〜気ままにドライブ〜『自宅』彼女の生理痛
ピピピピピピ
アラームがなっている。
朝、ではなく現実の時間は19:00で止まったままで外は暗いが、このアラーム付き腕時計を合図に1日が始まる。
彼の腕時計は8:00を指している。
「起きて、朝ごはんの準備をするか。」
部屋着のまま一階に降りてキッチンに立つ。
フライパンを取り出し油をいれ卵を割る。
どうやら卵焼きを作るようだ。
ジューと音がする。
彼が作る卵焼きは堅焼きではなく、黄身が半熟というTKG(卵かけ御飯)も味わえるものだ。
卵焼きを作る合間にお椀に味噌汁のもとをいれる。
味噌汁はインスタントを作るようだ。
時間をほんの十数秒間動かしヤカンに水を入れる。
入れ終えたら時間を止める。
ガスコンロだったらそのまま時間を動かし続けるのだが、彼の家はオール電化、時間が止まってても電気は使えるので時間を止めてしまう。
「おはよぉ。」
ここで、彼女が起きてくる。
音か匂いで起きるのかわからないが朝ごはんを用意し始めると起きてくる。
女子が料理をする、というイメージがあるかもしれないが彼女は基本的に料理だけでなく家事は何もやらない。
というよりか、できないのだ。
世の大半の女子高生にとって、できないことが普通のことなのだ。
「すぐにできるからちょっと待ってろ。」
「うん。」
沸騰したお湯をお椀に注ぎながら言う。
ピーピー
米が炊ける。
前日にタイマーをセットしてあるので朝に準備をする必要はない。
炊けてすぐの米はおいしくないので、少し蒸らす。
その間、半熟になった卵焼きを大きめのお皿にいれる。
そして、味噌汁と卵焼きをテーブルの上に置く。
「もうできるから席についとけー。」
「う、うん。」
まだ眠そうだ。
それにいつもより顔色が優れていない気がする。
蒸らしたお米も茶碗によそいテーブルに運ぶ。
飲み物も忘れない。
「じゃあ、いただきます。」
「い、いただきます。」
いつもの朝食だ。
今は夜でもあるが。
しかし、今日はいつもと違うことが起きた。
「うっ。」
「おい、大丈夫か?」
「ごめん、ちょっとソファーで横になる。」
顔色が悪い彼女が苦悶の表情になっている。
「本当に大丈夫か?病院行くか?」
「平気。今日、あの日なだけだから。」
「あの日?」
「女の子の日。」
「あぁ、そういうことか。」
彼は朝ごはんを大急ぎでかきこみ彼女のご飯にラップをしソファーに行く。
「なんかすることあるか?」
「ううん、今は大丈夫。それよりも、顔と歯磨きしたいかな。」
「手を貸そうか?」
「大丈夫。」
そう言って洗面台に行く。
彼は時間を動かして洗い物をする。
しばらくして彼女が帰ってくる。
時間を止める。
さっきより顔色が悪いように見える。
ソファーに横になる。
「おいおい、大丈夫か?」
「うぅ、翔太くん、気持ち悪いよぉ、背中スリスリしてぇ。」
「お、おぅ。」
スリスリスリスリ
「うぅ〜。」
スリスリスリスリ
「ふぅ、楽になってきたよぉ。」
「そうか、なら良かった。」
彼は手を離そうとする。が。
「あぁ、まだスリスリしてぇ。」
「おぅ。」
スリスリスリスリ
「はぁ。私けっこう重い方なんだよね。学校も時々休んでたし。」
「確かに休んでた日あったな。」
「でしょ。はぁ、本当ごめんね。私、面倒な女だよね。」
「気にすんな。女子はしょうがないんだから。」
「ありがと、うぅ〜。」
スリスリスリスリ
「なんか欲しいものとかあるか?」
「プリンが食べたい。」
「了解。じゃあ、ちょっと買ってくるよ。」
「行っちゃうの?」
「すぐ戻るから。何かあれば電話しろ、時間は動かしていくから。」
「わかったぁ。」
「じゃあ、行ってくる。」
「行ってらっしゃい。」
時間を動かし、玄関を出る。
コンビニと家までは徒歩で片道3分のところにある。
そこを自転車に乗り全力で走る。
自転車をおり、コンビニに入り、三百円以上するデカプリンを躊躇いもなく買う。
そして、また急いで自転車に乗り家に帰る。
「わぉ、早いね。まだ、2分しかたってないよ。」
「急いで買ってきたからな。」
「心配しすぎだよぉ。でも、嬉しい。ありがとう。」
「どういたしまして。早く元気になってほしいからな。」
「えへへ。またスリスリして。」
「もちろん。それとプリンな。」
「プリンは後で食べるよ。」
「わかった。」
スリスリスリスリ
「ふぅ。段々眠くなってきたよ。」
「寝てていいぞ。」
「うん。私が寝たらやめてくれていいからね。」
「はいよ。」
しばらく彼女の背中をさする。
時々、顔をしかめるが顔色は良くなってきて大分楽になってきてるように見える。
15分もすると彼女の寝息が聞こえてくる。
「寝ちゃったか。」
「すぅすぅ。」
彼は背中をさすっていた手を離して彼女の顔をみる。
とても可愛らしい寝顔。
思わず彼の唇が彼女に近づいたがどうにか踏みとどまり、代わりに彼女の頭を撫でる。
少し彼女の口が、にへら、と締まりのないものになる。
それからして、彼も睡魔に襲われ彼女の頭に手を置いたままソファーに頰をつける。
4時間の13:00
彼女は目を覚ました。
「うん?わっ、翔太くんが近い!それに頭に手が!」
「すぅすぅ。」
「あっ、翔太くん寝てる。」
今度は彼女が彼を観察する。
容姿はイケメンではないがブスでもない。
ただ、バイクを乗り回したりする彼を彼女は大人っぽいなぁ、という感想を抱く。
しばらく彼の顔を見ているうちに視線は彼の唇に移る。
「……触れるだけならいいよね。」
起こさないように自分の頭に置いてある手を下ろし、ゆっくりと自身の唇を彼の唇に近づける。
そして、彼が理性で抑えたものを彼女はやってしまう。
チュ
「……しちゃった。」
また近づけようとするが、
「あと、2日。2日待つのよ、私。」
と、今度は理性で抑えつける。
すると、彼が起きる。
「ごめん、寝ちゃってた。大丈夫か?」
「大丈夫って何が?」
「体調。」
「あっ、あぁ、うん。楽になったよ。」
「そうか。」
「うん!」
「じゃあ、プリン食べるか?」
「食べる!」
プリンとスプーンを渡す。
「本当においしいよ!ありがとう!」
「どういたしまして。」
一生懸命プリンを食べる。
その後、彼女の体調は順調に回復し、夜ご飯になればいつもと同じように食べた。
その間、彼の唇が彼女に向くたびに彼女は顔を赤くしていたが、彼はそのわけをまだ知らない。