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勇者VS魔王 後編

後編でおます

「これはどうだ! エアリアルバースト!!」

「クッ、飲み込め暗黒球(ダークネスボール)!」


 アランにしては珍しい放出系の魔法だ。なかなか威力も高そうだが、対するガロンは闇属性の球体を発生させてその魔法を吸収、相殺する。

 非常にハイレベルな戦いだと思う。うんいや、思うんだけどさ。


「今度はこちらからだ、魂喰(ソウルイーター)!!」

「厄介な。ファルコ、荒れ狂う風の盾(サイクロンシールド)!!」


 攻守が入れ替わり、ガロンが放った技に対して、自分の周囲に風を巻き起こし、何重もの層を作ることで盾を作るアラン。こちらも相殺され、お互いほとんど無傷の状態だ。

 つまり実力は拮抗していると見ていい。いいんだけどさぁ……


「なあ……この戦いいつまで続くんだろうな……」

「知らん。アイツ等に聞け」


 ふと口から出た独り言にイガさんが反応する。恐らくイガさんもちょっと苛立って来てるんじゃないかと思う。だってさ。


「もう4時間ほどになるかの。若いもんは元気じゃのう」

「いつになったら終わるんでしょうか……」


 感想は様々だが、サニーまで飽きてきちゃったよ。っていうか長すぎだろ、しかも二人ともやたらと元気だし。

 アランもいつの間にか色んな技を身に付けた様でびっくりしたが、ガロンもその全てになんとか対処出来ている。

 逆にガロンの攻撃もアランは防ぎきっている。という正に千日手に近い状態だ。

 最初の内は二人の動きや繰り出す技に見入っていたが、もはや新しい技や魔法が出てきてもそれほど驚きはない。

 むしろとっとと終わらないかなーといった状態である。


「流石にやるな、魔王」

「フン、貴様もな。人間にしては良い腕だ。流石は勇者といったところか」


 お互いを認める発言。いやもうそういうのいいからって思わなくもない。

 というかアイツ等なんであんなに元気なんだよ……いい加減疲れて「これが最後の一撃だ!」とかいう展開じゃないの……?


「ガロン君、ボクそろそろ飽きちゃったんだけどー? 早く終わらせてくれないかな」


 心底退屈そうな声を出すフラッグ。そういやちょっとコイツの存在忘れかけてたな。

 しかもちょっと感謝してしまった。いかんいかん。


「フ、フラッグ様!? お待ちください。遊びはここまでです。私の最大の奥義をもってこやつを仕留めてご覧にいれます」


 つまり今から一番強い攻撃しますよ。と言ってるわけだ。いいのかこんなんで。


「アラン、聞こえたよな? 今から最大の攻撃が来るらしいぞー」

「わかっているさ。なら俺も全力の必殺技で迎え撃つだけだ!」


 oh……実はお前も脳みそが筋肉で出来てる人だったのか。

 なんとかかわしてその隙に一撃入れるとかやりようはあるだろうに……

 ……いや、あるいは剣士としての矜持か?


 二人は剣を打ち合うのをやめ、いったん距離を置く。やはりどちらも最大の攻撃、というからには多少準備が必要なんだろう。


「貴様はよくやった。名残惜しいがそろそろ幕引きといこう」

「ああ、残念だが終わりにしよう。魔王、お前のことは忘れない」


 お互いがお互いを認めあい、それでも自分が勝つと信じて疑っていないのだろう。

 先ほどまでの激しい剣戟よりも、この静かな緊迫感が最後の一合を予想させる。


「二人とも見事な闘気じゃの、ガロンも先ほどまでとは違ってしっかり体内で練っておるわい。あのバカは最初からそうしておれば剣士としても更に上を目指せたじゃろうに……」


 かつての側近の姿を見てレイン爺さんがこぼす。それより闘気って? もちろん言葉は知ってるけど、実際にそんなのあるのか?


「爺さん、闘気ってなんだ?」


 もしかしたら俺の知ってる言葉とは意味が違うかもしれないので素直に聞いてみることにした。


「ふむ、知らなんだか。お主はともかくイガラシなら分かると思うがの。簡単に言えば魔素を取り込んで己の力とする魔力とは異なり、自身の生命力を一時的に活性化し、力とする技のようなものじゃよ。皆知らぬ内に行使しておるもんじゃがのう。ほれ、心を落ち着けて集中すれば動きが緩やかに見えたりするじゃろ? もしくは怪我をしていたとしても、一時的に痛みを忘れて動けたりとかじゃの」


 なるほど、科学的に言えばアドレナリンの分泌に例えれば分かりやすいのか。


「上手く闘気を練ることが出来れば、肉体の限界を超えて動くことが出来るんじゃ。だがさっきも言ったように元になるのは自分の生命力じゃからの。全開ではそう長くはもたん。アランなんぞは動く瞬間のみ闘気を足に送って速度を上げておったのう。打ち込む瞬間に腕に送ったりと、なかなか器用じゃったよ。アレは本人の資質もあるじゃろうが、師が良いのかもしれん」


 そういえばアランの師匠か。一体どんな人なんだろう?


終焉を告ぐ(エンド・オブ)……」

始まりを告ぐ(ビギン・オブ)……」


 二人の身体が闘気に覆われていく。オーラと言えば分かりやすいだろうか。

 ガロンは闇を示す漆黒。対するアランは風の……あれ? 風って金色だっけ?


災厄の刃(カラミティブレード)!!」

祝福の剣(ブレッシングソード)!!」


 金と黒がぶつかり合う。その巨大なエネルギーは二人を中心に荒れ狂い、収束し、そしてまた荒れ狂う。

 まるで荒れ狂う闇の力を光が包み込むように、だけどそれに逆らうかのように、何度もそれは繰り返される。

 エネルギーの余波は部屋の何もかもを破壊し尽くし、それでもまだ収まらずに俺達を飲み込もうとしてくる。


「っておいおい、これじゃ巻き込まれるって!!」

「安心せい、サニーちゃんはワシが守るぞい」


 ってもうそんなに遠くまで逃げてんのかよ!! いや、サニーもいるからその判断は正しいんだけどさ!!

 まあ自分だけなら身を守るのはそれほど苦じゃないし大丈夫か。


 それにしても、全く正反対の必殺技だな。


 --全てを破壊し尽くさんとする『終焉を告ぐ災厄の刃(エンド・オブカラミティブレード)

 --全てを覆い尽くさんとする『始まりを告ぐ祝福の剣(ビギン・オブブレッシングソード)


 どちらも恐ろしいほどの威力を秘めているのは見れば間違いない。

 問題はどちらが勝つか、だが……


「フン、勇者よ」

「なんだ、魔王」


 荒れ狂う光と闇の中で二人が言葉をかわす。


「魔族の子供達の未来を、世界を頼む」

「ああ、頼まれた」


 そんな、声が聞こえた気がした。

 見ればガロンの顔は薄く笑っているようにも見えて--


 そしてアランを覆う光がガロンを包み込み、一際大きく輝き、一瞬の後に世界に色が戻る。


「ガロン、子供達の未来を願うお前は、正しく魔王だった」


 立っていたのは唯一人、それもまた、正しく勇者の姿だった。



なお前哨戦()

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