第1章40話 「さらば」
追記:2016.8.25 改行+話の中に一部展開を追加しました。
(そういえば紗々さんはどうしてここに来たんだ?)
美世の部屋へと急ぐ慶はそれを頭で考えていた。
確かに思うところはあった。
峰崎家は美世や慶が思っている以上の派閥になる。
その峰崎家を背負う者が出るとなれば
確かに大きい事態であることは自覚できる。
でも今回は百鬼夜行自らが陰陽道に向かって
攻撃を仕掛けようという魂胆だ。
議会があれば確かに参加するであろう。
だが議会がないまま進軍が総大将
自らの意見で決まっている。
そしてそれに異議は誰も唱えなかった。
…今となってはそれが不思議でならない。
(峰崎家は…異議を出していたか?)
いや。
出すどころか会議に出席してすらいない。
と、なれば。
(こんな事態になるとこを元から知っていた?)
いや、それはないだろう…。
…でもそうだとしたらどうなる?
何かの歯車が合いそうで合わない。
そんな感じを快くは思ってはいないが、
慶はその指摘にミスはないと決定づけていた。
「美世!」
着いた部屋を開けて中にいる少女を見る。
「わっ!…なんだもう~びっくりしたなぁ
どうしたの慶」
と下着姿の美世を見る。
「もう!恥ずかしいよ~!開けたなら閉めて!
で…どうかしたの?」
障子を閉めながら俺は異動の話を振ると
ああ、と美世は呟き
「さっきお母さんが決めたらしくね…?
今朝の様子となんか関わりがあるっぽいんだけど
…それがどうかしたかな?」
「今朝の様子?
…詳しく聞かせてくれないか?」
着替えてる中ごめんなと
言いながら慶は美世の話を聞く。
美世も動きやすい格好に
着替えながら話し始めた。
話によればずっと紗々さんは峰崎家全体が
決めた意見を通すために
百鬼夜行本部に来たと言っていたそうだ。
「慶は山城家とかからも何も
言われてないでしょう?
まあ私もなんだけどさ。
でもなんか言ってたみたいなんだ。
山城家と峰崎家は一蓮托生、
共にして危機に立ち向かうとか?
なんかこれから起こることを
もう既に予言してたかのようにしてたから
話したんだよお母さんに。
そしたら“お前は神様を信じるか”だって。
信じないって言ったら
“なら言っても分からんだろ”ってさ。
……こんな話だったけどなんか助かることある?」
「…ああ。大いに…あったよ……!
美世!ありがとう!!大好きだ!」
と美世を抱きしめると“してやられた感”と
言いながら、応えて抱きしめてくれた。
そのまま着替え終わると美世は振り向き
唇にキスをする。
「えっへへへ~♪
次はこんな恰好じゃなくてちゃんとした正装でね。」
「ああ。
…気をつけてな。」
と俺も唇と手の甲にキスをして抱きしめ合う。
(ごめんな…美世。)
そう思う慶に対して美世はすべてを
分かっている風で振る舞う。
そして美世や孕子たちは
百鬼夜行本部から離脱するのであった。
離脱直前、孕子は俺に再び会い頬にキスをする。
(行ってきますのキス…かな?)
そう言う孕子に対して照れながら
髪をくしゃくしゃに撫でると
嬉しそうに笑った。
キスされた頬撫でながら慶はため息をつく。
それは嬉しみも混ざったものだった。
(バレたらこわいな…あとで。)
「…」
と覚が俺を見る。
覚は…心が読める。
俺の考えも気持ちもわかる。
だからこそ何も言わないのは知っていた。
「…山城くん。」
「ん?」
「……どうか―」
と覚が俺の耳元でそれを呟く。
だがそれは自分にとっては聞き入れない"願い"だった。
「…そう。じゃあ会えたらあとで。ね?」
―――にならないでね、と覚。
ああ、と頷く俺は彼女らと別れ、
謎が渦巻く百鬼夜行本部へと再び足を踏み入れる。
強い風が…吹いた気がした。
俺は一刻もはやく紗々さんを
見つけるために足を早めた。
(真意を、答えを…!)
長い長い夜が始まる。
そろそろラストを迎える第0章です!
というか次回で第0章がラストです。
次回もお楽しみに!




