魔王城内部
さて、最後の会話回ですね。待たせた割にちょっと短いですがご容赦を
--生き物の気配がしない
どうやらフラッグの言ったことは本当だったんだろう。魔物が襲ってこないどころか、何の気配も感じない。
最初は外にいた魔物が中に入ってくるんじゃないかと警戒していたが、どうやらその心配も不要そうだ。
だとしたら、あの大量の魔物は、今一体何をやっているんだろうと想像すると、少しおかしくなる。
が、それは俺の知ったことじゃないよな。
--それにしても魔王城は思っていた以上に広かった。
前に来た時は、休む間もなく魔物が襲ってきたし、広く開けた部屋に出たと思えば、門番よろしく立ちはだかる魔族がいたり、全然息つく暇もなかったからな……
思い出しては見たが、それほど感慨深い物でもない。そりゃそうだよ、俺ここで殺されてるんだし。むしろ腹立つわ。
「静かだな……気持ち悪いくらいだ」
アランが呟く。俺と同じように前のことを思い出してるんだろうか。
「だなぁ。まあ前来た時はアレだったしな。こっちの方が楽だし、まあいいんじゃないか?」
だが不気味だと思うのは俺も同じだ。
「ふむ、しかしこの城も変わらんのう」
「そうか、爺さんは元々ここで住んでたってことになるのか?」
レイン爺さんが初代魔王だったんなら、そういうことだよな?
「いや、住んどりゃせんかったわい。こんな広いところで住んでても退屈なだけじゃしの」
「あ、そうなのか。てっきり城で暮らしてるもんだと」
どこで暮らそうが本人の勝手だしな。でも別のところに住んでたら、急な来客の時とかに困るんじゃないのか?
「何かあったら側近が呼びに来るしの」
「なるほどなー、そりゃ王様なんだから側近とかいるか」
そもそも一番偉いんだから、誰か来ても待たせればいいんだろうし。
「随分頭の固い奴じゃったがの。悪い奴ではなったんじゃが、真面目過ぎてかなわんかったわい」
随分な言われようだなその側近。にしても、俺達の目線じゃ魔族で悪い奴じゃない。って言われてもちょっと想像し難いな。
「さて、お喋りはここまでじゃの。着いたぞい」
レイン爺さんに促され、前を見れば記憶にある重厚な扉がそこにあった。
「なんというか、久しぶり、だなぁ……」
この表現が正しいのかは微妙なところだが、この扉の前で一休みして、四人で色々話してたんだっけ。
あの時は俺、アラン、ミリィ、シャルのだった。
今は俺、アラン、イガさん、レイン爺さん、サニーの五人か。あ、そういえばさっきからサニーが一言も話してないが大丈夫なんだろうか。
「サニー、さっきから静かだが大丈夫か?」
「あ、はい。少し気分が悪くて、何かこう、思い出せそうで思い出せないような……」
思い出す? 何をだろう。
「サニーはここに来たことがあるのか? いやいくらなんでもないだろうけど」
「分かりません……ただ何か……とても気持ち悪いんです」
うーん、もっと早く一言かけておくべきだったな。
「サニーちゃんや、別に無理して何かを思い出そうとする必要はないんじゃ。すまんがコウよ。少し休ませて貰って良いかの?」
「ああもちろん。今更急いだって仕方ないだろうし。というか目の前だし」
いきなり突っ込んで奇襲、という手もあるだろうが、どちらにしろ俺達がここにいることくらい向こうも分かってるだろう。
だったら逆に焦らしてやればいいか。
「アランもイガさんも別にいいよね?」
「ああ」
「かまわねえよ。どっちにしろ最後の休憩なんだ。腹ごしらえでもしてくか」
そう言ってイガさんはお料理キットを取り出す。ちょっと待ってこれどっから出したの?
「ヴィエラに闇魔法でこのポーチの空間を広げてもらった」
「え、なにそれ俺そんな使い方聞いてない」
なんで教えてくれなかったんだよそんな便利魔法!!
「まあいいじゃねえか。すぐ作るから座って大人しく待ってやがれ」
「イガラシの作る料理は美味いからな。楽しみだ」
「ほほう、そりゃ楽しみじゃのう」
イガさんの持ってた小さいポーチから色々出てきた。包丁やまな板から食材まで……これ反則じゃね?
「あれでもイガさん、火はどうすんの?」
「あん? そんなもんコイツがあるだろ」
あ、それ使うの? いやそりゃイガさんのだし、別にいいんだけど……ちょっとひどくね?
『コオオオオォォォン……』
料理に使われる火の精霊。うんシュールだ。
ちなみに最後の晩餐はカレーでした。うめえ。マジうめえ。
こっからは出来るだけ盛り上げられるように練ります。なるはや希望ですがもう少々お待ちください。




