第1章20話 「内緒話」
山の中の川がそよそよと流れ、
岩場から動物が顔を出す。
子と親が連れをなしてともに動く姿が見られる、
まさに大自然だ。
その山の中の、古びた山小屋…。
彼はそこに居た。
「んっ………!朝か…ふぁあ………眠っ。」
あれから二ヶ月か。
と山城慶はそう思った。
彼には、たった二ヶ月という猶予で
自身の妖怪の力、鬼を抑えなければいけなかった。
そのために二ヶ月もの間、
昼夜問わず寝ずに刀を振るい、
そうして過ごしてきた。ので。
「眠みぃ………ふぁぁ…明日………か。」
明日、油屋と呼ばれる店で夜叉様と会う約束を
二ヶ月前にしたのだ。
それまでに妖怪としての力を磨き、
鬼の力を制御出来なければ
俺は刀を、美世を、銀次郎の意思を失うことになる。
そのために生活してきた二ヶ月でもある。
だから………!
「寝なずに頑張ったのは良いけど………正直眠いな。
まぁどうせ明日何かテストとかやるんだろうし、
寝るか。」
俺はまた小屋に戻ろうとしたとき、
携帯の音が鳴った。
久しぶりに電源をつけた
携帯は78%、圏外と示されていた。
[To 慶へ 見つかった:from 山城源代]
俺は携帯を閉じ寝た。
同時刻、反百鬼夜行本部では
天谷柚子が手紙を読んでいた。
山城源代と書かれているため、
差出人には間違いないだろう。
中身は突拍子もなく期待していたものだ。
―お前には生き別れた兄がいる。
その文を見たときはそれはもう、
イタズラだと思い無視してきたのだが…
それはつい最近のこと。
同僚である吉崎透が
玄関が開いたのに気付きそこに向かうと
猛烈な妖気をまとった人間がいたという。
抗議が長くなるつれ争いが始まるような
勢いになっていったという。
そのとき寝起きの眠い目を擦っている柚子が
玄関先の者と顔を合わせた。
「―…それであのときお父さん?って
言ったわけね?」
「そういうこと―って!
あんた何でここにいるの?!」
吉崎透に向かって柚子はそう言い放った。
「えー?だって俺は透明人間の妖怪だよ?
妖気を隠さない代わりに、透明になれるからさ。
ここにいてもおかしくないじゃん。
それに独り言をぶつぶつと呟いてる時点で心配したからさ。」
「おっ…おう…ありがと。」
少し顔を赤らめた柚子に気付いた透は
にやにやしながら透明になる。
「ぎにゃっ?!」
柚子自身聞いたことない
声を出してしまい口を手で塞ぐも、
透の手によって解かれてしまう。
こんなリア充染みた行為は一切禁止にしているが、
透にとっては関係のないことで、
自身の手でまさぐっていく。
「いい加減に…しろっ!!!!」
ゴスッ
「ぐほっ…!痛いなぁ…顔赤くしているから
イタズラしたくなったじゃん!」
話を一旦もとに戻しましょう!
そしてその後話の末、わかったことは
私天谷柚子には山城慶と呼ばれる兄がいること。
そして山城慶は今、私が敵対している
百鬼夜行の幹部候補とされていること。
……源代…父さんから言われたことは
『会ったときは疑い、そして兄と呼べ。』
「―…それさ、どういう意味なのかな?」
顔にあざや腫れが出来た透は私に言った。
知らないと内心思いつつも
何かが引っ掛かったことは内緒だ。
次の日
夜叉は慶との再会で``あの時´´
と同じくして嬉々していた。
だがそれは酷な再会となった。
一方的な。
筋肉をぶつけむわっと広がる汗が
なんともいえないこの店特有の
何かをかもしだした油屋に夜叉は慶と話す。
「最悪っちゃあ最悪な再会になったな、慶。
二ヶ月何やっていたか聞かせてもらおうか。」
「この二ヶ月は………無休無睡で
剣を振るって…眠いけですけど、
鬼は操れるようになれましたよ。
まぁ、まだ完全変化は試してませんが。」
固いな、と笑って水を飲む。
その後長くにわたる仕事内容や3年間に
何があったのかを話す夜叉に
真剣に慶は耳を傾けていた。
それにしても…と夜叉は慶を見る。
(素早さは尋常ではなかった。
鬼といっても2か月前のあの力…どこまで伸びているか見物だな…)
慶はこの2ヶ月を完全変化がこなせれるよう
いや、平然とした顔でも出来るような訓練をし、
腕を磨いたのだろう。
「山城………いや慶!
話していなかったことがある。」
「………………あ、………はい。」
私は眉を中心に寄せ、首を傾げた。
「どうした?そんな眠い顔して…あ、
2ヶ月寝ていないと言っていたよな?」
「はい………ふぁああ…で、
話していなかったこととは?」
心配しなくとも俺は大丈夫ですよ。
と言った慶に対し私は言った。
「まず、お前はこれに合格したからと言って
好きに反百鬼夜行を討伐出来るわけではない。
私のもと、幹部として働いてもらう。
……眠そうだが聞いてるか?」
「はい。聞いています。」
「そして、もうひとつは坂崎孕子についてだ―…」
眠そうだった目は徐々に開き、
驚きの顔へと変化していった。




