第1章28話 「幼き狐と若い鬼(後)」
燃え盛る山に身体が溶岩で覆われた龍が一匹だが強い。
そう思わせるように羽ばたき
辺りを燃やし飛んでいた。
山城慶は走り駆けつけながら困惑した。
あれは…父さんの…………式紙だと直感で思った。
だがなぜ実の娘がいる村に龍を放つ?
なぜだ?
「慶!はやく!!!」
孕子も化け狐になりながらも
走り駆けつけている。
(…………銀次郎!)
胸の中で願いながら俺も龍のもとへ、
天谷柚子のもとへと足を急がせた。
・
村はいつしか燃え盛る龍によって
戦場と化していた。
たまらない悲鳴を叫びながら
炎に包まれる者もいる。
いや自ら炎の中へと絶望とともに
身を投げ出すやつもいた。
「なんで…………いきなり…も…」
そう柚子はその場に腰をぬかす。
(なんで…こんなことに……!!!)
泣きじゃくなりながらも
刀を杖のように支えながら起き上がる。
構えをとった。
これは初めていや、久しぶりにあった
実の父から学んだ流派だ。
静かに刀を抜き、力と体重をすべて
刀の重心へと乗せ素早い連打を突く。
行けっ!!!!
「うぁぁぁぁあああ!!!!」
龍へと1人臨む。
行け、間に合えこの一撃よ!
だが龍はそれをゆらりとかわして炎の渦を
私に浴びせる。
炎が私の服をぼろぼろにして
胸元がはだけた。
だが今の私に恥じらいはない。
例えこの身が爛れようとも
「-…私が……守るんだあぁぁぁぁ!!!!」
刀の重心を1つに込めた突き。
一本矢詰め!!!!
「うわぁぁぁ!!!!」
刀は龍の足元深くへと突き刺さる。
だが龍はそれを足で払い
刀ごと折った。
そして私も吹き飛ばされ
あばら骨が何本か折ったのか。
血を吐きながら立てなくなる。
龍が目の前で赤い目でこちらを睨み炎を
遠慮もせずぶちまける。
熱い。焼ける。-…死ぬ。
「いやっ…………嫌ぁぁぁ!!!!」
誰か!!!
『うぉぉぉぉぉ!!!!』
そのときだった。
黒鳥さんと同じ黒いぼろぼろのフードを着た
男はそこに現れた。
「黒……鳥…さ…ん…?」
『俺をそんなやつと一緒にしないでくれよ。
これでも着て待ってろ。
天谷柚子。』
「あ…なたは…」
『遅れてだって駆け付けてやる。』
コートを脱ぎながらそれは身を現した。
「山城慶。お前の兄だ。」
・
「孕子。柚子を、妹を治癒してくれ。」
「でっでも慶…龍は…」
「アイツは俺1人で充分だ。
天谷…柚子だよな?……刀借りるぜ」
と折れた刀を拾う。
「あ、いやそうだけど…刀は…折れてて…」
「だがまだ使える。
殺傷は無理ともまだ包丁くらいにはなるからな。」
と慶は龍になおった。
そして
「銀次郎…俺に力を、焔を!」
(あいよ)
と声が聞こえた気がした。
そして2つの刀は焔に巻かれた炎剣となり
慶はそれを持って龍へとむかった。
龍は50メートルほど、
大きいが大きいだけでは的を大きく、
当てる面積を大きくさせてるだけに過ぎない!
「これが…銀次郎と俺の2人の力だぁぁぁ!!!」
龍は焔を俺に吐くが代々伝わる流派でそれを防ぐ。
力と体重をすべて刀の重心に乗せて
一点の圧力を、用いた力業だ。
「一点型、五月雨の矢!!!!」
龍の目に2つの刀を刺して貫いた。
龍は村を下敷きにして倒れ
そして紙へと姿を消した。
刀が土へと深く突き刺さり
俺は天を仰ぎながら倒れた。
「終わった……あ、……」
少しよろめき起き上がりながら
天谷柚子と思われる人物が
眉間にしわをよせた状態でこちらを
見ている。
「それ……で…私に、私たちになんの用…?」
「ああ。
龍のことはひとまず置いといて
ちょっと規約を作りたくてここに来たんだ。」
『なに?規約?』
と透明だが、そこにいる。
妖気は隠せていないなにかがそこにいた。
「透明人間って…まぁいいや。
そう。規約。俺があんたらを
百鬼夜行に処分させないためのな。」
処分?!と辺りあちこちから声が
聞こえた。そこにいる透明人間も、
天谷柚子も当然驚いている。
「そう。処分。
規約はこうだ。
1 ここにいる妖怪はすべて百鬼夜行へと入る
2 期限はすべてのことが解決したら。
君達を無傷で解放しよう。
3 不自由な暮らしはさせない。
とまぁこんな感じなんだけどどうかな?」
といったところで罵詈雑言がわんさかと
溢れでたがそれを天谷柚子が止めた。
「……良いだろう。」
ぶわっと声が広がる。
それを静めそして、向かいなおる。
「だが誰かが殺されたら私達はその場で裏切るよ?
良いの、それでも。」
「ああ。」
妹、天谷柚子の救出は
握手をしながらにして終わった。
・
「ここが柚子の部屋だ。
反百鬼夜行派に見つからないように
外から札をつけて閉めることが
出来る仕組みになってる。
まあ一人ではないから。」
と山城慶は俯きながらそう実の妹、
天谷柚子にそう言った。
ある協定のもと俺と柚子は
百鬼夜行と一部の反百鬼夜行派と
の敵対関係を和解させたのだ。
なのだが。
…沈黙してるので俺は立ち上がり
色々説明してから扉に手をかけ出ようとする。
「話は……聞かないの?」
「実際聞きたいけどさっき連絡来てさ。
一部の反百鬼夜行派との抗争が止んだ。」
嬉しそうな顔をした柚子に
俺は冷たく静かに言った。
「嬉しそうな顔するなよ。
止んだ理由は陰陽師が動き出したんだとよ。」
陰陽師。
俺の父の職務だ。
人間や妖怪の妖気を抜いたり封じ込めたりする。
妖怪は妖気を抜かれ過ぎると死んでしまうので
その術を知っている陰陽師は大の敵だ。
それはそれで。
「そのせいで抗争はピタリと止んだわけだから鬼の蹄は使えない。
とはいってももうほとんど終わってるんだけどな。
でも…」
「?」
「俺の友達が、美世がもう身体がもたない。
もうすぐで背中の呪いのやつが目覚める。
だからこそ早急に鬼の蹄で呪いを…」
と手をふりふりと横に振りながら俺は
鬼の蹄と共に峰崎美世の元へと急ごうとしたとき、
そんな時だった。
『急げ!早く!』
柚子の部屋すぐの美世を封じていた部屋の
様子が明らかにおかしくなっていた。
なんだ?
「なっ…何事?」
柚子が言ったすぐそれは起こった。
すさまじい音と振動でそれが分かる。
まさか…⁈
柚子の部屋を開け放ち見たもの。
それは黒く染まった美世であった。
美世の背中からは黒い翼が生え
目の焦点は合わずそのまま飛んでいる、
そんなとこだった。
『来たか鬼の子よ。
願いの森へ来い。そこでこの娘を殺す。』
バサッ!!!!と
黒い羽が舞い美世が目の前から姿をぽつりと消した。
たった数秒の出来事で。
美世は目の前からその存在を消すかのようにして。
俺は走り出した。
鬼の蹄を持ち願いの森への道に足を踏み出していた。
願いの森は迷いの森の反対側。
そう思い妖怪の兵士に止められようが
俺は走り願いの森へと足を急ぎ駆けていた。




