第1章24話 「獅子の構え(後)」
「ほっ………本当に慶なのか…?」
黒いフード、コートそして赤い目。
昔いや銀次郎が亡くなる前に
見た慶はこんな影のような服装は
一度もしなかったし、
それにこんな赤い目なんて…!
こんなの………人間の…山城慶じゃ…!
「はい。でも無駄話はこいつを…
倒してからでっ………!!!」
また鋼と真剣がぶつかり衝撃が
自分自身にもひしひしと伝わる。
俺は一旦下がり目の応急措置に掛かる
が………目はどうも開けてはくれず、
痛みだけがそれを貫く。
-どうせ見れないなら。
俺は手から俺自身の溶岩能力で
そしてそれを目にゆっくりと
左目につけた。
じゅわっ
という焼け溶ける痛み。
「っ………?!!!!」
血をも蒸発させた熱で
左目の出血を塞ぎ、
そして左目自体も焼き
俺は先の衝動を見た。
優勢は慶が取っており
明らかに相手は遅れを取っている。
そして鋼の矢が底を尽きたと思われた瞬間、
留めの一撃が打てる。そうなったのだが。
「はぁ?!やべっ!」
そう慶はそこから身を引く。
一体何が-………
「へへっ………
鋼蜘蛛の実力を見せてやるよ!」
しゅるしゅるしゅる………!
と手から鋼の糸を出すと
それを使って慶の足を固定させる。
そしてそれを真剣で切るも
真剣すらも奪われる。
俺も対抗しようとしたが
力なくその場果て
そして………!
「ちっ………くそっ………!
獅神先輩!返事をっ!」
繭にくるまれそして
俺は身動きが完全に停止した。
・
意識が混濁し失われていくなか
俺はあの時を思い出した。
何も汚れていないあの日々。
慶だってこんなの戦いに参加しない。
銀次郎だって楽しく笑っていた。
美世はイタズラばっかで
恭子は俺に優しく微笑み
孕子は仲良く恭子と美世と手を繋ぎ
詩織は銀次郎の横で顔を赤くした。
由理さんは………俺たちの輪の中に入った。
そんなそんな楽しい日々。
「た……の…しい……たの……し…い
そ…んな……ひ……は…」
「獅神先輩!」
「だ……の……じ…」
「先輩!」
「わ……の……な……」
「大切な妖怪ひとを守るん
じゃなかったんですか!
大切な………恋人を!」
「………………………」
大切な恋人?
あれ?
俺って今何してるの?
今………俺は………
「ふっふはははは!
声も無くなれば死も同然!死ねぇ…!」
そのとき赤黒い炎が周りを包んだ。
炎が焔が渦を巻き乱れ
左目が爛れた状態の獅神結城は
右目が赤く灯火を放ち
その先が鋼蜘蛛であることは
今俺、山城慶は知った。
あの日…………
香山があんなことになって、
銀次郎を失って以来俺は
鬼の半妖(妖怪と人間のハーフ)になった。
そしてそれ以来俺は妖怪の
気配で命そのものである妖気
の探知が出来るようになった。
結果的に言おう。
獅神先輩の…妖気は今……
「半妖から…妖怪に…なった?」
「なっ…………こんなことってぇ…?!」
そのとき俺も鋼蜘蛛同様に見開く。
獅神の左手がどろどろに溶け
そして赤く黒く灯った。
獅神は溶岩を操る獅子の妖怪だった。
つまり…………
本当に目覚めたのだ。
本当の妖怪に目覚めれば
それぞれの特有の属性を持つ。
つまり今回、獅神先輩は焔。
しゅっーと燃え盛る左手を後ろに
回しそれを勢いよく前に
突き出すようにして
掛け走り鋼蜘蛛の前でそれを
突きだした。
「火炎豪連突き(かえんごうれんつき)!!!!!!!」
鋼蜘蛛の防御である
鋼自体何もかもが溶け散り
風圧により吹き飛ぶ。
店の外で這いつくばる
獅神先輩は後ろの俺に
振り向かずに言った。
「慶…………どうせまだ半妖だろ?
手伝え。慶にも帰るべき場所
があるんじゃねぇか?
俺みたいにな。」
「…………あっ…ああ」
俺は凄まじい攻撃で
少し腰を抜かしていたが
落ちた鬼の蹄を拾い上げ
鋼蜘蛛に向き直る。
鋼蜘蛛は俺らに攻撃を
仕掛けるが獅神先輩の熱風で
すべて溶け無意味となってしまう。
「慶…次で終わらせる。
援護を頼む。」
「…はい…………分かりましたよ!」
俺は剣の姿勢をとる。
獅神先輩は先程の攻撃を両手に変え
両手を後ろにそれを
突き上げるようにして前へと走る。
俺も同時に駆け出す。
「……くそっ…くそがぁぁぁぁあああ!!!」
「両手火炎豪連突き!!!!!!!」
「一刀流十八万刃の矢!!!!!!!」
焼け、そして砂となって散る
鋼の銀色の蜘蛛は鬼の蹄に
その命と妖気を吸収された。
後日談。
獅神先輩は
本当の妖怪に目覚めたこと。
そしてその溶岩の一閃の力が
大きく称えられ
晴れて天竜八部衆のもと
幹部として働くことが決まった。
そしてそれからして、
俺は声を掛けなかったが、
「…ふっふふ。仲良いじゃん」
手をそれぞれお互いに繋ぐ。
そんな獅神結城と空理恭子の
姿がそこにはあった。
23話と24話は一緒にまとめることは出来たのですが
それだと4000文字以上となりこれでは読みにくいと感じたため2部に分けました。
ちなみに本来連載していたものも前編後編に分かれていました。




