第2章16話 「掲げた難題」
陰陽師として生きそして同盟を組むために
元々敵として対峙していた反百鬼夜行派の頭領の娘、香山由理と
婚姻関係となって数か月が過ぎようとしていた。
本来は一か月ということだったが結果的に
互いの関係は円満になりつつある。
それに…この期間が短すぎると由理の方からお願いがあり
そのまま期間を延長していったのである。
遂には前回の会議にて"俺が偉い"みたいに風潮をかましていた
関東支部の麻黒がこの事態に激怒。
他の支部の方々やまた自分も円満になりつつあるし
争いごとに発展していない分
良いのでは?という平和的感情に流されつつあり……
「―結果的に言えばその麻黒ってやつは懲戒処分。
今のところこれ以外に主だったもんは動いてないよ。
で…そっちのほうはどうなってんの?エクリクシィさん」
「こちらはまぁ…調査は進みつつありますよ。
一番の収穫はアナスタシオスの目的が判明したというのも
ありますし…ってあれ?山城さん?どうかしました?」
遠くをぼーっと見つめる俺を諭すエクリクシィに対し俺は悪いと呟き
何を話していたのかを訊き返す。案の定ため息混じりにエクリクシィは
「平和ボケするのも良いですがこの問題はツキネさんに任せられたものでしょう?
だったらちゃんと責務は果たさないと色々困りごとに発展しますよ?
ええと…では本題に戻って…アナスタシオスの目的が判明したんです。」
コホンと咳をしつつエクリクシィは慶に話し始めた。
アナスタシオス…男であり俺が元いた世界を壊した張本人。
元々は天界出身で不死にも勝る力を持つという人物。
ツキネに会う前に調べておいた情報だが
この世界は三つに区分されている。
(※以下1-10のコピペです)
天界、魔界、常界の三つで平衡世界。
下界は天界魔界の間に属する平衡世界で言う常界を指しています。
三つの玉を三角形に並べたとした場合それぞれ天界、魔界、常界となり
その三つの間が下界となります。
ちなみにその三つの玉が均衡を保つために周りを漂うのが
狭間の世界ということになります。(漂うというよりは玉の周囲)
尚今後紐解いていきますが天界、魔界は下界との接触は出来ても
常界との接触は禁じられています。
とまあ世界設定について軽くは話を掘り下げたところで
そのアナスタシオスの目的についてだが…
「奴の目的は命を収集するということが分かりました。
アナスタシオスと以前仲間だったという人物に話を訊けまして…
どうやら命を収集して他の何かに役立てようとするみたいなんです。
自分が命を落とせばかえってその収集の範囲は広がりつつあるみたいで…
山城さんあなたには一つ僕からの頼みを聴いて欲しいんです。」
「―いつアナスタシオスがスキルを使ったか割り出す、だろ?」
「…ツキネさんから聞きましたか。
でもそれではないんです」
そうエクリクシィは続ける。
慶はその返しに驚きを隠せずにはいるが
「ツキネさんからあなたは別の世界からこの世界に来たと聞きました。
運命が少し違う同じようで違う世界からと。
そこで山城さんに質問があります。
前いた世界であなたはどんな最期を見届けましたか?」
エクリクシィの質問にどうしてそんなことを?と思いながらも
慶は話を始める。
アナスタシオスの介入で反百鬼夜行派と百鬼夜行派との争いが
より一層増し沢山の妖怪たちが命を落とした。
陰陽師もそれに気づきこの二勢力に争いでぶつかり合う。
この現状に同じ妖怪が戦っては自分たちに未来が無いと気付いた
総大将ぬらりひょんは百鬼夜行を反百鬼も混ぜ統合する。
だがアナスタシオスの介入は続き内乱が起き百鬼夜行は壊滅寸前に追い込まれ
陰陽師がそこに戦争を仕掛け百鬼夜行は壊滅した。
慶は話し終えるが考えることだけはそのまま継続している。
そしてある答えに辿り着いた。
だがまさにエクリクシィも同じ回答をお願い事として慶に話し始めていた。
「そうですか。ならばこの世界も大きな干渉はせず
アナスタシオスがどう介入しそう賽を振るうのか。
見届けてくれはしませんか?」
「…っ?!お前……それって…
俺にこの世界も諦めろって言いたいのか?!」
要はつまり慶が元いた世界はアナスタシオスの介入で
百鬼夜行が壊滅の一途を辿った。
ではこの世界は―?
この世界のアナスタシオスはどう介入しどのような結果を出すのか。
元いた世界のすべてを知る慶に二度もそれをしろと
目の前の天使はそう言いたいのだ。
「諦めろとは言いません。
あくまで建前上です。
それでどう転がるのかを見届けてほしいと言っているんです。」
「同じことじゃねぇか…
…それでそっちは何か分かるのかよ」
その疑問にエクリクシィは分からないと
否定を表す言葉を口にしてから
「アナスタシオスの介入がどのようなものなのか
一貫性はあるのかなどは分かりません。
あるなら百鬼夜行を潰すでしょう。
陰陽師がどうなるかは分かりません。
……山城さんは運命をどのようなものだと思いますか?
私は一つの大樹だと思っています。
元々人間や生物は生まれた時から闇を抱えている、破壊を目論んだりなどは
考えられないようになっているんです。
見て聞いて触って嗅いで味わってそれから
樹の根のように考えが強固なものに
なっていきます。そしてその強固な考えと経験から
枝という行動が出るんだと思います。
しかし行き過ぎた行動や考えは自分自身を脆くしたり
相手から悪い目で見られるようになります。
大きく場所を取る大樹なら最悪伐採もあり得ますし。
大樹はもともと大きいわけでもありません。
小さな芽が大きく育っていってそれで一本の樹となるのです。」
「一本の樹は分かった。
だがその樹が何だって言うんだ?」
「山城さんはどうしてこの場所に住んでいるんですか?」
「は?」
率直な感想にエクリクシィは微笑しながら続ける。
「元々世界はさっき言った植物と言う生命が大半を占めていたんだと思います。
私が言いたいことはその植物を狩り上に立つ者がいたということです。
あなたがたが一つ二つの大樹や木々であるならアナスタシオスはそれを狩る者。
邪魔な場所にあるからそれを計画的に狩っていく。
一つの樹だとしても多くあれば運命は絡み合います。
そして絡み合った運命は強固なものとなりまた掻き分けることが
難しくなるんです。
……運命は混ざり合うもの。
どう決断しどう羽を伸ばすかで生死もその先の運命も変わる。
運命に一貫性なんていうのは無いんですよ。
でも根本的な考えは変わりません。」
「大体何を言いたいのか分かってきた気がするよ。
つまりアナスタシオスはこの世界に生まれたわけではなく
この世界に降り立ったものだった。
どう転ぶかはランダムだとしてもやろうとしていることは同じ。
三つの勢力を前にどう判断し潰すのか。」
「そう…そして山城さん。
あなたにはアナスタシオスがどうして三つの勢力を知ったのか
その経緯を調べてほしいんです。
それが分かればこの世界に降り立った時、
どこで初めて常界という世界で
スキルを使ったのか分かります。
そして別の世界でそのスキルを使う前の
アナスタシオスを討伐して欲しいんです。
そうすれば脅威は無くなるかと。」
「……ああ。そうだな。
でも俺にはその他にもやることが出来そうだ。」
え、と呟くエクリクシィに慶は呟いた。
アナスタシオスという脅威が去っても三つの勢力がぶつかることに
変わりはない。この世界をただ見つめて終わるだけじゃ意味がない。
ならば他にもやれることを探そう。
それこそ
「三つの勢力を一切の戦争という解決をなしに統合する。
統合すればもしもアナスタシオスが討伐し損ねてもぶつかれる。
決めたぜエクリクシィ。
俺のこの常界に対する目標。
そのためにも俺はこの世界も"諦めない"!」
そう言い終えるとなんだか恥ずかしいなと顔を少し赤らめる
慶にエクリクシィは笑いそしてなんだよ
と突っ込む慶に笑いかける。
「あなたはどうしても楽な道には転がらないんですね。
自分から自然に立ち向かうように
大きな困難に立ち向かうとは。」
そうじゃないと人生楽しくねぇだろ!と慶は恥ずかしそうに話した。
それにエクリクシィは旧友を慶に当てはめながらそうですねと呟く。
するとエクリクシィは握手を慶に求める。
「頑張りましょう」
「ああ!」
そうして一つの大きな困難を前にした目標を慶は立ち上げたのだった。




