第1章16話 「幕が下りる(後)」
「ふぇ?どうしたの………?慶…。」
「美世、孕子!起きろ。敵だ。
……黒鳥優破だっ!」
銀次郎…頼む!持ちこたえてくれ………!
「また会ったね。怪我の具合はどう?」
と、黒い鎌を手に黒鳥優破は現れた。
またその姿は死神でもあった。
黒い羽が月の光のせいで際立てている。
「全然だよ。今も倒れそうなくらいな。」
「なぁ………何でなんだ?」
いきなりさっきの
表情とは正反対の憎しみが滲み出ている
般若の形相になっていた。
銀次郎自身少し肩を震わせた。
「何がだよ。」
「何で、中に陰陽師が居るんだよ。」
「っ?!!!」
「いや、陰陽師よりも大きいとてつもない
妖気の塊は一体何なんだよ…?」
「あぁ、驚いた。
陰陽師じゃねぇよ。人間だ。
まぁこっちにも事情があるから
これ以上は言えないが。」
と、銀次郎は床に置いてあった刀を手に向かいなおる。
「これは妖気の刀。妖刀……半妖もしくは妖怪しか
扱えない妖怪または妖刀に対抗するために作られた。
名を鬼の蹄、お前と戦うために
上司から受け取った大事な刀だ。さぁ、来い。」
「無理はすんじゃねぇよ?
病人は大人しく寝てれってな………!!!」
・
「草木!ここの近くにすぐ身を
潜めれるような場所はあるか?!」
草木は身支度をしながら考え、即答で
「このアパートの下の駐車場!
そこなら鍵が無くても開けれるよ!」
何故、開けれるかは放っとき
その場所に行くことになった。
2階だったためすぐさま掛け降り、
美世と孕子は1番目の車に、
草木と香山は3番目の車に。
俺は銀次郎を待つことにした。
だが、予想外にも来たのは
銀次郎ではなく黒い鎌を持った黒い羽の鳥だった。
「くっ………がはっ…。」
「熱で苦しんで、そこで横たわってろ。
俺はさっさとあの巨大な妖気の塊殺してくるよ。
………っ!」
「ここは通さねぇぞ。」
慶!というもがくような
苦しい声が奥で響く。俺は両手を左右に開き
とおせんぼの意を表した。
だがそんなこともつかの間、黒鳥は俺の頭を右手で
つかみとり玄関のドアをあける。
必死に俺は抵抗するが、その間もなく
呆気なく開けられる。
だが、いない。
黒鳥にとっては予想外だったのか、
只一言。
「雑魚に用はねぇな。」
と、俺の頭を掴みながら
2階の柵から1階へと投げ飛ばされる。
俺の抵抗と声も虚しく俺は2階から転落した。
「さっさと起きろよ、観客!」
という声と衝撃で目が覚める。
頭を蹴られたようだ。
そうだ、俺は転落して…全身に力が入らない。
「鏡があれば今の状況てのを知らせれるんだがな。
まぁ、全身が折れた訳じゃねぇ。
はてさて、これからゲームをしよう。
ここには車が並べられております。
問題です。この中には妖怪はいるのでしょうか。」
「やっ………め………」
「正解者にはこの鎌で首を
無惨にも切り取りましょう。
いや無惨でもないか。解剖だな。
第1走車目でーすっ!」
美世と孕子が乗る車の前に来た死神は思いっきり
車に鎌を突き立て畑を耕すようにして……
「やっ…めろ!」
「やめまーせんっ!」
ガンッガンッガシャンッ
「これでは分かりませんね。
ではでは窓を割って見ましょう…っと!」
バリィィィィィィンンンンンンンン?!!!!!!
「やめ………て…!」
「女みてぇな声出すなよ。
空理恭子。あいつは解剖しやすかったぜ。
隅々まで観察して強姦したぐらいだからな。
解剖ではなく陵辱か…ガハハハッ…!!!」
「くそっ…!
お前はどっちなんだ……?!」
「どっちでもいいだろ?……どうせ俺は
黒鳥優破じゃないし…ガハハハッ…!!!」
ガンッガンッガシャンッ
バリィィィィィィンンンンンンンン?!!!!!!
「3つ目でーすっ…ウワッアハハハハハハッッッ!!
なんでしょう?なんでしょう?大きいこの塊はっ!
なんでしょうか!!!」
黒鳥は車を壊し窓を割った。
なかに必死に口元を抑える香山の姿…!
「正解者には快感を覚えさせてあげましょう。
死という最強の快感をっ………!!!」
「香山っー!!!!」
「そうは、させない!」
美世が黒鳥を羽交い締め
にして押さえつけようとする。
だが黒鳥は振りほどき、美世の服をビリビリと
破き始める。それに気付いた孕子も応戦するが、
黒鳥が孕子の髪を引っ張り投げ飛ばす。
「いやっ………!」
「犯さねぇよばぁか!」
と、黒鳥は何かを唱え美世の背中に
人差し指を突き立てる。
『カラスの呪い』
そう呟いた瞬間、美世が驚きの
表情を浮かべそしてばたりと倒れた。
「これはカラスの呪い。俺が例え死のうともこの女が
死にそうになったとき俺が代わりにその寿命を
頂き、生き返るっていう呪いさ。
転生術って言っとくか。」
「そんなっ………!」
「まぁ、あとはこの塊女だよなぁ………?」
・
Prrrrrrr………ガチャッ
「あ………夜叉さん…?」
『慶から聴いたぞ!大丈夫なのか?!』
『いや………俺はもう使い物に…ならないかな…。
慶に会ったら…ゴフッ…言ってやって下さい。」
『なっ………?!何を言っておる!
私がもうすぐそこに着く!それまで耐えてくれ!』
「ゴホッゴホッ………いや…使い物には……なるか。
……夜叉さん。俺を百鬼夜行に誘ってくれて
ありがとうございました。」
『おっ………おい?!銀じー………』
ブツンッ
プープープー………
カチッ、ズズズズ………
「はぁぁ…詩織に何て言おうかな………。
慶…美世…孕子…由理…南海…。
知ってるか慶…俺がお前と初めて会ったとき、
人間かよって差別しながら新しい友達が出来て
超嬉しかったんだ。
美世…慶のことでよく恋愛相談してきたな…
まったく、両思いだって知ったらあいつ
いつものように椅子から落ちるな…はは…。
孕子…は俺の大事な妹だ。絶対嫁には行かせん!ってな…。
由理………君を救えなくて本当にごめんな。
もっと君のことを知ってたら…あ、詩織に悪いなやめとく。
南海…お前の忠告通りだったよ。
まっ!もうそんなこと
どーでも良いけどね……。」
ボイスレコーダーは止まらずにズズズズと鳴っていた。
それに合わせ俺は無意識のうちに涙を流していた。
声は徐々に涙声になっていた。
最後にありがとう。と呟き、
俺はボイスレコーダーの停止ボタンを押し、
携帯で詩織に音声メッセージを残した。
「ー………………。
そろそろ…行かきゃまた、会おう。
愛してるよ詩織。」
俺は熱でこわばる肩を抑え、立ち上がった。
このふらつくような感情を覚えながら
俺は必死に涙をこらえ無惨にも開かれた扉いりぐち
を目掛けて震えで動けない足を必死に動かし、
目から滴ってしまった水玉を拭かずに扉を出て
黒鳥が香山に鎌を突きつける様子を目の当たりにした。
「たった一人以上でも良い。
愛せる友達がいるなら………
俺の命を無駄にして助けたって
良いじゃねぇかよ!!!!!」
足だけを妖怪変化し、俺は空中を歩いた。
慶はやっとのことで立ち上がり助けようとしていた。
慶とすれ違った。
慶は驚いてた。
どうしてと、
俺に訴えた。
ごめんな。
これしか方法はねぇだろ?
だからそんな目しないでくれよ。
涙が、枯れたはずの涙が落ちるだろ?
「ー………ごめんな」
俺は香山に当たりどけ、
香山に当たるはずの斬撃を
真っ正面から、
黒鳥を見ながら、
咆哮しながら
受けた。
はずだった。
「嘘だろ」
「いやぁぁぁぁぁ!!!!!」
俺は目の前で起こったことを理解しないまま
這いつくばるように黒鳥をどけ、
泣き叫ぶ香山を横に
銀次郎の手をとった。
「おい………なんで…なんでだよ…銀次郎!
お前を待つ………詩織をどうするんだよ!」
「………ゴホッゴホッ………け………い…」
血を吐きながら銀次郎は
「…………………たす…かって………よかー………」
必死に俺の手を握った手はついに下に落ちた。
「銀次郎………?うっ…うっ………うわぁぁぁぁぁ!!!!!」
辺りを見ずに泣き叫けんだ。
「どういうことだよ………?!!!」
いきなり呟いた黒鳥が呆然と見開いていた。
美世や孕子も、やっとのことで着いた夜叉様も
その姿を見ている。
俺は横にいる香山を見た。
「か………香山?」
彼女は燦然と光輝き、宙に浮いていた。
香山の心臓部から何か白い光が露になり、
それが俺の腹を目掛けて直撃した。
同時に香山と俺はばたりと倒れた。
だが何故だろう。
俺は経験したことない力がみなぎった気がした。
「この塊女………!やっぱり……ツキネエェェェェェ‼
あの野郎ぉぉぉ!!!くそ、今度こそ邪魔はさせねぇぜ?!!
くそがぁ!!」
これは…なんだ?
なんで俺はこの刀を、
人間が触れただけで死んでしまう、
鬼の蹄を持てるんだ?
「死ねぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
謎の男は叫ぶ。
「うぉぉぉぉぉぉおおおおお!!!!!!!」
慶もまた。
銀次郎が持っていた鬼の蹄で、
黒鳥が持つ鎌をぶつけ、黒鳥の右腕を斬りつけ
右腕が肩から離れ、ぼとりと、宙を舞い落ちた。
黒鳥は目を見開き悲鳴を上げながら
逃げるようにして黒い翼を拡げている。
「逃がすかぁぁぁぁああああ!!!!!!!」
黒い翼を真っ二つに斬りつけ血が吹き出すのを
確認せず、背中に数多の斬撃を加える。
悲鳴とも言い表せない声を上げる黒鳥に
対し俺は無我夢中で斬りつけた。
あと少しのところで、俺はぶちんっという
音ともに意識を失った。
「………どういうこと…?慶の頭に角…?」
意識を失う際聞けた声はそれだけだった。
・
「はぁ………はぁ………はぁ………。」
寸前で止められた刀を前にその男は動けずに
只後退りをするしかなかった。
今まさに戦っていた男は般若の形相から
無表情へと変わり倒れた。
だがそれなのに俺は得体の知れない怖さに
取り憑かれていた。
「………一体………こい………つは…」
だがそれも束の間俺の横にもう一人の男が立ち、
右手に持っていた刀で俺を斬りつけた。
逃げようと這いつくばったが
背中から腹へと刀を突き刺され、
血を吐きながら余裕の笑みを浮かべた。
「俺をどう殺そうが、あの女が死ねば
呪いで俺はよみがえる。…そのとぎを精々
待ってろよなぁぁぁ!あ´´はははは!!!!!!!」
「死ね」
夜叉が放った斬撃で俺の身体は真っ二つに斬れ塵と化した。




