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僕と妖怪少女と常日頃 Re:salvation  作者: 工藤将太
第1章【百鬼夜行所属の世界】
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第1章2話 「宣言」


『放課後に残ってほしい?それを香山さんが?』


『そそ。私づてにね。

 数少ない慶の女友達の一人である私にね』


それは昼休みの時間、詩織は

慶を呼び出しそれを伝えていたところだった。

自分で言うかそれ、と思いながらも口にはしない慶は詩織を見つつ


『お前それ本当なんだろうな……大抵違うだろ。』


だが慶は知っていた。

詩織の言う言伝のほとんどは当の本人が知らない

ドッキリ告白であることを。

だからこそ俺は今の今までまともな返しをできていないんだが…


『お前のせいで俺がホモ疑惑持ってるんだからな?』


『彼女作らない慶が悪いんでしょうが。

 で、美世とうまくやってるの?』


ぎくりと肩を震わせ思わずその震えが言葉にもうつる慶。


『ままままさか…やってるよ!ちゃちゃんと…』


『同じ出身者としてはうまくやってなかった気がするけど?

 ちゃんと言えば良いのに。そういう関係なのは認めるけど

 いい加減慶も言えば良いのにさ。』


出来たら苦労しねぇよと口の中で叫ぶ慶に

多分そういう顔になっていたのだろう、詩織はニヤニヤと笑う。


『とにかく、言伝はしたからね~?

 あと美世は今日勉強で忙しくて言伝の30分後には

 切り上げるそうだから間に合うようにねぇ~』


逃げ足の速い猫のようにササッとその場から立ち去る後ろ姿を見つめつつ

慶はやり場のないやるせない気持ちを噛みしめていた。

そしてその時間。

教室には俺、慶と香山さんしかいないのだが予想的中。

また……か。

誰かが誰かに好意を寄せる、それは別に構わないが俺は

そんなことのためにここに来ているわけじゃ無い。

まぁ、一々残る俺もアホらしいのだが。


「で、何か用かな?香山さん」


「えっ!ああ…えと、えと……あのね山城くん……」


ああ、と応える慶。

億劫に憂鬱な気分だけは隠してすっきりとした真顔で

由理の方向を向く。

怪しまれないためにも詮索されないためにも慶は彼なりの

演技をしていた。そうして開かれる言葉は―


「私と友達になってください!」


「恋愛にはこれっぽっち―――え?友達??」


前者の部分が聞こえていなかったのか由理はうんうんと強く頷く。

すると慶は思わずブッと吹き出す。

それに由理は初めキョトンとしながらも何も変なことは言ってはいない

と気付いた由理は慶に迫る。


「べっ―別に変なこと言ってないじゃないん!」


「いやぁ、ごめんごめん。

 気持ちを踏みにじるようなことはしたくなくて……

 別にこうして話してるんだしもう友達だと思ってたよ。」


と慶は笑いすると由理もまた笑いでもちょっと怒ったように

眉は少し上がっていた。

そうして笑い互いの携帯の連絡先を教え合っていると

先生がふらっと教室に顔を覗かせ下校時間はとっくに過ぎてる。

もうテスト近いんだからさっさと帰れよ?という声に

机の角に座る慶と立って話す由理はそれぞれ頷き

慶は携帯のスイッチを押してポケットに入れながら

机からスッと降りる。


「俺はちょっと待つ用事があるけど、由理さんは帰り?」


「さん付けしなくて良いよ~由理で良い。

 私はまだ慣れないから慶くんって呼ぼうかな。

 うん。これから帰るよ」


「りょーかい。気をつけてな。」


今日はありがとうと笑顔で手を振りパタパタと駆け去っていく

由理を見送った慶はスッと後ろを平然とした顔で振り返ろうとした。

だが誰かの人差し指らしきものが頬に当たり自分の肩を掴む様に

彼女はニヤニヤと笑みを漏らしながら呟く。


「はてさて~告白はしたのですかな?由理は」


「ああ、してきたよ。

 友達になろうって告白。」


振り向いた先にいたのは帰ったはずの北園詩織だった。

帰ったはず、とは言えその教室から荷物を持って出て行ったのは

見たはずだった。だが存在の気は消せても"冷気"だけは

相変わらず消せないようだった。


「えええ!!!!友達宣言かぁ…うーんもうちょっと迫れば

 良かったのかな…?うーん…」


「あのなぁ…俺を玩具みたいに扱って楽しいのかもしれんが

 取り敢えず場所は考えろよ。」


「そんなこと慶君がいう道理何て―」


とそこで目の前にいる彼女にある唯一黙らせる方法を

取ろうとした段階で慶が待ち続けた本人が駆け寄る。


「ごめーん!遅くなっちゃって……あれ?詩織ちゃん

 どうしたの??また慶がなんかした?」


「またってなんだよ。」


むしろされてるの俺だから。

そう頭によぎっても詩織は今に置かれた状況を逆手に取りながら

危うく私の貞操が危なかったよ~と冗談を言った。

だが美世はそれを本気にしたような顔でうわぁと引くような

動作を取る。

それにまた突っ込みを入れると詩織は楽しいなぁと笑う。


「ああ、詩織。

 今日か明日銀次郎来るからな。

 会いたいならちゃんと言え―」


「じゃあ私はこれで帰ることにするねっ!

 じゃあね~♪」


そそくさと繋げた質問には返さず逃げ出すように帰る詩織に

慶はぐぅ…としかめっ面するが美世は微笑みながら

面白いなぁ~と呟く。

慶はそんな彼女が微笑む姿を横目に

少し照れながら美世を抱きしめるように左に首を傾げるように傾けた。


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