第1章14話 「邂逅」
「なっ、何なんですか!あなたたちは!」
道を阻む教師を無理やりどかし、
俺らは目的地へと足を急がせていた。
妖気探知能力。
それは半妖(妖怪と人間のクォーターまたは、まだ人間寄りの妖怪)
しか出来ない能力てきなもので、かなり重度のテクニックを要する。
だが、身につければ精神を集中させ、近くにある妖気を持つ者を
全て把握することができる。
そしてそれを俺らの中で最も得意にしているのが美世だ。
まぁだから置いてきたのだから。
そしてつい先程慶がこの学校で妖気を探知したときに呟いた。
「大きな塊の妖気が1つ、
それを囲むように小さい妖気が2つ。」
「場所は?」
「2階の芸術室てきなところ。
奥に非常階段があるな。」
場所もよく把握出来るなぁと、
銀次郎は言った。
そこに空理恭子を殺しかけた犯人がいる。
そう思うと腹立たしくなり無意識に拳をたてた。
恭子…さんは俺らの村の村長の娘で、昔からお世話に
なってた皆のお姉さんてきな存在だ。
例え血は繋がってなくとも、身内のように感じる人を、
妖怪を殺しかけやがって………!!
っと俺は奮い立っていた。
まもなくして奥に非常階段のある部屋、
芸術総合実習室についた。
なんのためらいもなくガラガラと音を立てなかに入る。
中には黒い髪の少年が1人いた。
俺は言った。
「お前が黒鳥か。」
腹立たしくなっていたせいで少し怒り口調になってしまう。
肩を震わせた少年は泣きそうな声と共に頭を下にさげた。
丁度教師方が、部屋に入り俺らの
動きを封じ抑えてしまう。
教師がその泣いている少年に声を掛けている。
必死に教師らが抑えるので全然身動きが取れない…!
ズシュッ
奇妙な音がした。
なにか鋭利なものが柔らかい、例えるなら肉に
突き刺すような………音?
「うっ………うっ………うふっ………うふふふふ…
あはっ………あはは………あっはははは!!!!」
泣き出した声と思っていた俺と教師らは
その声の主を見た。声を掛けていたはずの教師は
血を吐き出しながら悶え、やがて果てた。
生臭い臭いが部屋を充満させる。
立ち尽くす教師をどけ、二人は部屋に入る。
光景は悲惨だった。
少年は手を赤くしてなにかをほじくりだしている。
ほじくりだして八つ裂きに、そして食べ始める。
その姿を見てもうとっくに教師の姿は無かった。
「いやぁ、丁度理科の問題をやってたから
その答えが必要だったんだ。
あ、あと質問の答え正解でーす。パチパチ♪
賞品をほらよっ。」
赤い見たくもない
それを投げプレゼントでーすと言った少年は
やがて空いた扉にいる人だかりが消えるのを見て言った。
「ひーふー…2匹…か、で、何の用だい?」
「おとなしくこっちに来てもらう。
文句は言わせない…捕まえる前に1つ質問だ。
空理恭子という妖怪を知っているか?」
「んー?………秘密。おとなしく抵抗させてもらうよ。」
と、少年は天使のように背中に
黒い羽を露にした。その羽がひらりと落ちていく。
そして指をぱちんと鳴らし、側近らしきマフラーを
した女と、大きい巨漢が現れた。
「銀次郎、あの巨漢を頼む。俺はあの女と黒鳥をやる」
「僕のことを女と言ったな…?」
「ぬっははは!!よいではないか!雪南!」
と改めマフラーをした少女と巨漢はそう言った。
そしてそれを聞かぬ間、
銀次郎は巨漢に持っていた小刀を切りつける。
同時に慶またその少女に蹴りを入れ黒鳥を殴りにかかる…が。
殴られそうになる黒鳥の前に先の少女はよろめきながらそれを言った。
「夜雀の闇。」
聞いたことのある言葉だった。
確か…昔父さんが本で読んでいたものだ。
黒い羽根がゆらゆらと揺れ堕ちるのを見て、
瞬時に思いだし銀次郎に注意を促す。
「銀次郎!その羽に触れるな!
夜雀の羽は視界を無くす!」
と慶は避け、また避ける銀次郎の鳩尾を巨漢は
殴りかかり銀次郎は胃液と共に唾を吐く。
それでも諦めず銀次郎も巨漢と取っ組み合い、
巨漢が優勢を取っていた。
一方で慶は黒鳥の野郎に向かい、
何故か置いてある木刀を手にし殴りかかる。
「木刀で僕に立ち向かう気?あはは…たかが
人間風情が妖怪なめてんじゃねぇよ。」
「俺は妖気を扱える人間だ。普通よりはマシさ。」
「あっそ。じゃあこれ……避けられるよなぁ?
八咫烏の羽矢」
と、光輝く羽が俺の肩を貫く。
木刀で立ち向かったが、
木刀自体がひび割れを起こしている。
「こいつは俺の羽の鋼の矢で毒は鋼に付かねぇから
ただ痛ぇだけだから安心しろ。まぁ、木刀じゃぁ、
勝てないってことが分かったろ?
今なら土下座して俺含む3人の靴舐めたら許してやるぜ?」
得意気に言ってるカラスはゲラゲラと笑う。
「なら、やるか。」
「は?」
と、唖然とするカラスに背を向け
先ほどの少女につかみ掛かる。
今その少女は銀次郎との戦いに手を出していたからだ。
「なっ…!俺との戦闘に逃げてんじゃねぇよ!八咫烏の矢!」
と、鋼の矢は俺の首目掛けて一直線に飛んだ。
ー……やった。
俺はその矢を寸前でかわし、そのまま一直線に
少女の首目掛けてかすった。
だが、これで良い。
少女の首は宙に飛び呆然と立ち尽くす身体はその後すっと崩れ落ちた。
「雪南…」
と、カラスは少女の方を見たが、
さらにその一方で、次は巨漢が声を上げうろたえている。
銀次郎が本気を出し始めたのだ。
銀次郎は自身の九本の尾を巨漢の右腕に絡み付き
一気に四方八方に移動しながら右腕を締め上げ、
その右腕はそれもまた聞きたくない音ともに倒れた。
右腕を震えながら抑える巨漢に銀次郎はとどめを刺した。
元々殺すつもりはなかったが過ぎたことだ、しょうがない。
「はてさて、おとなしく捕まってもらおうか?カラスさんよ。」
「ははっ…僕には黒鳥優破っていう素晴らしい名前があるんだ。
父さん母さんがつけてくれたんだ…今はいないけど。
その後僕に友達ができたんだ。
須原雪南、剛堂大輔…今は君たちに殺されちゃったけど。
どうして…どうして…??僕が何をしたっていうんだ?
それに…まだ邪魔をしてもらっては困るしね。
僕は夜行性なんだ…だからねー…」
と、黒鳥は窓に触れ先程の
鋼の羽の矢で壊し破り窓から落ちるようにして
外に出た。だがここは2階。
到底ケガをしないで出ることなんて…!
ぶわっ…!
窓から飛び降りたはずの
黒い羽を持つ堕天使はこちらを向いて
あとで、ね。と不敵に笑い羽ばたいてどこかに
行こうとしている。
待て、と言ったところで待つ相手じゃない。
「銀次郎!」
「……」
「妖怪変化して追いかけてくれ!」
「……」
「責任は俺が取る!だから早く!」
「慶……俺は…」
「どうした―…」
と振り向いた先を見やると思わず驚きの声を上げる。
そこに先ほどの死体がない。
血の一滴も何もない。
闘いの形跡すらない。
意味が分からない光景が目の前にあった。
「さっきの…死体は…?」
「とりあえず…追いかけよう」
と銀次郎と慶は謎を背にその窓から駆け出した。
・
ちっ……変化してまでも来る気かっ……!
と、黒鳥優破は黒い羽でバサバサと羽ばたいてる
内に何かを見つけ、黒い羽をしまいそのままビルの
路地裏に落ちていく。
一方で銀次郎は慶と二手に分かれて行動しているのだが
まさかこんなことになるなんて……!
何を見つけたのかという探求もなく追いかける。
ー…その時!
自分でも出したことない
苦しみの悲鳴を上げ妖怪変化が解かれながら
路地裏に落ちていく。
ゴミとして置いてあったクッション材があったため
軽傷で済んだが、それどころではない。
左肩が受けたこともない炎に焼かれ、その炎が
全然消えることが無かったのだ。
熱い、苦しい、痛いという感情がぐちゃぐちゃに
混ざりあい狐の変身が、解かれていく。
炎はやがて身を包むようにして俺は意識が
遠のきそうになっていた…その時。
誰かがその炎に手を触れ何かを呟いた。
一瞬で炎は消えたが、傷は癒えなかった。
その者を見た瞬間銀次郎は座りながら後退りした。
「黒鳥優破………?!」
そう。先程追いかけて、
姿が見えなくなったはずの、カラス。
「あぁ?なんで俺の名前を知ってやがる?
まぁ心配しなくていいぜ?その攻撃は俺じゃねぇ。
ましてやお前の連れでも無いだろう。
俺の仲間でもねぇ、妖怪同士が今を争って
どうするんだよ………。」
「じゃぁ、さっきの炎は一体………。」
「陰陽師って知ってるか?」
陰陽師………古くから妖怪を討伐するために
作られた機関で、妖気を持つ妖怪狩りの集団だ。
「ー…そして、お前はその陰陽師に攻撃されたんだ。
よりによって炎の呪いだ。ここ5日間は撃たれた
ところが熱を放出して焼ける痛みを伴うだろ。
水風呂に入ってもすぐに熱湯に変わるから注意しろ。」
「なっ………何で助けたりしたんだよ…それに
何でそのこと知ってるんだよ………。」
「同じ妖怪として心配したからだ。
なんで俺のこと知ってるかは別として。
放っとけばビルの路地裏に焼死体が発見されて
厄介事になるのも嫌だしな。
あとは今………俺は陰陽師の、陰陽学を学んでる
最中だしな。独学で。
守りたいものがあるならさっさとこの街を
出ることをオススメするよ。」
じゃ、またな。と手を振って姿を消した。




