第2章14話 「三者会合」
反鬼総大将の娘、香山由理と
陰陽道総大将の息子、山城慶との婚約関係は
主に風の噂として広まっていった。
だがこれを受け三者関係の反鬼、陰陽道、百鬼の中の
未だに因縁の敵や復讐といった差別や偏見を持つ者の間では
あまり好ましいものではなく無効にするべきだという願いの訴えも起きていた。
そしてこれを何より山城源代は恐れていた。
息子である慶は人が変わったように周囲の者をちゃんと見ようとしている。
だがある意味それが仇となってしまったのだ。
その結果不満や裏切られてという負の感情が関係の中に渦巻いている。
源代はこれを受けても意向は変えないということを心に決めていた。
今日、三者総大将を介しての話し合いが行われる。
源代はその意向を話すためにもと準備をしていた。
そして何より。
(これが起こったことで慶に何か厄災が降りかからねばいいのだが…)
小姓含め内部事情を詳しく知っているものには
何処の屋敷にいるかなどは教えないように、知られてしまったのなら
口封じを行えと命令をしておいてはいる。
だがそれがすべて上手くいくというのは無いだろう。
どこか隙が生じればそこから不安の種と言うのは一気に開花し始める。
慶たちが綺麗な花だとしたら不安の種は虫や雑草と言ったもの。
手入れこそしなければならないが、慶がどこまで強くてもこの事態を
乗り越えるのは到底簡単なことではない。
むしろ数十年生きたものでしか乗り越えることはできない。
源代はそう息子のことを優先的には考えるが
それよりも最悪な事態の方を考えていた。
『山城様、準備が整え終わりました。』
「ああ、今行く。」
会合に集まったのは三者の総大将だ。
百鬼夜行の総大将、ぬらりひょん
反百鬼夜行の総大将、酒呑童子
そして陰陽道の総大将、山城源代である。
三人は部下を近くには置いてはいるのだろうがその姿は確認が取れない。
これから始まる議題に三つの角が揃うのだ。
周囲の警戒を一切怠ろうとは思ってもいない。
だが大将の邪魔もしてはならないと姿を消しているのだ。
源代が席に着くと反鬼大将の酒呑童子はにやりと笑い話し始めた。
「遅かったではないか、山城の倅よ。」
「今は大将なのでな、倅は私の息子に当てはまる。
間違っては困る。それで"酒呑み"はもう一杯やってるのかね?」
「源代、そちが遅いからでの。わしも"酒呑み"と一杯酌み交わしておったわ。」
酒吞童子はこの場の席では"酒呑み"と呼ばれていた。
意味もしかりもう既に日本酒を手にしている。
自分こそ準備が忙しかったもののもうすでに二人は到着していたようだった。
だがそれはそれだ。
今日交わすのは慶とその相手、香山由理との間の関係のことだった。
たったこれだけとはならない。
この関係が良好のまま行けば三者同盟も夢ではないに等しいからである。
「では始めるとして…私の息子、慶と香山家の娘、香山由理との婚姻関係のことだが
"酒呑み"とぬらりひょん、二人は事情を知っておるな?」
「ああ…若いのがうるさくてしゃあないからなぁ…
よく知っている。で、山城はこれに乗じてどうしたいのかね?」
「無論何もしない、だ。関係を断つ気はない。
"酒呑み"はこれで良いか?」
良いも何もと酒吞童子はもう一杯と盃に酒を入れながら話す。
源代を含め三人は意見に物申すということはしなかった。
そしてその後の関係もより良いものにしていきたいと、
酒は入るが気持ちは入らない口調とトーンで喋る。
ぬらりひょんも同じ意見だった。
源代はそうか、とだけ呟きでは…と語ることのなかった
もう一つの議題について話し始める。
「二人とも、部下を下がらせてくれ。
これから話すことは部下に知られたくはない。
だからこそここで会合を開かねばならないと思ったのだよ。」
もう一つの議論、それは今後の三者との関係の強固としなければ
ならなくなるような、そんな重要な議論だった。
それこそイギリス支部所属の例の男による話だった。
「死者が生き返ったという情報は二人は耳にしているか?」
「死者とな?鬼の蹄でも使い蘇らせたかえ?」
ぬらりひょんがそう茶化すが真剣なまなざしで
山城を睨んだのは酒吞童子だった。
ぬらりひょんもその目でやれやれと
言いたくなるように話を聞き始めた。
その話こそ慶が追っているアナスタシオスのことだ。
名前は伏せて息子、慶はそう二人にも
この情報を通してくれとのことだった。
『何か情報が分かったら父さん、俺に全部話してくれ。
包み隠すことなく、全部だ。』
慶にそう言われたことを源代は思い出し話を進めた。
どうして慶がこのことを知っているのか、そしてその内容が
どうしてそこまで重要なのかは分からない。
だが息子が知りたいのなら力になるべきだとそう思い話すが
結局得られなかったが今後こういう会合をまたやるときに
諜報員等に張らせ調べ上げる…と今回の会合は幕を閉じるのであった。
最後の方の区切り方に若干戸惑いながら14話はこれにて。次回に続きます。




