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招待

父ちゃん俺頑張ったよ!!

 --あれから半年が過ぎた。


 アランは以前師事したことのある師匠の元へと向かった。


 なんでもその師匠とはやたらと強くて、三年前のアランでは太刀打ち出来ないほどだったんだとか。


 生まれてくる子供と身重のミリィを置いて行くことには後ろめたさもあったようだが、フラッグに負けてしまっては意味がないとのことで決心したらしい。


 イガさんとの手合わせでも十分修行になるだろうが、お互い相手に合わせる余裕もないから、とのことだった。


 イガさんはレイン爺さんの下で日夜修行に励んでいる。俺も傍らで魔法の修行をしつつ、魔力が練れなくなってきたところでイガさんと共に実戦形式の修行を重ねる日々が続いた。


 サニーの魔法の練習も中途半端になっていたので、イガさんとの修行が終わったら授業のような形で知識を与えている。どうも魔法の才能がないのか、はたまた何か違う原因があるのかは分からないが、満足に魔法は使えていない。


 だがそれは自分でも自覚はあるらしく、せめて知識だけでも、とのことだったので、俺が知っていることは教えるつもりだった。そうは言っても俺も自分の感覚やイメージを言葉にして伝えることしか出来ないので、上手く伝わっているかは不明だが。


 そして先月に子供が生まれた。俺とイガさんとアラン。三人の子が同じ日に、だ。


 俺とアランと同じように同時に生まれた子供達。もしかしたらこの子達が一緒に生まれたのには何か意味があるのかもしれないな。


 出来れば平和に暮らして欲しいもんだが……


 三人の名前は既に各々が考えてあったので特に生まれてから困るようなことはなかった。


 イガさんとヴィエラの子は女の子。カナと名付けたらしい。日本名では五十嵐香那と書くそうだ。漢字だけ見たらカヤと読みそうだ。


 なんでも刀の文字を入れたかったそうだが、男の子だったらともかく、女の子には少し物騒な文字だとの反対意見シャルとミリィもあり、真ん中の文字を抜いてカナ、と名付けたそうだ。


 那の文字に刀が入っているのにイガさんのこだわりを感じる。


 アランとミリィの子はこれまた女の子。名前はアリシア。アリシア=オルデンスとなる。愛称はアリーだ。お互いの名前から取ったんだろうが、ミリィと愛称も名前も被りまくってるけどいいのか?


 そして俺とシャルの子、男の子だ。少し小さかったから心配になったが、一月も経った今ではカナとアリーと一緒にすくすくと育っている。


 名前はショウ。漢字は匠。如月匠となる。これまたお互いの名前を取った形だが、更に俺の日本名である巧と同じ読み方も出来る。


 恐らく父さんが俺に名前をつけた時にも同じ気持ちだったのかもしれないが、俺だって刀工の端くれだ。決して刀工にしようという意図はないが、何をやるにしても一生懸命頑張って匠と呼ばれるほどになって欲しい。


 そして子供達の世話は自分の妻に任せ、俺達は男連中は子供達の将来を守るためにも打倒フラッグを目指して一層修行に時間を費やしている。


 今日も修行を終え、近くの川に水を汲みに行く途中だ。


「やれやれ、こんなところにいたとはね。探したよ」


 上空から声をかけられる。


「そうか、出来れば見つけて欲しくもなかったけどな」


 相変わらずの軽い口調で命を狙う相手に話しかけてくる。この無神経さが尚のこと腹立たしい。


「まさかアクオスがそっちで破壊されるなんて思っても見なかったからね」

「こっちにも色々事情があるんだよ、お前にとっては都合がいいんだろ?」


 だから俺も憎まれ口を叩く。決して気圧されないように。


「まあね。ああ、それと今日来たのはここでやり合うためじゃないよ。今日はキミ達に伝えたいことがあって来たんだ」

「伝えたいこと?」


 ここには子供達もいる。それならそれで好都合だ。


「ボク達の戦いも次が最後だと思ったからね。残った封印ももはや二つ。それも別にボクにとってはそれほど重要じゃないしね。だから最後の戦いにふさわしい舞台を用意してあげたよ」

「そりゃどうも、だが俺も忙しいんだ。とっとと用件を言え」


 この後ショウを風呂に入れなきゃいけないんだ。とっとと失せろ。


「つれないねえ、まあいいや。ヴィエラのいた魔王城は覚えてるね? そこで最後の戦いとしゃれ込もうじゃないか。こっちは現魔王も用意しておくし、退屈はさせないよ?」

「余計なお世話だ全く。用件はそれだけか?」


 まあヴィエラに代わって魔王をやってる魔族は人間に対して好戦的だって聞いたしな。遅かれ早かれぶつかってはいたんだろう。


「そうだよ。あ、でも待ってるって言ってもそれほど長くは待たないからね? 今から一月以内に来なかったら魔王を引き連れて人間の大陸に攻め込むつもりだから」

「クソが。分かったよ」


 元々退くことなんて考えてないが、今から一月か。すぐに準備しないといけないな。


「じゃあね。楽しみにしてるよ」


 そう言い残してフラッグが消える。今のは転移だろうか。もしあの魔王城からここまで転移してきたんだとしたら封印された魔法の力ってのもなかなか侮れないのかもしれない。


「一月、か」


 まずアランを探さないとな。いや、もうすぐ戻ってくるだろうから待つべきか。オルデン君に頼んで伝令でも出してもらおう。下手に動いて入れ違っても時間のロスになるからな。


 さて、ショウを風呂に入れてから皆に話すか。


 --これが最後の戦いだ。

明日朝早いのにいいいいいいいいいい!!

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