第1章38話 「慶と銀次郎(中)」
『もう…置いてかないでよ…母さん…』
少年は泣いていた。
理不尽に虐げられた現実と過去に
理不尽を持って怯えている。
それを白銀の狐は訝しみながら見ていた。
―ねぇねぇ…どうして
(そんなことで?)
―泣いてるの?
『…?…だって恐いから。』
―なんで恐いの?
『僕だけ違うもん。』
―なんだ、それだけか。
(……)
―ならさ僕がなるよ。
『え?』
―僕が友達になるよ、僕の名前は坂崎銀次郎、君の名前は?
・
これは銀次郎の追憶だ。
目覚めた先に見た光景はいつの日かの
真っ白な光景。俺は剣にいた。
剣に封じられた俺の身は氷が解けるように
徐々に解凍するようにして復活する。
そこで見たのは…何かを叫ぶ桃色髪の少女とほぼ鬼になった青年。
そして髪は茶色く濁った女のような男。
男は青年に殺されそうになってでも殺されなくて。
男はそれに怒り狂い刃を青年に突き立てた。
刃は青年が持っていたもの。
そして俺は加速する。
キィィィィィンン!!!!
「残念ながら死ぬのはてめぇのほうだ。
前負けた分お前に返してやる。」
と俺は男を斬りかかるが手ごたえはない。
煙を斬った、そう感じた。
男は笑いながらすぅっと消え失せる。
鬼の蹄の中にはいない。
逃げられたか。
「まったく……無茶させやがって。
鬼の蹄で蘇ったはいいがお前が死んだら
元もこうもねぇだろ?なぁ?慶くん?」
慶に刃を向けながら。
白い銀髪、九尾である俺はそう呟いた。
慶は少し笑っている気がした。
そして俺は慶のポケットから電話を取り出し
刀から見ていた光景を蒸し返すように見様見真似で
電話を掛ける。
「夜叉さまですか?
ご無沙汰しております…はい。
慶と美世の容態…?はぁ、大丈夫です。
慶の方は妖怪に完全になり変わった様子ですし。
ではお願いします。」
と電話を切る。
夜叉さんに連絡して部隊を越させるようにした。
男は生きている。
その情報だけでも大助かりだ。
夜叉さんや他の小規模でもし来た時に
復活されられても後の祭りだ。
そして何かが起きれば見守りそして部隊は無事に到着。
その場で鑑定が行われ二人の安全は保障され
そして帰るのであった。
・
帰宅後、俺はいち早く起きた美世のもとに駆けつける。
そこには妹の坂崎孕子と香山由理の姿もあった。
香山由理は未だ妖怪も自分の正体もわからないまま
自己流の強さを磨いている。
怪我の具合や健康状態から安静状態になるようにと
その流れのまま女子会になった部屋を抜け出し
俺はその娘のところに急いだ。北園詩織のところだ。
当の前の話だが詩織とは慶と美世のように
同棲生活を暮らしパートナー以上の関係であった。
先ほど抱き着いてきた孕子から話は聞いていたので
部屋割は分かっていたのである。
そして俺は詩織と再会。
熱く語り合ってそして熱く求め合った。
そして詩織は突如として百鬼夜行よりいなくなるのであった。
・
過ぎた一か月後に慶は目覚めた。
目覚めた慶の質問に上手くは答えられなかった。
その後香山にも会ったがよく覚えていない。
慰められた気はしたが分からない。
よくよくは理解してない。
その部屋の前で俺は立ち尽くす。
一か月して詩織は帰ってきた。
但し、無傷ではない。
昏睡状態のまま近くの川沿いで見つかったそうだ。
そして今は俺の前の戸の奥にいる。
外傷は酷くもう歩けないほどの足の傷を負っていた。
決心がついてその部屋を開け
横たわる詩織を触る。
手のひらで髪を撫でてそして手を握る。
そして俺は詩織の真意に気付く。
手を開き中にある紙を取り出す。
焼け焦がれたような塵と共に出てきた密告書。
そこには"戦争が始まる。総大将はあの復活する者"
と書かれていた。
多分これまで以上に悩んだ話です。
特に最後どうまとめるか…など。




