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〜気ままにドライブ〜『東京ゲートブリッジ』

「近藤くん、バイク運転できたんだね。」

「まぁな、一応免許も持ってるぞ。ほれっ。」

「前見て!前見て!運転中にやめて!」


彼女はギュッと抱きついてくる。

しかし、残念ながらムニュッという柔らかいものは感じられない。

チビはチビなりの体型なのだ。


「本当にやめてください。心臓に悪いです。」

「ごめんごめん。今まで誰かを乗せたことなかったからちょっとはしゃいだ。」

「それって、私が初めてタンデムした人ってこと?」

「そういうことだ。」

「ふ〜ん。(バイクに2人乗りってけっこうドキドキする。それに、初めてなんだ。)」

「佐倉さんもバイク乗ってみる?以外と簡単に乗れるぞ。」

「えぇ、怖いからいい。」

「そうか。」


佐倉 優里 が笑顔で旅の同行を了承してから、1日がたっていた。

あの後、時間を動かし、己の家に帰り旅の準備をした。

準備というのは、お金や着替えぐらいであるが、特に彼は何の準備もしていない。

というのも、ここ東京にいる間は彼の家をご飯を食べたり寝泊りしたりする拠点にするからだ。

彼女の家でも良かったが、家には母親がいてシャワーを浴びたり、ご飯を食べたりする時に彼が見つかると面倒になるので、長期出張で両親がいない彼の家になったのだ。


これは、近藤家での一幕だ。

もちろん時間はとまってる。


「おじゃましまぁす。」

「どうぞどうぞ。」

「広いねぇー。」

「一軒家だし、こんなもんだろ。荷物はそこの机の上でも置いておけ。」

「りょーかい。」

「はい、お茶。」

「ありがとう。」

「はいよ。」

「……。」

「……。」

「「(気まずい。なんか喋らなきゃ。)」

「ねぇ。」「なぁ。」

「「あっ。」」

「……。(こういうの俺のキャラがじゃないんだけどなぁ。)」

「……。(きゃあー、どこの少女マンガよ、ドキドキがぁ。)」

「な、なぁ、佐倉さん。」

「にゃ、にゃに? …はっ!違うの違うの、今のなし今のなし!」

「佐倉さん、落ち着いて。はい、吸ってー、吐いてー、吸ってー、吐いてー。」

「スー、ハー、スー、ハー。」

「落ち着いた?」

「うん、ありがとう。これ、2回目よね。」

「そうだ、にゃ。」

「っ〜〜〜!」

「佐倉さん、可愛い。」

「えっ。」

「あっ。えっと、お風呂の準備してくる!」

「えっ、お風呂?つまり…、そういうこと?」

「あぁ、えぇと。」

「……。(可愛いって言われちゃった。それにお風呂って…。どうしよう、近藤くんと喋ると胸がドキドキして壊れちゃいそうだよ。)」

「……。(誤魔化すためにお風呂とか、俺バカだ。絶対勘違いされる。しかも、可愛いとか。あぁ、なんで、ドキドキしてんだよ。)」

「こ、近藤くん、さすがに変な意味じゃないってわかってるから、お風呂の準備してきて良いよ。」

「お、おう。じゃあ、行ってくるわ。」

「うん、行ってらっしゃい。」


この後、風呂に順番に入り、夜ご飯(日は出ているが)を一緒に食べて、彼女には母のベッドをあてがい就寝となった。


終始黙ったままだったのは仕方のないことだろう。


ちなみに、時間は、ずれていたが二人ともしばらくトイレにこもっていた。


そして、次の朝はお互い調子を取り戻し、バイクで出かけることになったのである。


「でも、バイクってこんなに気持ちよかったんだね。なんだか、爽快だよ。」

「なら、ドライブに誘ってよかったよ。」

「うん!でも、どこに向かって走ってるの?」

「新木場の奥にある、恐竜って言われてる橋に行こうかと。」

「あっ、知ってるよそれ。東京ゲートブリッジだよね。私まだ、行ったことないんだよね。」

「じゃあ、ベストチョイスってところだね。」

「だねぇ。」


東京ゲートブリッジは2012年に開通したトラス橋である。


「じゃあ、近くの公園の駐車場にバイク置いて、上まで登ろうか。」

「りょーかい。」


バイクを置く。橋の方まで歩く。


「あれ、歩道ないよ。」

「ここから昇るんじゃなくて外についてるエレベーターから昇って行くんだよ。時間を動かすか。動け。」

「おぉ、久しぶりに動いてるものを見た気がする。」

「まだ、1日しか経ってないぞ。」

「そうなんだよね。」


エレベーターがきた。エレベーターに乗り上昇していく。橋の上に着く。


「うわぁ。すごく良い眺め!レインボーブリッジが見えるよ!」

「だろ。海の方は昼見た方がいいな。夜は夜景がキレイかな。ちょっと建物と遠いけど。」

「それでもキレイだろうなぁ。」

「今度、夜も来ような。」

「うん!」


ドキッ


「やっぱり、可愛いな、佐倉さん。」

「っ!どうしたの?昨日はあんなに誤魔化してたのに。」

「誤魔化せないほど、可愛いってことだよ。」

「っ〜〜〜!」

「ねぇ、佐倉さん、佐倉さんのこと 優里さんって呼んでもいいか?」

「……別にいいよ。私も近藤くんのこと翔太くんって呼ぶ。良い?」

「良いよ、優里さん。」

「ありがとう、翔太くん。」


彼の手が彼女の頬に伸びる。そして、優しくその頬を撫でる。

手から伝わる彼女の頬は赤ちゃんの頬のようにモチモチとして柔らかい。

そして、彼は、意を決したように彼女の唇に己の唇を近づける。


「待って。」


彼女の一本の指が彼の唇に立てられる。


「さすがに、ちゃんとお友達になってから1日でキスは早いよ。

別に嫌じゃないんだよ!私も…キス…したいと思ったから。でも、せめて一週間待ってほしいな。ダメかな?」

「ダメじゃないよ。俺も順番を間違えたよ。最初にキスは違うよな。大丈夫、ちゃんと一週間待つから。」

「ん、ありがとう。」

「いえいえ。」

「じゃあ、帰ろうか。」

「そうだな。」


再びエレベーターに乗り下って行く。

公園に駐車してあったバイクに乗る。

そして、時間を止める。


帰りのバイクはとても静かだった。

だが、そこには重い空気はなく、どこかフワフワとした幸せな空気に包まれていた。

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