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僕と妖怪少女と常日頃 Re:salvation  作者: 工藤将太
第1章【百鬼夜行所属の世界】
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第1章43話 「夢に願った女」

慶と銀次郎との闘いの数時間前にも物語は動いていました。

まったく動かなかったあの少女が静かに行動を開始します。

少女は夢を見る。

いつもとは違った夢を。

何かおかしいことをしたわけじゃない。

しくじったわけでもない。

だがどこからバレたのかそれとも

変装された人物であったからか。

だが柚子は?柚子は特に何をしたというわけじゃない。

それに慶の実妹でもあった。

ならば殺されるようなことは…

それに反鬼は同盟以来誰も殺さないことを条件に動いていた。

なのに勝手に濡れ衣を被せて裏切者だとかで

殺し犯し始めた。

ああまた外が騒がしい。

一発誰かを殺してやろうかしら?

そのほうが平等性を高められるもの。

そして襖を開けるがどうやらどこかへ行くようだ。

戦力外は外へ外へ追いやられる。

私は今後どう演じどう動こうかしら?

そう考えながらぴしゃりと閉めようとしたとき

彼女はその襖の前に現れていた。


「まったく物騒なことを考えるよね…」


「きゃーっ!勝手に頭の中を見ないでください!

 さとりさん!」


「他人に物騒だって言われるくらいのことを

 思ってるほうがどうだと思うけど?香山さん?」


すると香山由理は目は笑わないまま

ニヤッと身長の低いさとりに対してしゃがみながら

首元を両手で掴む動作をする。

それに対してさとりは素早い動きで反応するが

始めから分かってたかのように香山はさとりの首を右手で掴むと

床に叩き落とした。


「なめないで欲しいなぁ~これでも反鬼では

 黒鳥さんの次に強かったんだから~わかりやすく言うと……

 反百鬼夜行次期総大将、二番候補かな?」


「このまま……やってた…ら孕子が…来ちゃう…んだけど?」


すると香山の手は緩まりそして演技をするかのように

いっけね!と手を猫のようにして頭を軽めに叩きながら


「きゃーっ!孕子ちゃんの前ではこぉんな姿!

 見せられないよ…ね?」


香山の目が赤色に光りながらさとりを楽し気に

ゴミを見るような死んだ魚の目で睨む。


「けほっ…けほっ…まあ確かに見せられない

 どころではないだろうね…」


へらへらニコニコ

笑う香山に対しさとりは恐怖と異常を感じる。

ただ感じただけで何も行動は起こさない。

起こせば何をしたか何をするのか分かったものではないからだ。


「どうして…あなたは名乗り出なかったの?

 自分の上司ともあろう人やその部下…」


「つまりは"お仲間の前で堂々と裏切った理由"を知りたいの?」


そうまだニッコリと笑う香山はさとりの思っていたことを

簡単にまとめそれを自問自答する。

だが答えはすらっと彼女自身が口にする。


「仲間ってさいつの時間、時代、一瞬で作れるでしょう?

 そして恋人だって付添人だって演技次第で何人も作れるし

 何股もできる!さ・と・りちゃんっ?♪

 私に元々から仲間なんていないんだよー

 いるのは保身のために動くチェスの駒。

 私は無敵不敗のクイーン。

 女王は捕らえた敵だって仲間にできるのよ?

 策略次第でも何でも。

 私の身体を使ってでも何でも、

 持ってるすべてを投げ出しても私は生きたいのよ。

 だから見捨てた。」


「それは…あまりにも…!」


極論過ぎる。

絶望も希望も通り越した異常な何か。

異常な何か…それをさとりは頭の中に巡らせた。

さとりは香山由理という女性に会って

頭の中を見て昏倒した記憶も体験もある。

さとりが理解できない異常な領域の中を香山由理は生きている。

そう感じそう思うことで今までの悩み、

もやもやした何かを頭から片付けていた。

だが今やっとさとりは理解する。


(今の総大将…いや総大将の何かをしたモノよりも

 彼女は、彼女の存在は恐ろしすぎる…)


彼女の今までの言動つまりは山城慶のことや

百鬼夜行の中での監視状態。

反百鬼夜行派での活動も含めすべて、

香山由理という人格がやってきたことはすべてが演技なのだ。


「あ、そうだ。

 "あまりにもそれは極論じゃない"て思ったりするなら

 それは間違いだよ?ほうら!

 せ・い・ぞ・ん・ほ・ん・の・う!

 在る様々な環境に適応しながら生きて生物が子孫を残すっていうアレ。

 私はそれをやっているの。

 適応するためには別にどんな方法だって良いじゃん?

 どうせ他人の運命とか断ち切っちゃってもそれしか

 方法がないなら実行するべきだよ!

 ーそうやって私も妖怪も人間も陰陽師も

 殺して屠って生きてきたんだからさ!!!」


そういきなり強気な口調になる香山の目には

赤い灯火が映ったような気をさとりは感じた。

事実はぁはぁと息を切らし汗を流しながら

香山自身の右目が赤く灯っている。

左目はグリーンの色のままさとりを睨んでいる。

これは妖怪か何かに変身したときに見る目。

今まさに香山由理は人間ではない何かになっている。

だがそれを香山自身は何も言わない。

そのとき聞きなれた声が外から聞こえてきた。


『さとりちゃん?ここにいるの?』


「あ…孕子…」


さとりがそう呟くと香山はスッと目をつむり

右目を元のブルーの目に戻すと孕子のほうを向く。

きゃっ!と驚き尻餅をつく孕子に香山は近寄り

大丈夫?と声をかけ手を伸ばす。

だがすぐに孕子自身が起き上がる。


「だっ、大丈夫ですっ!」


「あ…そう?ごめんね…ケガとか無い?」


心配する声に対し孕子はそそくさと、さとりの方に行く。

さとりはその依然とした態度にきょとんとするが

その理由はすぐに分かった。


「さとりちゃん!早く避難しないと!急いでよもうっ!」


「避難…?」


「え、香山さん知らないんですか?

 避難ですよ!私たちは慶ちゃんみたいに力がないから…

 戦いが終わるまで避難するんです!…知ってました?」


すると香山は自分自身の予想が当たったのか

嬉しそうな反面、孕子には切ない顔を見せた。

自分に声がかからなかったということは避難ではなく

戦える力があると見込まれたのだろう、そう孕子に告げると

そうですか…と呟き、


「じゃあ頑張ってくださいね!」


「ええ、良いお土産を持ってこれるくらい頑張るわ!」


そして孕子がさとりを連れて出ていこうとしたとき

香山がスッとさとりを引き留める。

孕子がえっ?と驚いているが香山はお構いなしのようだった。


「行く前に一つ疑問があってね。

 さとりちゃん、どうして私のところに来たの?」


「…さあ?忘れちゃいました!

 また会えるといいですね。」


それだけ言って引き留める腕を半ば強引に離し

孕子に行こう!とだけ呟くとそのまま

?マークのままの孕子を連れて走って立ち去る。

曲がり角を曲がり背中が見えなくなり

足音もだいぶ遠のいたのを聞いて香山は襖を閉める。

そして棚の襖を開け敷布団の奥に置いてある刀と

お面を取り出すと鼻歌を歌いながらいくつもの

小刀を手に慶のような黒コートに近い袴の中に仕込み着替える。


(ああ…何年ぶりだロ…この感じぃ…柄を握るだけで

 あのときの光景が目に浮かぶ……。)


恍惚とした表情で自身が持つ刃紋が斑模様の刀身、

無尽刀槻むじんとうつき》を手にまた顔には獅子口の能面を。

香山由理という淑女もまた動き出していた。



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