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僕と妖怪少女と常日頃 Re:salvation  作者: 工藤将太
第1章【百鬼夜行所属の世界】
41/93

第1章41話 「狂人との対峙(Part.2)」

遂に第0章も終盤、前回から引き続き戦闘回です

終盤ということでいつもと同じかそれ以上に長く書いています。

かなりの話数になりましたが楽しんで頂ければ幸いです。

『…ねぇ君は何ていうの?』


あの時の優しい声。

私はあの時を思い出し耳を傾ける。

薄い少し茶色く汚れた長い白髪が風で

揺れるのを確かめながら私は再度助けられたことを、

出会ったことを感謝する。

あのとき助けられていなければ

あのとき見捨てられていれば

あのとき狐様の気紛れがなかったら。

今の私はいない。

無論娘も生まれていない。

すべては解放されたときのあの日から。


『さ…さしゃ』


『紗々ちゃん…へぇ…素敵な名前!』


狐の耳が揺れる。

紗々は耳を傾けていた。

その時の記憶を思い出を。


『紗々ちゃん…あなたは生きなくてはいけない。

でもその自由は他人に奪われてしまっている。

もしも…私や私の知り合いに会えてもこの世界に

もう二度と帰れなくなる代わりに自由を

手に入れられるとしたらあなたはどうする?』


『じゆう…になれるの?』


『ええ』


狐様は笑う。

無邪気なほほえみで笑わせてくれた。

笑顔にしてくれた。


『なら!じゆうを掴みたい!』


狐様に私は願った。

もう二度とあの世界にいかないことを条件に

永遠に回り続ける歯車の中にいたいと。

私は自ら懇願した。

そして…今―!

あと数歩手前まで来た自由はあの男に邪魔されている。

狐様を騙し何度も何度もやり直しさせたあの忌々しい男。

復讐の機会は今まさに与えられていた。







(まったく戦いのときに私は何を考えているのかね…)


繰り出されるあの男の部下の攻撃。

防御は一切しないので隙を見て攻撃する。

あの男、アナスタシオスは【洗脳】できる。

紗々、ディオミスと同じあの世界の出身者だから

あるものとはいえどいささか分が悪い。

紗々は仮面の下で唇を噛みしめながらあの男の隙を伺う。

【洗脳】はあの男に敗北を味わったものだけが対象だ。

わたしは…こんな男になんか負けない。


「はああぁぁぁぁぁああ!!!!!」


次々と群がる【洗脳】されたもの達をディオミスから、

ツキネから持たされた刀とは違う刀で立ち向かう。

これは―



≪紗々≫



あの人がくれた大事なもの。

青龍刀ではない、わたしが愛した者の形見。



≪お前は前だけを見ていれば良い≫



あの人が残してくれた願い



≪後ろは俺がやる。≫



あの人が残してくれた想い



≪だから泣くな、涙はもう見せなくていい≫



紗々は無我の境地で相手を次々と葬っていく。

あの日の行いを正すためか。

それとも自分の間違いを証明するためか。

分からない。

そう紗々は考える。

頭では考えていてもそうならないことが

生きる日常の中でわたしはずっと足掻いていた。

ゴールも目的地も分からない場所で

延々と泣いて送る日々を助け出してくれた神様と

ハクガに感謝を込めて一撃一撃を我がものとする。

絶対に折れない心の刃で紗々は目の前の

相手に一度の退けも取らさず貫いていく。

その光景にディオミスもアナスタシオスも圧倒されていた。


(何かの覚悟が…ついたようですね。)


ディオミスはそう考えアナスタシオスの作る

陣形を次々と壊し紗々が通れるように緩めていく。

そして数分が経った庭には血にまみれた仮面を被った

紗々がアナスタシオスを捉えていた。

矛先はその男を睨んでいる。

アナスタシオスは憑依したのが老体でありながらも

素早い動きで死んだ妖怪たちの刀を抜き取り屋根の上で構える。

両者は同時に足を前に出す。

そして駆け抜け最初の一撃が空中でぶつかり合う。

すさまじい衝撃で地面に波ができるほど

両者は本気の眼をしている、そうディオミスは感じていた。

ディオミスはもう動けない。

動けばこの先主に負担がかかってしまう。

そのことを分かっているからこそ手を出さないし

紗々も何も突っ込みを入れない。

仮面を被っている最中ディオミスはそれを告げていた。


『一人で行けますか?』


『大丈夫よ、ツキネも流石に危ないでしょうしね。」


だが考えていることは決して応援ではない。

そうディオミスは自身の行動と理想を悔やんでいた。


(ツキネ様…この世界線もやはり"終焉"を

 迎えてしまうのでしょうか…)


ディオミスはこの世界線にいることが

もうすぐでできなくなることを

頭の片隅に入れ動けない身体で必死に二人の戦闘を見る。

紗々とアナスタシオスの刀の交わり合いは激しさを帯びている。

アクロバティックなまでの刀のぶつけ合い。

両者ともども傷は負っていなくとも疲れだけは見せていた。

空中で刀のぶつけ合う衝撃と屋根の上でのジャンプで跳び

両者は一歩の隙もとらない。

だがやはり先に隙を見せたのはアナスタシオスの方だった。


「うぐっ…?!」


と呻き声と共によろめき屋根へと墜落する。

吐血をしながら刀を杖代わりにするようにして

立ち上がるが紗々は容赦しない。

紺色の袴のような出で立ちでその男を腹を踏みつぶし

屋根からその下の部屋へと貫通させる。

そして託された青龍刀で立ち上がろうとする男の右手首を切断、

今更まんざらでもない叫び声を男が上げるが

紗々はその声に耳を貸さない。

容赦なく斬りにかかろうと刀を振り上げる。

その隙を狙って。


「はぁあああああ―」


「……そうか…お前…あのときの"奴隷"か」


「―っ!」


と一瞬だが身が強張り身体が固まってしまう。

それを横目に男は斬りかかろうとする紗々の腹を押し蹴り、

紗々はその衝撃で再び庭へと後ろへ突き飛ばされる。

立ち上がろうとする紗々はいつの間にか

仮面が取れていることに気付く。

慌てて仮面を探すがその仮面は男が持っていた。


「おい、"S13番"なんでここにいる?

あの後消えたって聞いてたけどまさか…

ここにいるとは思わなかったぜ?」


「はぁ…はぁ………っ!」


紗々は答えない。

昔の自分の名前を語られたところで

それは昔の自分であり今の私ではない。

そう理解しているし信じているからこそ

何度でも立ち上がることができる。

紗々はそう自分に言い聞かせると刀を握る。


「しかも…あのときの青龍刀の持ち主ってことは…。

 自分のパートナーを斬り殺した厄介者じゃねぇか?」


「黙れ!!!」


キィンッ!と刀がまたぶつかり合う。

だがアナスタシオスは目を見開きながらニタァと笑う。


「その刀で"博雅オレ"を斬った感想はどうだった~?」


「黙れ!!!」


またぶつかり合う刀の先に悪魔は微笑んでいる。


「あのとき【憑依】した"峰崎博雅"の記憶は楽しかったぜ?

 お前を一番に愛してるだってな!」


「黙れ黙れ黙れ!!!」


「黙らねぇよ!!!【憑依】した俺という"峰崎博雅"という

 一個人をお前は青龍刀それで斬り殺したんだ!

 青龍刀で斬りかかれば当然存在は消える。

 じゃあよ、なんで俺は生きてるんだぁ?」


「!あ…ああ…」


紗々はうなだれる。

斬り殺したのは夫の"峰崎博雅"であり

【憑依】した本体のアナスタシオスではないからだ。

青龍刀を捨てそして嗚咽を吐きながら紗々は泣き始める。

その状況に動けないディオミスは手を差し伸べる。

紗々さんが危ない。

今ここでアナスタシオスの前で敗北を知らせれば

【憑依】の対象となるからだ。

アナスタシオスは満面の笑みで紗々に近づく。


「夫の記憶も見たんだ…次はお前だよなぁ!!!!」


「……ハクガ…助けて……!!」


「まずい!……紗々さ…ん…!!」


アナスタシオスは両手を大きく膨張させ

紗々を取り込もうと覆いかぶさる。

嫌がる紗々の身体に徐々にそれは

入っていくのをアナスタシオスは嬉々としていたが

同時にアナスタシオスは止まる。


「どうして…笑っていやがる」


「【憑依】している途中に…

 足を斬ったらどうなるかしら?」


アナスタシオスは後ずさりしようと

身をよろけるが

紗々の行動は早かった。

持っている青龍刀で自らの両足を斬ると

屋根の上の人物にすべてを託す。


「山城くん!!」


「なっ……?!」


屋根の上の人物。

山城慶は呼ばれるや否や持っていた刀を

ぬらりひょんに向けて落下しながら

真っ二つに斬り殺したのだった。

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